【金融・保険】
カンボジアの最新経済動向によると、国内のマイクロファイナンス業界における信用貸の伸びは、2014年から毎年50%以上の増加など急速な成長を見せたが、2016年3月にピークを迎え、11月には31億6000万ドルと急激に停滞、2016年のMFIの伸び率はわずか4.7%。MFIのサービスを受けた総世帯数は、前年の219万から214万世帯に減少した。一方、不良債権(NPL)比率は2015年の0.7%から1.5%に倍増している。この理由については、競争が激化と非公式業者の台頭が挙げられ、加えて、2017年4月から借金超過の抑制、貧困層の支援・削減を目的として、NBC主導で金融機関の上限金利が年率18%に設定されたことも影響する。しかし、かつてのMFIの小規模融資の平均的な年利20~30%よりも低いことから、MFIは人員や経費、低所得者を対象とした融資の削減を強いられ、かえって貧困層による非公式業者の利用が増加した結果だ。
一方、この上限金利により、リエル建てによる貸出金利が、米ドルでの金利と同じ水準にまで低下した。カンボジアマイクロファイナンス協会(CMA)のホウ・イエン・トン会長は、「上限金利により、リエルと米ドル建ての貸出金利の格差は解消しています。加えて、NBCが提供する譲渡性預金証書や証券担保型流動性供給オペレーション(LPCO)により、リエルの資金調達コストが低くなり、より低金利での提供が可能になりました。これにより、リエル建ての融資増加を願っています」と述べた。NBCは省令として、2019年末までに全貸し手に、貸付ポートフォリオの10%をリエルで保有することを義務づけ、これまでリエル建てでの融資に積極的でなかった外資系金融機関が頭を悩ませていた。リエル建て融資の増加には功を奏するとも言える。
カンボジア初であり、唯一の証券取引所、カンボジア証券取引所(CSX)は2011年に発足し、現在はプノンペン水道公社(PWSA)、グランド・ツイン・インターナショナル(GTI)、プノンペン自治港(PPAP)、プノンペン経済特別区(PPSP)、シアヌークビル自治港(SAP)の5つの上場企業がある。しかし取引は闊達とは言えず、上場企業数の増加が喫緊の課題だ。CSXのホン・ソク・ホー氏は、「CSXには8000以上の取引口座がありますが、現在活発な取引を行なっているのは、100程度の口座です。今後はトレーダーの満足度にかかっているでしょう」と述べ、投資家にとって魅力的な市場にすることを目指す。その一環として、韓国の技術援助により年内にCSXのオンライン取引プラットフォームが開始され、また企業による社債の発行も可能になるという。
国内最大手アクレダ銀行のグループ会社で初の上場会社プノンペン水道公社の引受を行ったアクレダ証券のスヴァイ・ハーイ氏は、「カンボジア市場は、すべての外国人投資家に対して開放されています。投資家には、バリュー(割安株)型投資家、グロース(成長株)型投資家、インカム型(定期収入)投資家がおり、我々は、市場の初期段階において、インカム型投資家に最も関心を寄せています。彼らは長期投資に関心があり、投資からの配当金を受け取ります。5つの上場企業のうちプノンペン自治港とシアヌークビル自治港の2社は配当金を保証し、インカム型投資家を誘致しています」と株式購入を考える外国人に対してアドバイスした。
カンボジア保険協会(IAC)によると、今年上半期の保険業界は、引き続き堅調に推移し、総保険料総額は前年比21%の増の6800万ドルに達した。現在カンボジアには、7社の損害保険会社と6社の生命保険会社がある。カンボジアに保険の概念が来たのはわずか5年前だが、2016年の保険料は95%増の4300万ドル、今年上半期には総額10億ドル以上の保険料に達しており、飛躍的な成長を遂げている。IACのホイ・バサロ会長はプノンペンポスト紙の取材で、「生命保険が急成長を遂げた一方、火災や車両、健康保険などの損害保険の成長は控えめだった。人々や企業が保険への理解を深めている」と述べた。しかし、他のアセアン諸国と比較すると、カンボジアの保険普及率は依然として低く、カンボジアの保険部門の発展は、経済財政省の10年間の金融開発戦略の優先事項となっている。
また、保険業界の成長を受け、他国の大手保険会社の参入も目覚ましい。2017年5月には香港に上場し、時価総額で世界第2位の生命保険会社、AIAグループのカンボジア子会社や、バンコクに本社を持ち、日本生命が出資するバンコク・ライフ・アシュアランスが営業を開始した。