【飲食・観光】
政府は、毎年同国を訪れる約500万人の観光客の質と衛生を確保する努力の一環として、国内2000軒以上のレストランに営業許可証を発行しており、シェムリアップとプノンペンでは特に高品質のレストラン需要が増えており、2018年以降もその傾向は続く見込みだ。
生鮮食品を得意とする日系卸業ロカフード&ビバレッジの塩入伸雄氏は、「中国企業の投資による建設が至るところで進んでおり、それに伴いその周辺で大小含めた中華系飲食店がかなりの勢いで増えています。日系飲食店については、数年前まで個人オーナー様の店舗について特に出店が相次いでいましたが、現状は出店と退店を合わせて緩やかに増加している印象です。飲食業界全体の傾向としては、ここ一年くらいで客単価が20ドルから30ドル程度のアッパーミドル層向けのレストランに勢いが出てきました。中間層の購買力が増してきたことが理由だと考えており、消費者のボリュームゾーンが広がることで益々機会が広がっていくと予想しています」と1年前と比較し外食産業の発展や変化について言及した。
急成長する飲食業界の動向について、日本食品の卸業として老舗のダイシン・トレーディングの小池聡氏は、「国内の日本食レストランは200店を超え、その大半はプノンペンに集中しています。引き続き増加傾向にあり、今後は地方都市での出店も多くなる見込みです。また、現地の飲食店やショップからも日本食材の問い合わせが増えており、既存の現地系レストランやスーパーで日本の食材や飲料、お菓子などがあたりまえに手に取れる日を目指して活動しています」と語った。
また、市場調査会社ARCのレポートによると、カンボジアの冷凍食品市場は、2024年までに市場規模が1億1965万ドルに達すると予測されている。2019年から2024年の間の年平均成長率は3.9%となる。成長の要因は西欧料理の影響が大きいことと、観光業の活況による。需要が高まる要因として、ターゲット消費者である在住外国人や観光客の増加が挙げられるが、最近ではカンボジア人の食卓も、主菜・副菜が少量かつ豊富化しつつあるほか、冷凍食品は食品安全性も高いと認識されている。
ホテルがカンボジアのホスピタリティ業界に重要な役割を果たしている。観光省によると2018年9月現在、カンボジアには現在800以上のホテルがあり、合計で46000を超える客室があるが、外国人観光客や国内観光客の増加に直面するため、今後10年間で少なくとも10万部屋が必要になると予測している。
またここ数年は、ビジネス旅行客の増加により2017年にはハイエンドホテルへの訪問者が増加し、世界的なホテルチェーンによる進出が目立つ。2018年2月にはローズウッドホテルズ&リゾーツによる5つ星ホテル、ローズウッド・プノンペンがプノンペンにオープンし、マリオット・インターナショナルがシアヌークビル沿岸に、2022年の完成を目指して388室の5つ星ホテルを建設すると発表した。また、ホテルオークラ傘下のオークラ ニッコーホテルマネジメントも2022年に、チャムカーモーン区トゥールトンポン2地区に開発が予定されている大規模複合施設、ジャパントレードセンター(仮称)内で、ホテル・ニッコー・プノンペンを開業する予定だ。
ホスピタリティ人材の育成に定評があるプノンペンのブティックホテル、サン&ムーンホテルのクロイ・リティ―氏は、ホテル業界の動向について、「近年は観光客とビジネスマンに分けられます。
観光客は中心地の近くのホテルを探し、ホテルのレビューに大きく左右されます。そしてホテルのサービス、施設に大きな期待を持っています。ビジネスマンのほとんどは平日に宿泊します。彼らは高速インターネットなどの設備に重きを置き、出張の頻度が高いため、観光客に比べてよりホテル選びにこだわりが見られます」と語った。
観光省によると、国の収入の増加に伴う生活水準の向上と航空市場の急速な発展により、カンボジア出国旅行者の数は2018年上半期に増加し、96万人以上のカンボジア人が海外を旅行した。ほとんどの旅行者がビジネス、医療目的または休暇で他国に旅行している。カンボジア旅行代理店協会(CATA)のチャイ・シブリン会長は、「中国を始めとする他国とカンボジアを結ぶ多数の航空便があるにも関わらず、カンボジア国民の好きな旅行先は依然として東南アジアだ。タイとシンガポールは比較的近くにあり、ショッピング、医療、文化体験の機会が多いため、国民の行きたい旅行先のトップの座にある」と述べた。