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2017年6月29日
カンボジア進出ガイド

【建築・内装】

183 カンボジアの建設・内装②(2017年05月発刊 ISSUE06より)

ボレイとコンドミニアム Borey & Condominium

 世界銀行の統計(2013年)によればカンボジアの都市人口割合は20.3%とASEAN諸国中最低のため、中長期的にプノンペンの都市化率が更に上昇することが予測される。また、プノンペンの中間所得層の収入増加により、ボレイと呼ばれる戸建住宅街の開発が急成長している。

 プノンペン都南部に50ヘクタール以上のボレイ計画を進めているソナトラグループの永田哲司氏は、「コンドミアムに比べると、ボレイ自体はまだ売れています。コンドミアムはローカルの人は買いませんから、頼みの綱は外国人投資家です。しかし、ボレイは未だにローカルの人がすごく好きなマーケットです」と語る。

 住みやすい環境に恵まれ、買い手が土地所有権利を持てる点が人気だが、選ぶうえで留意点もある。

 同氏は、「一番大事なのは、ボレイ自体の価値を上げること、街をどう作ってどう発展させるのかです。ちゃんとメンテナンスして、富裕層の方々も住みだす街を開発しなければなりません。メンテナンスしないと公園は汚れ、道路も傷み、町自体の付加価値が下がります。良い町に継続して作るなら、メンテナンスが一番大事です」と、できるだけ良いボレイを選ぶ方法としてメンテナンスの重要性を指摘している。



 潜在的な買い手には多くの選択肢があり、市場競争に勝つためにデベロッパーも抑えた価格を提示しているが、ボレイの一部のデベロッパーが顧客に対し、頭金なしで30年間の長期住宅ローンを提供しているケースもある。

 一方でコンドミニアムを購入するカンボジア人の多くは、学校や空港、都内中心部へ簡単にアクセスでき、素晴らしい景観や設備を持つ、都会的で世界基準のライフスタイルを楽しみたいと思っており、もちろんそのほとんどが、キャピタルゲインや賃貸収入目的も含まれる。オーキデヴィラの場合、ボレイ内のコンドミニアムの9割以上の購入者が、若くて知識を持ち、海外を知っている現地人だという。センチュリー21・メコンのチレク・ソクニム氏は、「カンボジアの高齢者の習慣や文化では土地を持ちたがり、コンドミニアムに住むことを好みません。コンドミニアムがそれぞれ分かれた居住スペースを持っていることすら理解していない人もいます。コンドミニアムを買う地元の人のほとんどは投資が目的です。コンドミニアムに住むことを好む外国人に貸すためです。しかし3年後には若い世代が文化の変化を受け入れてコンドミニアムに住むようになるでしょう」と語った。



労働者 Construction workers

 カンボジアの不動産・建設セクターが20万人以上のカンボジア人を雇用するなど、雇用機会創出の牽引役となっている。地方からの出稼ぎ労働者が多く雇用されており、収穫期でない時期には高報酬を求めて地方から首都へ大量流入し、収穫期になれば地方へ農業をしに戻るという。

 C&Pのミース氏は、「建設労働者のほとんどが、市内でのプロジェクトが無い時期には、農作業にほとんどの時間を費やすため、季節に左右されます。昨年からコメをはじめとする多くの農産物の販売価格が下がったことから、労働者たちは、利益を上げられない
農作業に従事せず、通年で建設現場において働く方が良いと思っています」と話す。

 一方で、より高い賃金を求め労働者がタイなどへ流出するため建設業で労働力が不足している面もある。昨年8月、カンボジア内務省により発表された報告書によれば、今年始まって以降、1万人以上の不法労働者(90%がベトナム人)が国外追放処分となっており、その多くが建設業に従事していた。

 C&Pのミース氏は、「建設労働者の賃金は徐々に上昇しています。1日当たりの人件費では、非熟練労働者は6ドル以上、低技能労働者は10ドル~15ドル、熟練労働者は20ドル程度です。デベロッパー は、期限内の完成に向けて十分な労働力を確保したいと思っていますが、建設作業員が不足しているため、賃金と労働条件は近年争われています」と語る。



 建設労働者の技術力について、SCEのエン氏は、「カンボジアでは、熟練技術者も非熟練労働者も、特に学校で学ぶ慣習はなく、師匠が弟子に教えるような形で、技術を学ぶんです。そのため技術レベルに一貫性がなく、基準がありません。これは大きな問題ですね。そのため、今求められているのは、スキルを向上させる職業訓練学校です。しかし、政府の動きが進んでいるとは思えず、民間企業や投資家に依存している状態です」と語る。同氏によると、カンボジア人作業員の70%は非熟練労働者だとのことだ。現在、民間企業による大学設立は盛んだが、職業訓練学校は後手に回っており、一方でカンボジア人の大半は学費を捻出することが難しい。

カンボジアを理解した取り組み Understanding the impact of Cambodia

 資本家や利用者が内装デザインに価値を見出している限り、内装業界は益々成長していく。

 設計や工法においても現地を理解した考え方が重要になる。カンボジアでは日本で使われる建材が手に入りにくい。カンボジアでの施行には創意工夫が必要になる。



 建築デザイン・プロデュースをするココチカムデザインの河内利成氏は、「大部分の発注者は実際の費用よりも安く予算を見積りますし、また、その額で請け負ってしまう工事会社もあります。しかし、そのような工事業者は途中から資金の不足分を次々と請求しますので、対応の判断を場当たり的に求められ、結果的に高くなることもあります。余裕のある予算のなかで計画的に工事する場合と比較したら、ボロボロの状態で工事が進捗していくわけです」と話す。

 もちろん、安ければ良いというばかりではない。先進的なデザインで数々の実績を持つ内装会社、ザ・ルームのデザインダイレクター兼アーキテクト、パヴェウ・シウデスキー氏は、「内装で最も重要なのは品質です。どれだけ安く見積を出せたとしても上質でなければ、その事業は失敗に終わるかと思います。内装デザインは非常に重要です。顧客の製品やサービスの品質保証にも関わってもきます。コンセプトにあった素敵な内装の店舗やブランドショップを訪れたとき、サービス内容や製品について知る前に、第一印象でお客様が良い判断を下すこともありますよね」と語った。いずれにしても進出には十分な準備や調査が重要だ。


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