【IT・通信】
進出する企業の数も規模もまだまだ小さいカンボジアだが、事業規模を拡大する通信会社や銀行・保険会社など金融機関、システム対応し始めた官公庁などのニーズの高まりにより、ウェブ開発やシステム開発といったIT関連サービスの品質もしだいに高まってきている。
例えば、OA機器である複写機は画像処理部分がデジタル化し、ネットワークに繋がることで多機能化が進み、「マルチファンクションデバイス(MFD)」と呼ばれるようになった。2000年初頭から販売代理店を通してカンボジアで機器販売をスタートし2015年10月にカンボジア支店を設置し直販・直サービスを開始した富士ゼロックスアジアパシフィックの山口渉氏は、「ローカルのオフィス機器市場は黎明期であり新規の需要が拡大しています。日本ではほとんどの企業で既にMFDを導入いただいており成熟市場と呼べますが、カンボジアでは卓上プリンターのみ、或いはOA機器を使っていないオフィスもいまだ珍しくありません。経済規模の拡大にあわせ事業が大きくなればMFDは間違いなく必要になりますので、ローカル企業でのMFDのニーズは確実に拡大して行きます。また外資系企業の投資も堅調ですので、この分野でも伸びしろは十分あります」と語った。外資系企業からの投資で支店開設も増えているカンボジアでは、OA機器を取り巻くIT関連サービスの品質も向上が期待される。
ITシステム関連サービスの品質が高まり、ウェブサービス開発やスマホ用アプリ開発など、比較的軽めの開発に対応できる技術を備えたカンボジア人若手ITエンジニアの数は着実に増えつつある。 しかしカンボジアITの将来を担う人材のための教育インフラはまだまだ脆弱だ。
カンボジア首都プノンペンから西へ車で約110kmの隣州に位置するキリロム国立公園の敷地内でキリロム工科大学を設立し、その大学を拠点に「vKirirom Nature City」を構想するキリロム工科大学の猪塚武氏は、「一番の問題点は先生ですね。先生がどんなITに価値があるか知らないですし、知っていても教えられません。知らないとその分野に踏み込めない。また、需要があればその分野を先生が教えますが、需要が無いと教えられません」と語る。
しかしIT教育環境は次第に改善しつつあるようだ。「グローバルな人材を育成するための大学」と標榜しキリロム工科大学を設立した同氏は、「現在、教育を良くしようと教育大臣が頑張っており、今後は良くなる一方だと思います。しかし、まだ先生のレベルが低いためスピードはゆっくりでしょう。良い先生がいないとIT教育は上手くいかず、面白い仕事が無いとIT人材は育たない。カンボジアでは面白い仕事が少ないため、ここを増やすのもポイントかと思いますね。仕事が増えるとOJTを行うことが出来ます。草の根で良くなっていることってあまり表に出ないので分かりにくいですが、急速に良くなっているとは思う。我々の学生がフェイスブックで何をやっているかを自慢すると、その友達も学びたいと言っている。なので、我々がリードしながら全体も上がっていくといい。キリロム工科大学は、自分だけのアイデアではなく、最先端の教育改革をされている方の議論を基に作られています。日本にも素晴らしい先生が沢山いて、教育改革しようとする人も多いです。しかし、日本だと実現することが難しい。カンボジアだと、国のリーダーたちが我々のことを信用してくれましたからね」と語った。