カンボジア王国政府は、アメリカによる対カンボジア輸出品への関税措置の影響を受け、2025年および2026年のGDP成長率見通しを従来の6.3%から、それぞれ5.2%および5.0%に下方修正した。中期的には6.5%の成長が期待されていたが、その見通しにも不確実性が高まっている。
これは、5月20日にフン・マネット首相が承認した「2026~2028年予算戦略計画および2026年財政管理法案策定準備報告書」に基づくものであり、報告書には「輸出関連部門に対する報復関税政策の影響が見込まれるためである」と明記されている。
報告書では、今後さらに外的環境が悪化し、米国との交渉が期待通りの成果を得られなければ、成長率は一層下振れする可能性があると警告している。
こうした経済的逆風の中で、カンボジア政府は中長期的な成長を確保すべく、「五角戦略フェーズ1」や「競争力・多角化・回復力の強化プログラム」などの政策の実施を加速している。これらの施策の目的は、国全体の競争力向上、経済構造の多様化、そして社会経済的なレジリエンスの強化である。
米国との間では、特別調整作業部会が第1回の関税交渉を終えており、政府は今後の協議から前向きな成果が得られることを期待している。
一方で、今回の成長率見通しは、米国による関税措置の直接的な影響のみに基づいて試算された可能性が高く、他国――とりわけベトナムやバングラデシュなど近隣の競合国――が米国との交渉により関税優遇を確保した場合、カンボジアとの関税差が拡大し、投資移転や輸出機会の喪失につながる最悪のシナリオが現実味を帯びる可能性がある。
このような「相対的関税格差」の構造的リスクについては、政府予測には十分に織り込まれておらず、今後の交渉の行方次第ではさらなる見直しが必要となるだろう。