【IT・通信】
外資系企業の支店開設が増加し、事業規模を拡大する通信会社や銀行・保険会社など金融機関、システム対応し始めた官公庁により、複合機や卓上プリンター、デジタル印刷機などの IT・システム開発関連サービスなどの需要は着実に広がっており、販売数も増加しているという。
2000年初頭から販売代理店を通してカンボジアで機器販売をスタートし2015年10月にカンボジア支店を設置、直販・直サービスを開始した富士ゼロックスアジアパシフィックの山口渉氏は、「弊社製品に関しては、文書管理、ファイル共有といったソフトウエアの販売が着実に増えてきています。また、パスワードやIDカードを利用して出力枚数を管理・制限したり、外部の使用者に関して課金する用途で利用できる、プリント管理用の簡易ソリューションも好評です。調査会社によると、人事資料や財務資料など社内でも関係のない従業員に見せたくない資料や外部向けの大切な情報がプリントされた紙から漏れるというケースが多く発生しているといい、こうした機能はセキュリティの面からも極めて効果的です。複合機やプリンターを複数台数ご使用のお客様には、本格的なプリント管理用のソフトウエアをご導入戴くケースが増えてきました。日本を始めとする先進国や他のアジア諸国では既に一般的になっていますが、今後カンボジアでも企業規模が大きくなることで、ますますニーズは高まってくると思います」とその変化について語った。
マイクロソフトの報告によると、コンピューターウイルスやスパムメール、スパイウェア、その他サイバー脅威に関して、カンボジアはアジアで最も脆弱な国の一つとされている。国内では、マイクロソフトのセキュリティ製品を実行している4台のうち1台が、今年の第1四半期にマルウェアに遭遇したと報告。これは世界平均の2倍以上、日本の12倍のマルウェア遭遇率となっている。主な理由として、多くのカンボジア人が未だに海賊版や古いバージョンのウィンドウズをインストールし、ウイルスに対して脆弱な店舗でソフトウェアをセットアップしていることが挙げられる。しかし、合法的で高品質なウイルス対策ソフトウェアの購入は、カンボジア人にとって経済的に極めて困難だ。
一方これを受け、サイバー犯罪法の草案を仕上げるよう政府も急いでいる。草案は、郵政電気通信省の支援を受けて内務省によって監督されており、両省は米国のサイバーセキュリティ法をモデルに研究している。しかしサイバー犯罪法は、その範囲の広さと関連する分野の多さから素案の策定に時間がかかる見込みだ。
ITシステム関連サービスの品質が高まり、ウェブ開発やスマホ用アプリ開発など、比較的軽めの開発に対応できる技術を備えたカンボジア人若手ITエンジニアの数は着実に増えつつある。キリロム工科大学を設立し、世界で戦える IT人材育成を中核事業とするA2Aタウンの猪塚武氏は、「カンボジアのIT企業が提供できない製品・サービスに特化した、A2Aデジタルサービス事業を立ち上げました。我々はキリロム工科大学との産学連携モデルにより、先端のIT・デジタルの要素技術を活用し、企業と連携しながらソリューションを作ることに最大の強みを発揮します。プロトタイプに満足いただけた場合は、工科大学の学生を卒業後にそのまま戦力人材として採用することも可能です」と語った。今後は、IT開発、コンサルティング&トレーニングを提供し、企業の業務オペレーションやビジネスモデルを変革に貢献していくという。
また、実際に働くエンジニアについて富士ゼロックスアジアパシフィックの山口氏は、「ローカルエンジニアはIT系の大学を卒業後、企業のIT部門や同業種での経験がある者を中途採用しています。採用時にある程度のスキルを持っているのですが、いわば我流です。そのため採用以後は約3週間マレーシアにあるサービスセンターで基礎から教え込んでいきます。また毎年行われる富士ゼロックス技能大会に出場することで全社レベルの技能を肌で感じてもらっています。こうすることで人的ネットワークが広がり、モチベーションアップにも繋がっているようで大変嬉しいです。またソリューション提案に欠かせないSE(システムエンジニア)やデジタル印刷に欠かせないカラーマネジメントのスペシャリストなど、全ビジネス領域を広範囲にサポートできる体制を構築しています。これからも各分野で『プロ』に徹する人材を育成できるようしっかりと教育を行って参りたいと思っています」と、基礎教育とスペシャリスト育成の大切さについて言及した。