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2018年6月26日
カンボジア進出ガイド

【飲食・観光】

252 カンボジアの観光・飲食①(2018年5月発刊 ISSUE08より)

カンボジアのホスピタリティ産業 Hospitality sector in Cambodia

 観光省によると、2017年におけるカンボジアの観光業の収益は、前年比13.3%増の36億3000万ドル。外国人旅行者数は560万人で、2016年に比べて11.8%増加した。この成長は今後も続くとみられ、2018年の外国人旅行者数の想定は610万人。2020年までに700万人を目指すという目標は到達が確実視されている。この増加は、特に中華系航空会社の増加が要因であり、2017年の観光客のうち、中国人観光客は120万人、ベトナムの84万人、ラオスの50万人、タイの40万人を大きく上回る21%以上を占めている。

 中国人の訪問が活発になり、プノンペンで唯一のカジノホテル、ナガワールドカジノでは、昨年の中国人訪問客数は前年比40%増、VIP顧客によるカジノの賭け金は142%増の211億ドルとなり、カンボジアの2016年のGDP(200億2000万ドル)の値を上回った。これは、観光ビザの緩和、中国語話者のガイドやスタッフの増加、中国語での道路標識表示など、中国人観光客の増加に対応する国家戦略が功を奏したと言えよう。
しかし、利益を生む中国人観光客の恩恵を受ける一方、2000年代初頭に多数を占めた欧米人観光客をターゲットにした人気飲食店の不振など、急速な観光客の変化に苦労する声も聞かれる。また、中国の強大な共産主義体制をバックにしたホスピタリティ業界への進出など、中国への一極集中に懸念を見せる有識者がいることも事実だ。

飲食業 The Restaurants

 観光省によると、2017年で国内には2022軒のレストランがあり、シェムリアップとプノンペンでは特に高品質のレストラン需要が増えており、今年もその傾向は続く見込みだ。



 急成長する飲食業界の動向について、日本食品の卸業として老舗のダイシン・トレーディングの小池聡氏は、「形態別では、高級日本食店の人気が高まっていますね。ANA直行便就航に伴い、日系企業の進出や視察者が増加し、接待シーンに最適な高級店利用が増え、質の高い“本物”を提供している日本食レストランに出会います。また、新たに注力しているのが大型から個人商店を含む小売店への展開です。数多くの大型スーパーやコンビニの参入が決定しており、カンボジアで飛躍的に伸びる市場です。正しい品質表示の添付など安心して手に取って頂ける商品を選定し、ラインナップを拡充してゆく必要があると考えています」と中間層の消費需要の高まりに対応する。



 一方、生鮮食品を得意とする日系卸業ロカフード&ビバレッジの塩入伸雄氏は、「日本とカンボジア間を結ぶ直行便は時間帯サービスともに非常に便利な一方、他国のように複数の航空会社が路線を提供し競合している訳ではないので、航空運賃がタイ間やシンガポール間に比べて割高です。また、輸入に際し現地側での負担も少なくないため、それらが価格を上げる主な要因となっています。当社では各飲食店様のご要望をできる限り取りまとめて「量」を確保し、物流コストを相対的に下げる努力を実施しています」と物流の脆弱性について言及した。

旅行業 The Tour

 アンコールワットは、昨年に続きトリップアドバイザーの「2017人気世界遺産ランキング」で1位に選出され、その人気は衰えない。しかし、アンコールワット観光に特化した短期滞在型の観光客が多いのも特徴だ。ホスピタリティ人材の育成に定評があるプノンペンのブティックホテル、サン&ムーンホテルのクロイ・リティ―氏は、「1週間未満の観光客の滞在期間をいかに長くするかが大事です。観光地の拡大やサービスの促進が鍵になります」と、主要都市以外の観光化の必要性について話す。そんな中、フン・セン首相は昨年11月、持続可能な観光客誘致を目的として、地域に根ざしたエコツーリズムを開発・管理する閣僚間タスクフォースの設立を承認した。

 一方、個人所得の増加やソーシャルメディアの成長がカンボジア人の旅行熱を後押しし、国内旅行のみならず近隣諸国への海外旅行客が増加している。観光省によると、2017年海外に旅行したカンボジア人の数は前年比22%増の175万人に到達した。これは長期休暇の多さも1つの要因で、カンボジアは世界で最も祝日が多い国とされ、その日数は年間で28日。長期休暇中には、地方への旅行も活発となり、プノンペンでは170万を超える人口が一時的に10分の1になるほどだ。しかし、祝日中の爆発的な観光客増加に対し、人気観光地であるシェムリアップ州やシアヌーク州では、施設不足からレストランやホテルが値上がりする。政府は、投資を呼び掛けており、加えて観光客の残したゴミ問題ついても早急な対応を迫られる。


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