カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

2017年1月4日
カンボジア進出ガイド

【金融・保険】

145 カンボジアの金融・保険①(2016年11月発刊 ISSUE05より)

金融 Finance

米ドルとカンボジア通貨リエル The US Dollar and the Cambodian Riel

 カンボジア国内では米ドルとカンボジア通貨のリエルが流通しているが、経済取引の大半がドル決済である。カンボジア経済は1990年代初め国連暫定当局の到着後にドル化し、1993年には経済取引の約36%を占め、2003年に70%に跳ね上がると、現在ドル取引はカンボジアの総金融取引の約84%を占めている。その要因は外国為替に関する規制がほとんどないことが考えられる。



 世界で10数行しかないAA格付けを持つ国際的金融機関、ANZロイヤル銀行のレオニー・レスブリッジ氏は、「中央銀行にとっては、現地通貨の普及は安定した経済を保つための金融手段になります。安定した経済を実現していくうえで、貨幣量と対外投資などの資本収支のコントロールがポイントになります。しかしドル化経済では、政府が経済をコントロールする力が十分に発揮されません。ですので今後、自国通貨のリエルどう位置付けていくかを考える必要が出てくるでしょう。ただしリエルを基軸通貨とした場合、経済活動がどのような姿になるか理解しなくてはなりませんし、また投資家や市場からの理解と協力が不可欠です」と語った。

 カンボジア中央銀行(NBC)は2016年上半期に4.89億ドルに相当する2兆リエルのリエル札を市場に投入し、投入額は前年同期比で18%増加していると発表した。依然として賃金や国際取引など多くの場面で米ドルの需要は高いが、政府主導の自国通貨の利用促により、リエル使用率の上昇が予想される。しかし一方で、米ドルの恩恵により輸出面で強い成長を見せているという見方もある。

支払手段 Means of payment

 近年、為替市場のリエル相場は1ドル当たり4000~4100リエルと安定的に推移している。市中銀行や両替商ではその日の変動レートで通貨交換がなされるが、実際にドル建ての少額取引をリエルで支払う場合、便宜上、1ドル当たり4000リエルか、取引先が個別に定める固定レートで計算され、もっぱら現金による直払いがなされる。しかし、法人のように取引額が高額になる場合などは小切手が比較的頻繁に利用される。

 今後の動きについて、カンボジア最大の銀行としてマーケットリーダーの地位を維持しているアクレダ銀行のソー・フォナリ―氏は、「各銀行もネットバンキングやモバイルバンキングなど様々な付加価値を提供し始めており、請求書の支払いや口座間の資金移動を簡単に行う事が出来、今後は各銀行もネットバンキングやモバイルバンキングの対応が拡大していくでしょう」と話す。アクレダ銀行は、2015年末に電子商取引決済”ゲートウェイ”を始めてから、月間のオンライン取引額50万ドルの急成長を見せる。



 またこれまで認知度が低かったクレジットカードについて、マレーシアに親会社を持ち、カンボジアの外資銀行で最大の資本規模であるカンボジア・パブリック銀行のパン・イン・トン氏は、「増え続ける日系投資及び観光とともにJCBカード利用者増加を見込み、2015年10月よりJCB加盟店銀行となりました。ホテルやサービスアパートメント、航空会社や旅行代理店、その他加盟店向けのオンラインウェブ決済が今後24時間利用できるようになります」と話す。NBCによると2015年、デビットカード140万枚とクレジットカード4万枚が国内で発行されており、アナログだった決済も益々変化するだろう。

カンボジアの銀行 Banks in Cambodia

 カンボジア中央銀行(NBC)のチェア・チャント頭取のリーダーシップにより、近年のカンボジア銀行業界は急速に発展している。カンボジア中央銀行の統計によれば、2015年末時点において商業銀行のライセンスを所有している銀行は36社で、特別銀行のライセンスを所有しているのは11社。総資産額は、前年度比約23%増の196億ドルで、また、2015年の預金総額は114億ドルで、前年度比17.4%増だった。



 カンボジア中央銀行の発表によると、商業銀行35行のうち総資産額上位4行(アクレダ銀行、カナディア銀行、カンボジア・パブリック銀行、ANZロイヤル銀行)で市場シェアの4割以上を占めており、ANZロイヤル銀行のレスブリッジ氏は、「カンボジア経済はとても急速に成長しており、多くの金融機関が設立され、信用度が急激に上昇しています。金融サービスやシステムもより高度になり、顧客満足につながっています。今後は、カンボジアの中央銀行が増加する金融機関をどう規制して適切に進めて行くか、また保険によるサポートの充実など、必要になる役割が増えると思います」と語っている。

 また銀行を選ぶポイントについて、カンボジア・パブリック銀行のパン氏は、「所得比率の上昇と高学歴者の増加で顧客の見識も高まり、要求も細かくなっているため、銀行の選択にも厳しくなっているように思います。銀行を選ぶ時は、その銀行の資本力と実績や顧客サービスの評価、さらに革新的な金融商品の有無が基準にされています」と話す。カンボジアに進出する企業が銀行を選ぶポイントは、その企業の事業内容や経営方針により異なるが、国際標準の金融基準を適用しているか、現地でのビジネスに精通しているか、十分な資金を持っているかなどを踏まえ、安心して気持よく利用できる金融機関を選ぶべきだろう。


その他の「金融・保険」の進出ガイド

金融・保険
金融・保険
金融・保険