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2017年12月8日
カンボジア進出ガイド

【金融・保険】

205 カンボジアの金融・保険①(2017年11月発刊 ISSUE07より)

米ドルとカンボジア通貨リエル The US Dollar and the Cambodian Riel

 1990年代初め国連暫定当局の到着以降、カンボジア国内では米ドルとカンボジア通貨のリエルが流通しており、経済取引の約84%がドル決済である。近年、為替市場のリエル相場は1ドル当たり4000~4100リエルと安定的に推移している。しかし、今年に入って、中央銀行をはじめとする公的機関によるリエルの促進活動が著しい。商業省は7月、リエルの利用促進のため、国内の商品やサービスにリエルでの価格表記を義務付けている。



 マレーシアに親会社を持ち、カンボジアの外資銀行で最大の資本規模であるカンボジア・パブリック銀行のパン・イン・トン氏は、「当行は、特に中小企業向けに魅力的な金利や利益率の高さでリエルでの融資を促進しています。また、2016年にカンボジア国立銀行(NBC)が、リエルでの銀行間取引の即時決済を可能とする、FASTシステムを開始しました。参加金融機関である当行では、顧客が別の参加金融機関を通し、数分以内に資金を別の顧客に送金することもできるようになりました。今後は、水道料金の回収など、リエルを使用した多くの金融サービスを導入する予定です」と話す。一方、拡大する中国との貿易を受けNBCは今年9月、米ドル建ての際にかかる時間短縮と為替リスク回避のため、元-リエルでの為替レートを開始した。

フィンテック Fintec

 これまで銀行口座保有率の低さがデメリットだったが、それを逆手に取り急成長を遂げているのがフィンテックだ。NBCが発表した2017年上半期の送金総額が73万2870件、約180億ドルだ。また、デビットカード、クレジットカードなど銀行決済を通じた電子商取引は、1650万件以上、28億8000万ドル。モバイルバンキングおよびインターネットバンキングを通じては、175万件、25億2000万ドルだ。一方で、銀行口座を持たずとも送金や決済が可能なウィング、トゥルーマネー、イーマネーなどのモバイル決済サービスを通じては、4410万件、73億3000万ドルだ。モバイル決済サービスの台頭が著しい。

 今年6月に決済サービスアプリをローンチしたパイペイのトーマス・ポコルニー氏によると、 既に6万5000以上のダウンロード、1400以上の加盟店との契約が成立し、8月初旬に100万件だった取引数がその下旬には300万件に急増しており、業界でも突出した成長を見せている。



 ポコルニー氏は、「カンボジア人の大多数は銀行口座を持っていませんが、統計的な数字だけで判断せずに、パイペイのようなP2P(ピアツーピア)での金融サービスの認知度はどの近隣国よりもはるかに高いです。このことからパイペイは急速に成長していると言えます」と話す。また、パイペイはABA銀行との提携により、双方の口座間で資金のやり取りが可能になったため、現金を扱うことなく加盟店から商品やサービスを購入できるようになった。一方、デジタルプラットフォームの開発・採用に大きな可能性がある中、NBCは今年4月より日系企業協力し、ブロックチェーン技術を用いた国家的の決済システムを開発している。

商業銀行 Commercial bank



 カンボジアの金融業界は、預金者と預金残高が前年同期比で大幅に増加し、今年上半期も引き続き堅調に拡大した。NBCの第1四半期の報告書によると、6月末までに業界全体の融資額は20.4%増の188億ドルに、預金残高は23.4%増の174億ドルとなり、業界全体の銀行資産合計は、カンボジアの年間GDPの150%に相当し、貸出金と預金はそれぞれ92%と85%に相当し、競争力を増し続けている。



 しかし、2008年の設立当初からジャパンデスクを開設したプノンペン商業銀行のシン・チャン・モー氏は、「現在、プノンペンの商業銀行と支店数は供給過多です。また、支払サービスプロバイダによる新しい購入方法の提供や、大手MFIによる高リスク高収益製品など、これまで商業銀行が手掛けていた分野が、商業銀行以外の事業会社により拡大しています。最近複数の商業銀行が、より多くの州をカバーする拡張戦略を打ち出しており、NBCの資格要件も厳しくなった今、強い銀行が生き残ることになるでしょう」と、商業銀行が晒されている厳しさについても語った。

 その生き残りをかけて、顧客の利便性を追求し、取引の安全性や迅速性、コスト効率を高めるため、電子決済利用の促進も進んでいる。大手行はもちろんのこと、今年7月にはプノンペン商業銀行でもインターネットバンキングが開始された。また、NBCは今年後半にはカンボジア・シェアード・スイッチ(CSS)プログラムを発表予定で、これにより、異なる商業銀行とマイクロファイナンス機関(MFI)のすべてのATMとPOSマシンが統合され、顧客は全国の全銀行を経由しての現金引出しや支払いが可能になるという。



 カンボジア・パブリック銀行のパン氏は、「NBCは金融の安定性を維持し、銀行や他の金融機関の健全性を強めています。NBCのリスクを鑑みた取り組みや、銀行やMFIにおける新しい規定の導入、流動性のある損失負担能力と厳格な監督は、確実に金融部門をさらに強化するでしょう」と語った。


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