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2016年6月9日
カンボジア進出ガイド

【不動産】

117 カンボジアの不動産①(2016年5月発刊 ISSUE04より)

地価 Land Prices

116 カンボジアの金融&保険③から続き

 2009年、世界同時不況がカンボジア全体の地価に影響を与え、ゴールドタワー42に代表されるいくつかのプロジェクトの建設が停滞または遅延した。2012年初頭から徐々に回復し、現在ではプノンペンの主要なエリアで世界同時不況前の地価を超えている。1993年創業の国際的な不動産会社、CBREのレポートによると、プノンペンの地価が2015年は対前年比で8.4%上昇したとしている。



 不動産業界で10年近くの経歴を持ち、カンボジア不動産協会の副会長でもある、センチュリー21・メコンのチレク・ソクニム氏は、「プノンペンでは今後、郊外4つのエリアが発展していくと思います。1つはトゥールコーク区北部からセンソック区のクラントノン地区、そして国道5号線までのエリア、北部郊外にあるリーヨンパット橋付近までのところは近い将来とても良いエリアになると思います。現在イオン2号店もこのエリアに建設が予定されています。2つ目は、国道5号線と6号線の間のエリア。カンボジア日本友好橋から国道5号線と6号線を通ってリーヨンパット橋付近までのところです。OCICとリーヨンパットグループによって開発され、ヨンパットエリアと呼ばれます。3つ目はフンセンルートと呼ばれるエリアです。4つ目は国道1号線南側のエリアです。地価はどんどん高くなっています」と語る。

オフィスの賃貸 Office Rental

 カンボジア経済及び不動産市場の安定的な成長を反映し、プノンペンのオフィス賃料は上昇している。CBREのレポートによると、プノンペンのグレードA及びグレードB(中心商業地区)は賃料が横ばいとなっているものの、グレードB(郊外)、グレードCは引き続き強い経済成長に投資しようとしている外国企業からの着実な需要を背景に上昇している。

 1993年創業の国際的な不動産会社、CBREのジェームス・パデン氏は、「オフィス物件の賃貸価格は昨年に入ってから上昇が続いています。グレードB、C物件の需要が高まっているのも一因です。一昨年はヴァタナックキャピタルの完成でグレードA物件の供給が一気に拡大したため、グレードB、Cに比べると価格上昇は落ち着いており、平均平米単価は28ドルとなっています」と言う。

 ナイトフランクの調査によると、ドーンペン区では2015年のオフィススペースの供給面積が117,615㎡であるのに対し、2018年には144,217㎡と22.6%増加する見込みとしており、ホンコンランドの開発プロジェクトによる18,500㎡の供給などが寄与している。また、プノンペンタワーのある7マカラ区では、2015年48,313㎡が、2018年には116,192㎡と140.5%も増加する見込みとしており、オリンピックスタジアムに隣接する複数の大型プロジェクトからの供給が増加に寄与している。また、伸び率だけに着目すれば、トゥールコーク区は2018年に51,597㎡のオフィススペースが供給される見込みであり、2015年の13,958㎡から比べると269.7%の伸びだ。

 なお、現在の代表的なオフィスビルは2011年竣工のプノンペンタワー、2009年竣工のカナディアタワー、2014年竣工ヴァタナックキャピタルタワーなど。その他に、長屋に似たフラット(プテアロベーン)と呼ばれる住宅の一室や、ヴィラ(一軒家)をオフィスとして賃貸している企業もある。デポジット(保証金)は1~3か月が一般的である。

商業物件の賃貸 Renting of commercial space



 消費者関連ビジネスの場合、業種や目的により賃貸に適するエリアは相違するが、周囲環境の目まぐるしい変化により、街の動線の変化を予想することは難しい。

 近年は多くの物件の契約年数上限が5年に引き下げられたが、入居に際して改装費用が多額な場合は、予算やデポジット、契約期間などを勘案して契約することが肝要となる。また、良い物件はすぐに賃貸市場から無くなるため、スピードも重要だ。

 2012年創業のライフ・デザイン・パートナーズの青山英明氏は、「日本と比べて相場が無いので安く抑えようと思えばいくらでも安くなるのがカンボジアですから、下は色々とありますし、上は日本並みの価格の物件があります。選択肢の幅が広いのがカンボジアの特徴ですから、戦略を決めずにブレると、物件条件が変わってしまうため、なかなか良い物件には出会えません。まず戦略を決めて、狙う顧客層を決めて、物件を選択する。どの業種にも言えますが、カンボジアに来るとあれもこれもと目移りしがちです。最低限のマーケットリサーチを最初にして戦略を決めてから取り組む事をお勧めします」と語る。

 いくつかの小売業が中心街で自社ブランドを出店しており、CBREの2015年第2四半期の調査によると、メインストリートの一つであるシハヌーク通り沿いの月額賃料は平米単価20~30ドルであった。

 一方で初の国際基準モールとなったイオンモールも今年6月で開店2年を迎え、現在も100%の入居率を保持しており、この成功の恩恵を受ける形で中心街全体の商業スペースは昨年は空室率22%と、前年同期の25%から改善している。このほか、トンレサップ川とメコン川が交わる川に囲まれた場所に立地するソカホテル・プノンペンには現時点で小売向けに1,020㎡の賃貸スペースを提供しており、今年にはマレーシア系のパークソンがプノンペン空港近くに「パークソン・シティセンターモール」を出店し57,000㎡を提供、シンガポール系のオクスリーの複合施設「ブリッジ」は2017年までに24,000㎡を小売向けに提供するなど、2017年末までに214,520㎡から455,348㎡と大幅増加する見込みだ。また、2018年にはイオンモール2号店の出店も続いている。

 ナイトフランクの調査によれば、トゥールコーク区、プノンペン北東部郊外のチョロイチャンバー区、及び北西部郊外のセンソック区の商業スペースの供給面積が2018年までに急増する見込みとしている。特に、これらは住宅戸数が急増するエリアと重なる。
118 カンボジアの不動産②へ続く


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