ASEAN+3マクロ経済調査事務局(AMRO)は、2025年のカンボジアの実質GDP成長率予測を5.8%から5.2%へ下方修正した。2026年の成長率も6.0%から4.7%へと引き下げられた。修正の背景には、2024年4月にトランプ前米大統領が発表した米国の関税措置を中心とする世界的な経済不確実性の高まりがある。
物価上昇率については、消費者物価指数(CPI)で見た場合、2025年は2.5%、2026年は2.3%と安定的に推移する見通しである。
AMROチーフエコノミストのドン・ヘ氏は、「カンボジアとベトナムはASEAN+3の中でも米国関税ショックへの影響が大きい国であり、その理由は輸出への米国依存度が高いためだ」と述べた。また、「ベトナムは輸出品目の多様化に成功しているが、カンボジアは依然として縫製品、履物、旅行用品など特定セクターに依存している」と語った。
カンボジア経済は米国による高関税に苦しむ状況にあり、交渉は継続中であるものの、輸出構造の多様化が必要であるとの見解を示した。具体的には、「付加価値の観点から見れば、最終輸出の相手国として中国の重要性が増している」とし、ASEAN諸国は比較優位に基づいて生産技術やセクターを再編しながら、より高次の経済統合を進めるべきだと強調した。
さらに、「日本、韓国、中国といった国々は製造分野において急速に技術的階梯を上っており、それに伴い地域の生産ネットワークの高度化も進んでいる」と述べた。
カンボジアはすでに農産品の中国向け輸出を拡大しており、今後も市場の多様化と付加価値の高い輸出品への転換を進める必要がある。
一方、地元経済学者のダリン・ダッチ氏は、関税率が49%から36%へと13ポイント引き下げられたことを「経済外交と作業部会の成果であり、明確な政策的勝利だ」と評価したが、インドネシアは32%から19%と13ポイント、ベトナムにいたっては46%から20%と26ポイント引き下げられ、ASEAN諸国の引き下げ幅はカンボジアと同程度かそれ以上であることは注目に値する。
今後は、こうした相対的な米国関税率の高さに加え、国境閉鎖や輸出禁止など隣国タイとの関係が急速に悪化しており、AMROの予測をさらに下回る可能性もある。