【建築・内装】
(078 カンボジアの不動産②から続き)
カンボジアの建設業界は年を追うごとに急速に変化している。2014年の建設投資額は約25億ドルで1,960件のプロジェクトが承認され、前年と比較しおおむね堅調に推移したが、2015年は全体的に大きく下落する見込みだ。建設会社、サプライヤー、不動産会社など60社以上が加入するカンボジア建設協会(CCA)が支援する建築業界専門誌、コントラクション&プロパティ(C&P)のミース・プロックサー氏は、「多くの投資家が既にこれまでの数年で仕掛けた各案件に着工しているおり、同セクターは健全な成長を示しています。案件のほとんどは2018年までの完成を計画しているものです」と話す。
特に2015 年は、カンボジアがAEC(ASEAN経済共同体)発足を目前にして、めざましい発展が見られる。多くの国際的な建設関連会社が、駐在員事務所の設立や正規代理店を通じてカンボジアへ進出しており、建設関連の製品は低価格から高価格帯のものまで幅広く手に入るようになった。一方、市場の競争はより厳しくなっており、部材の価格競争も激しさを増している。
C&Pのミース氏は、「既にいくつかの先進的なサプライヤの中には、先進技術を活用する等して、クライアントが競争優位性を保つ上で役立つサービスをパッケージ化して提供しています。価格的な競争力だけでなく、新たな価値の提案が求められています。また、多くのサプライヤがより高品質の製品を供給できるように動き始めています。コンドミニアム、アパートメント、ホテル、集合住宅建設のような大規模な建設案件に加え、今では戸建て住宅の建設案件でも品質の高い製品を求め始めていることが理由です」と語る。
2020年までに完成予定の高級コンドミニアムの総供給予定数は約13,000戸。そのうち、カンボジアデイリー紙によると、2017年までにプノンペン市内には9,500戸が供給されるとCBREのシニアアソシエートデレクター、ティダ・アン氏は答えており、不動産会社最大手のボナリアルティ代表のソン・ボンナ氏によれば、投資家たちは投機的に購入しているものの、供給の増加によりプロパティを埋められないことを心配しているとし、マンションが建設された後の稼働率が懸念されると述べた。
プノンペンで多数の建設実績がある韓国系デベロッパーNURID&Cのアンドリュー・J・アン氏は、「以前はオープンで入りやすいマーケットでしたが、現在の状況ではチャンスにも限りがあり利益を出すのも限界があると思います。きちんとストーリーがあり、質も一流のものを提供できる会社が生き残る時代へと変化を遂げています。ブームはしばらく続くと思いますが、価格は下がると予想されますので、会社のローカライズやサプライの強化、ローカル人材の育成、魅力的な新物件の投入、投資家の誘引がカギとなるでしょう。数年後は供給過多が予測され、多くの不動産開発会社が選択を迫られることになるでしょう」と近い未来を予想している。
一方で中長期的な視点で捉えると、日系発のコンドミニアムプロジェクト「ボダイジュ・レジデンス」を発表した不動産会社クリードの約仕知宏氏は、「現在プノンペンでは、コンドミニアムはオーバーサプライといわれていますが、我々としては、プノンペンにおけるコンドミニアムマーケットはまだまだ始まったばかりだと思っています。一見供給が多いように見えますが中期的に見て十分に需要は追いつくでしょう。エリアに関係なく全体的にまだまだ伸びしろがあると思います」と語る。世界銀行の統計(2013年)によればカンボジアの都市人口割合は20.3%とASEAN諸国中最低のため、中長期的にプノンペンの都市化率が更に上昇することが予測される。
カンボジアではレンガを積み上げた建物をよく見ることができる。耐久力の強いレンガだが、建設費の上昇、労働力不足、技術の進歩を背景に、耐久性が高く未熟練労働者でも施工可能なプレキャストパネルが注目されつつある。レンガの壁は1㎡あたり1時間を要するが、プレキャストパネルは同じ時間で6㎡を設置できるからだ。大型案件を数多く手がけるカナディア財閥系の建設会社、オーバーシーズ・カンボジア・インベストメント(OCIC)のトゥーチ・サムナン氏は、「地価が高騰しているので、将来的には高層のコンドミニアムの需要が増えると考えています。このような需要に応えるため、いかにして早く建てられるかというのが課題となってきています。私たちは他国の先進的な施工法を学びながら将来に備えています」と語る。
また、これまではコストが高く地階はあまり作られてこなかったが、現在では地価の高騰でプノンペン中心部では地階を持つ建物も多くなってきている。
(080 カンボジアの建築・内装②へ続く)