カンボジア国立銀行(NBC)と一般社団法人キャッシュレス推進協議会(Payments Japan Association、PJA)は、カンボジアのQRコード決済システム「KHQR」と日本の「JPQR」の相互接続に関する覚書(MOU)を締結したと発表した。
本プロジェクトは2段階で進められる。第1段階では、カンボジアのバコン(Bakong)システム利用者が日本国内でJPQRコードを利用して決済できるようにする。第2段階では、日本の利用者がカンボジア国内でKHQRを使った決済が可能になる予定である。
この取り組みのため、NBCはアクレダ銀行とサタパナ銀行を支援銀行として指名し、PJAはカンボジアにおけるQRコード決済オペレーターとしてNETSTARSを指名した。
NBCは声明で「この取り組みにより、デジタル決済の促進、取引の安全性向上、訪問時の両替手続きの簡素化が実現する」と述べた。加えて、中小規模を含む地元事業者にも多様な決済手段が提供され、リアルタイムでのコスト効率的な運営が可能になると強調した。さらに、「観光、貿易、投資の促進を通じ、両国の経済成長を後押しする」と期待を表明した。
このMOUは、2023年12月にNBCと日本の経済産業省(METI)が締結したQRコード決済協力覚書(MOC)に基づいており、フン・マネット首相と岸田文雄首相(当時)が出席した会談を経て実現したものである。
正式運用開始は、2025年4月13日から開催される「大阪・関西万博2025」に合わせ、まずカンボジア側の決済利用(第1段階)が予定されている。日本側のKHQR利用(第2段階)は2025年末までの開始を目指す。
一方で、本取り組みにはいくつかの課題も残されている。
まず、クロスボーダーQR決済の運用に際しては、リアルタイム為替レートの適用や手数料設定、通信規格の違いといった技術的・制度的課題が存在するが、現時点で具体的な運用詳細は開示されていない。特に為替手数料やレート変動の負担が利用者にどのように転嫁されるかは、今後の実装状況を見極める必要がある。
また、日本国内では中小事業者のQRコード決済対応率が依然として大都市圏以外では限定的であり、普及率に地域差がある点も留意すべきである。さらに、カンボジア側においても、地方都市でのKHQR対応店舗の拡大には時間がかかると予想される。
このため、両国の官民パートナーによる制度整備、加盟店開拓、利用者教育が円滑に進むかどうかが、プロジェクトの成否を左右する鍵となる。