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2017年6月29日
カンボジア進出ガイド

【IT・通信】

185 カンボジアの通信・IT①(2017年05月発刊 ISSUE06より)

携帯通信事情 The situation of the mobile phone sector

 2013年には人口1500万人に満たない小国に8社もの通信キャリアが移動通信サービスを提供していたカンボジアの携帯市場であったが、合従連衡の波が一気に押し寄せた。現在はベトナム系キャリアであるヴィッテルを母体とするメットフォン、マレーシア系キャリアであるアクシアタを母体とするスマート、カンボジア有力財閥ロイヤルグループとルクセンブルグ系MCIの共同出資によるセルカードの3大キャリアが市場をほぼ制圧している。



 小さな市場で競争が激化するなか、各通信キャリアは進化する顧客ニーズの取り込みに必死だ。通信会社にとっての従来の主な収益源は音声通信やSMSであったが、今は主にデータ通信によってアプリや動画を楽しむユーザーからの収益に移行しているの世界的な潮流であり、カンボジアではその変化速度が他国よりも速いと言われる。老若男女問わずほぼ常時にFacebookやLINEといったソーシャルネットワークサービス(SNS)に触れている状況だ。2009年4月に8番目の通信キャリアとしてスタートした後、積極的なM&Aにより業界2位にまで駆け上がったスマートアクシアタのトーマス・ハント氏は、「ベトナムやタイと比較すれば同等もしくはそれ以上の発展レベルです。カンボジアでは4Gが広範囲かつ十分手の届く価格で利用可能ですが、ベトナムには4Gはありませんし、タイでは2015年に導入されたばかりです。通信インフラや質、サービス内容が良いので、ビジネスにもカンボジアは適しています」と語る。

 市場の変化への対応もスマートは迅速だ。同氏は、「我々は、特にデータネットワークに集中して投資してきました。2016年の投資額は過去最大で、4G通信網整備のために7500万ドルを費やします。4G LTE はデータ通信に特化しており、我々は2年半以上前にカンボジアで初めて導入しました。競合他社は4Gにあまり投資していなかったので、その隙にこれまで以上に投資を加速させているところです。すでに基地局の45%が4Gを導入しました。通信が速くなってストリーミング再生などに最適なため、ユーザーも驚くべき体験をするでしょう」と話す。

 先進的な通信インフラの拡充だけでなく、若者向けのサービスやCSR事業へも注力するスマートアクシアタのハント氏はまた、「スマートはコンテンツの提供にも力を入れています。約1年前に音楽ストリーミングサービスを開始しました。国際的に有名なアーティストらと独占契約し、彼らのオリジナルコンテンツを提供しています。アーティストもそこからきちんと収入を得るというメリットがあります。また、動画ストリーミングサービスもYouTube以外にカンボジアに登場するでしょう。NetFlixは既に上陸しました。我々もパートナーシップベースで、カンボジアでの動画ストリーミングサービス開始に向け動いているところです。動画コンテンツの需要は高いです」と語った。

国内外での通話や通信 Telephone and communication in Japan and overseas

 通信料が低額であるのと、様々な新しいサービスを提供しているスマートアクシアタはカンボジア人の若者を中心にシェアを伸ばしているが、在カンボジアの日本人ビジネスマンにとっても好評な理由は、日本への国際電話も1分あたり7セント(約8円)と低額である点だ。また、日本出張の際もそのまま使用することができ、その際の通話料金は通話先が日本・カンボジアどちらでも1分あたり500リエル(約14円)、またデータ通信なら10ドルで無制限に利用が可能というのも特長。もちろん出張先が日本でなくタイやベトナム、シンガポールなどのASEAN諸国や米国や韓国ならさらに安価な設定になっている。詳細は同社のWEBサイトをご覧いただきたい。

インターネット環境 Internet services in the Kingdom

 「通信インフラ的にカンボジアは後発途上国ではない」と言い切るスマートアクシアタのハント氏。 確かにカンボジアの主要市内の主な飲食店やホテルでは、無料Wi-Fiが当然のように設置され、ほぼどこでも当たり前のように高速インターネットが利用でき、またその通信コストも極めて安価である。
 
 そして、この先進国並みの通信インフラは、次第にカンボジアの地方や田舎にも広がりつつある。同氏は、「田舎でも3Gは展開済みで、これから4Gを拡大させます。4G LTEを使用できるスマートフォンが最低販売価格69ドルで手に入りますから、農家や縫製労働者などの低所得層も購入しやすくなっており、既に人々は4Gを利用できる環境にあります。カンボジアの通信料は比較すると非常に安価で、スマートでは1.5GBを1ドルで提供しています。日本だったら20ドルはするのではないでしょうか。平均収入に差があるとはいえ、随分違います。スマートの1つの使命に「デジタル・インクルージョン」というのがあり、カンボジアの全ての人々をデジタルで繋ぎ、包括したいという想いがあります。ですから人々がインターネットの利益を十分享受できる額でサービスを提供しているのです。これは商業的使命ではなく、社会的課題です。例えば最も頻繁に利用されているフェイスブックは単なる情報チャンネルではなく、離れて住む友人・家族とのコミュニケーションチャンネルです。出稼ぎに行く人や地方から首都へ来る割合が多いカンボジアでは、非常に重要なことですね」と語った。


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