【マーケティング・メディア】
これから投入しようとするサービスや商品に需要があるか、タイミングは最適か、パートナーは見つかるのかなど、マーケット調査のポイントはいくつか挙げられる。
今後、カンボジアの事業環境の変化についてアジアリサーチインスティテュート・カンボジアの石黒忠明氏は、「事業に必要なマーケット情報を高い精度で理解し、来るべき環境変化を予想し、時流に乗る適切な事業計画を立案、実践が大事です。市場を理解せずに、かじ取りを誤り、大きな打撃を受けているケースが散見されます。自社の特徴や顧客、市場、競争環境について良く理解し、事業を運営できる企業が繁栄していくでしょう」と語る。
カンボジア人の多くは、エンターテイメントを好む。テレビ(96%)でコメディとコンサートとドラマを視ることが多い。一方インターネットユーザーは、郵便電気通信省によると、2020年までに950万人に達する見込みである。インターネット利用(39%)はラジオ(34%)を抜き、雑誌(12%)や新聞(10%)をはるかに越えるメディアとなっている。※(%)は視聴率。
テレビは23チャンネルあり、そのうち9チャンネルの視聴者が91%を占めている。1社で複数チャンネルを持っており、実質は4社の寡占状態となっている。テレビのメリットとして、地方や教育を受けていない層にも情報が届くということが挙げられる。
最大手テレビ会社CBSのCEO、リム・クンスルン氏は、「人口の70%を占める若年層をメインターゲットとして放送をしています。トレンドの変化にもいち早く対応し、韓国の音楽を扱う番組やインドのドラマ番組などカンボジアにはない新しいコンテンツを視聴者に提供しているため、カンボジアで最も人気のあるコンテンツプロバイダーとなっています」と話す。カンボジアで全国的に自社のブランドイメージ、製品、商品を短期間で幅広く消費者に伝えるためにはテレビCMが現在最も効果的だ。
そして、メディア、広告の表現の仕方に共通しているのは、わかりやすくビジュアル化しているということ。ワールド・データ・アトラスによると、15歳以上の識字率は2015年で78.3%となっており、一つの要因と思われる。ここでの識字率の定義は、「日常生活上の短い簡単な文を理解して読み書きすることができる」ということ。少し長く複雑な文章を読む人口となるとこの数字はもっと小さくなるだろう。
いずれにせよ、カンボジア人の誰に向けてマーケティングをするのかを明確にすることは大切だ。日本は中間所得層が多いが、カンボジアは富裕層から低所得者層までの幅広いため、どこの層をターゲットにするのかで全くアプローチの仕方が変わってくる。
テレビの次に多く認知されているのがインターネットであり、国民の39%がユーザーである。ただし、テレビと違い、都市部と地方では格差があり、都市部の45%に対し、地方では28%にとどまる。一日複数回ネットにつなぐという層も都市部では59%にのぼる。端末で一番多いのが携帯電話で47%。デスクトップ、ノートパソコンが45%で、タブレットは8%にとどまる。プノンペンで電話を保持する人の半分がスマートフォンである。
最も多く閲覧されているサイトはフェイスブック、ユーチューブ、グーグルだが、上位4位以下10位のすべてがニュースサイトで占められている。
クメール語、英語、中国語で全記事を配信していて、アプリインストール数120万、ソーシャルメディア250万ユーザーを誇るフレッシュニュースのリア・チュア・ヴッタCEOは、「ユーザーが興味あるのはソーシャル(社会面)ニュースで、事件や事故などのニュースを配信するとアクセスが集中する。またアクセス解析の結果、最近は政治や経済に関するニュースにも興味を持っているようだ」とカンボジア人の現状と変化しつつある興味関心事に言及した。
インターネットの使用が盛んになっている理由について、毎月2000万のページビュー数と250万の訪問者数を誇るサバイ・ドットコムを運営するサバイデジタルコープのチー・セラ氏は、「質の高いコンテンツを作成するには素晴らしい人材を雇う必要があります。弊社は、国内で最も優秀なチームを擁しています。メディアビジネスにおいて優秀な人材は最高の投資です。コンテンツ制作は非常に特殊なスキルが求められるので、クリエイターは意味のあるコンテンツを作るために常に刺激を受ける必要があります。現在多くのブランドが広告ニーズのためにプラットフォームに直接進出しているので、投資の方法が変化し、独立したサイト運営者はコンテンツを収益化することが難しくなっています。多くの独立したフリーメディア企業は、ウェブサイト上で寄付を募ったり、有料モデルまたはサブスクリプションモデルに移行しています」と語った。