【運輸・物流】
(092 カンボジアの運輸・物流③から続き)
物流会社を選ぶ時はその会社の実績と構成やカンボジアでの評判を調べるだけではなく、課税制度にどこまでコンプライアンスを守っているかも調査すべきである。これは物流会社に限った話ではないが、順守していない会社を選ぶと後々に問題となる場合もあり、注意が必要である。
2008年創業、主に米国発着の衣類や靴の輸出入を手掛けるトライアンフ・リンク・ロジスティクスのコウ・ペン氏は、「現在カンボジアは変化の真っただ中です。税金の支払いに関するコンプライアンスは、我社にとっても問題になってきています。競合する市場で、コンプライアンスを順守して、より高いコストを負う当社のような会社がある一方で、税金の支払いのコンプライアンスを順守しない一部の会社は、安価な価格設定を提示することができている。様々な課題がありますが、今後改善されることで市場の活性化につながるのではないかと思います」と語る。
個人商店や小規模企業等、まとまった物量を必要としない所は、輸入量も少ないが故に輸入業者がハンドキャリーやバス輸送等で持ち込み、関税を支払わずに輸入を行うケースも存在する。鴻池運輸の高林氏は、「私たちは日本でAEO認定通関業者ですので、コンプライアンスに関しては徹底的にやっており、関税云々をスルーするという輸送サービスは提供できません。ですから、ハンドキャリー等ができない大規模の物流量となる大型店舗の進出を待つか、既存の店舗の取扱量が相当規模まで大きくなるのを待つしかありません。または、少量の物流量でもコンプライアンスを守り正規輸入したいという企業とお付き合いをするということになります。」と語る。
日本食レストランの開店ラッシュが続くプノンペンでは、現在、10社の日本食材を扱う食品サプライヤーが存在する。日本から直輸入した食材を適正価格で提供すべく2013年に参入したダイシントレーディングの竹田毬氏は、「日本食レストランはますます増えており、確実に伸びている業界です。その分競争も激しくなっており、2年半前の創業時に比べ、競合は5社から10社へ倍増しました。スタート時は調味料のみでしたが、現在はお酒や冷凍加工品を含めた多くの商品を扱っています。また、いくつもの日本の食品メーカーさんとのタイアップなどにより、日本食をもっと知って頂く活動に力を入れています。」と語っている。また、時間厳守の概念が乏しいカンボジアならではの問題として、「一番気をつけているのはご希望の時間に確実に届けるということです。そのためにスタッフへの教育も徹底しています。数年前からの出店ラッシュにはじまり、最近は大手飲食店の進出もあります。ますます拡大する日系飲食店の皆様に安心、確実なお届けができるよう心がけています。」と語る。物流インフラの整備には、外的要因の改善だけではなく、当事者意識の改革も重要な要素となる。
法整備等も未熟な面があり、税関に関して言えば担当者によって解釈が全く異なることも日常茶飯事。日本の常識では到底理解不能な事項も多発する中、物流に関する問題はコストと納期にそのまま跳ね返ってくるだけに、利用する物流会社の選択は料金だけではなく、どれだけ経験・知識・ホスピタリティがあるかも重要な要素となる。大小問わず、日系物流業者のカンボジア進出も加速している昨今、ローカル物流会社の中にはライセンス未取得で営業している業者もあり、トラブル時の対応や説明責任問題等で大きな違いが出てくるので業者選択には十分注意したい。また日系企業の進出に伴い、カンボジアの物流インフラ整備停滞につながる最大要因の一つである、カンボジア人関係者の意識改革へ与える影響にも大きく期待すると共に、不明瞭な費用請求の撲滅撤廃を進める事が最大の課題でもある。
ASEAN経済共同体が発足後、どこまで規制が緩和されるか明確な情報は示されておらず、一方で輸出税やリスクマネジメントコントロールというシステムの導入を理由に新たな徴収の動きもあり、関税が安くなる分、これらがどう影響するのか未知数だ。料金明瞭化に伴い、総合的なコスト高になる可能性もあるため、変化には注意が必要である。
(094 カンボジアの医療・医薬①へ続く)