【マーケティング・メディア】
自社のサービスや商品がカンボジアのマーケットにおいてどんな位置づけであるかを調査するところから始める企業が多い。これから投入しようとしているサービスや商品が本当に需要があるか、タイミングは最適か、パートナーはみつかるのかなど、マーケット調査のポイントはいくつか挙げられる。マーケット調査の老舗、インドチャイナリサーチのカール・リモイ氏は、「ここ10年近くカンボジアの経済は年間6~7%という水準で成長を続けています。世界的に見てもかなりの発展スピードと言えます。我が社の調査の結果からも世帯収入の増加、さらに中流階級の発達が認められています。ここ数年は国際的な大手企業の参入が増えてきている段階であり、投入しようとするサービスのレベルも重要なポイントになっています」と述べており、「カンボジアにはかなりポテンシャルがあると思います。しかし、カンボジア独特のマーケットの理解を深めることが重要です。特にここ近年の変化はキーになると思います。急激な成長により消費者の考え方も変化していますから、最新のカンボジア事情を持ち合わせていることが成功のカギとなるでしょう。」と加えた。
消費が活発な若者や中間層以上に効果的なのがウェブメディアだ。インターネットの普及率は、隣国タイが28.94%、ベトナム43.90%と比較してカンボジアは6.00%と低いが(ITU 2013年)、プノンペンの若者に限れば、PC、スマートフォンの所持率は高い。一日50万プレビューを獲得するウェブサイト「クメール24」を運営するティ・ラディー氏によれば、「私は大学で講師をしているのですが、経験から言えば、5年前は30人クラスでノートパソコンを持っている学生はわずか2人でした。しかし、現在は30人中28人がノートパソコンを持っています。また、クメール24のユーザーの30から50%はスマートフォンからのアクセスです」と語っている。価格を抑えた中国製商品の流通により、PC所持者は増加している。
ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)の中でも、カンボジアで特に人気が高いのがフェイスブックだ。カンボジアのフェイスブックユーザーは2014年時点で142万人で、2か月ごとにほぼ倍に増加している。スマートアクシアタのトーマス・ハント氏は、「フェイスブックはカンボジアで最も利用されているサービスの一つです。フェイスブックとインターネットが同じものという認識をもっている人が多いと思います」と述べている。フェイスブックの調べによれば、カンボジアではモバイルデバイスからフェイスブックを利用する人は81%の116万人に上っており、スマートでは、スマートフォンを持たずにどのようなモバイルデバイスでもフェイスブックを利用できるサービスを開始している。
クメール24のティ氏もフェイスブックの人気について、「情報の集めやすさ、発信のしやすさがその大きな理由だと思います」と述べている。カンボジアは与野党の二大政党であり、新聞やラジオなどのメディアはどちらかに偏った報道がされている。大手オンラインニュースサイト「トメイトメイ・ドットコム」のキー・ソクリム氏は、「カンボジアでは政治的な立場にある報道機関はとても多いのです。いくらでもあります。政府に対して肯定的なもの、否定的なものなど、何らかのポジショニングをしているメディアがほとんどです」と、カンボジアのメディアの現状について語っている。
そのような状況の中、フェイスブックがカンボジアに浸透した理由として、クメール24のティ氏は「カンボジアの人々は政治的に偏った情報はいらないと考えています。フェイスブックではリアルな情報収集が可能です。若者たちはフェイスブックなどのSNSを使って、リアルな情報交換を行っているのです」と述べている。一般的にカンボジア人達は「友達」の数が多い。情報交換の手段としての側面も強いため知らない人でも友達になるが、実際には登録して日々情報を眺めるだけといった使い方をしている人が多い。
カンボジアでも多くの企業が、広告・宣伝活動にフェイスブックマーケティングを取り入れている。そして、これもカンボジアの特徴であるが、いいね!も比較的簡単につきやすい。例えば、「携帯電話の情報を扱っている有名なフェイスブックページは3万いいね! を獲得しています。一方で私の教え子が作った同じようなウェブサイトは10万いいね! を獲得しました。ですから、一概にいいね! の数で効果があるとは言えないと思います」とクメール24のティ氏。
ある程度の認知には効果的ではあるが、他のマーケティング手段、メディアを併用して相乗効果を狙うことが必要のようだ。実際に、フェイスブックで自社サービスの宣伝をしても、そのまま購買や来店につながることは簡単ではない。
「クーポンキング」を運営しているスタンディングオンザブリッジの清野裕司氏は、「即購買につなげるという意味では、フェイスブックの投稿ごとに宣伝をかけていても必ずしも効果があるとは言えません。それほど魅力に感じていな投稿にも挨拶のように、いいね! を押してくれるので。大事なことはプロモーションが行きたいと思わせるものになっているかということ。さらに、ウェブ広告と連動させることが効果的です」と語った。
(048 カンボジアのマーケティング&メディア②へ続く)