【IT・通信】
カンボジアにおけるウェブサービス開発やシステム開発といったIT関連サービスはいまだ黎明期の段階と言える。
日本で言う所の「SIer(システム・インテグレータ)」と呼べるようなレベル・規模の事業会社は、カンボジア現地資本では現状ほぼ皆無だ。ウェブ関連でいえば、法人ではなくITに詳しい個人が数名の小規模でホームページ制作等のサービスをやっている程度。システム開発でいうと、オラクル系を担ぐシステムベンダーもいたりマイクロソフトも支店を構えていたりするが、現地カンボジア人ができる事はローカル営業と簡単なハードウェアの納入・設置程度で、少し難しい開発系になってくるとインドやマレーシアあたりから外国人エンジニアが極めて高い人月単価とともに派遣されてくる。カンボジアに進出している日系IT企業も、ITとはいえその事業内容としては、PCを使った単調作業(シンプルな入力業務やマウスのクリックだけで対応可能な業務など)を低賃金のカンボジア人を多数採用して処理する事でコストメリットを図るビジネスが多く、進出メリットの源泉は製造業のそれとあまり変わらない。
そんなIT黎明期のカンボジアでも、優秀なIT人材はまだ少数とはいえ確実に育ちつつあり、高度な開発もこなせるIT企業も産声を上げ始めた。独自のルートで優秀なカンボジア人IT人材を集め、ゲームアプリやウェブシステム開発などを行うJCITの髙 虎男氏はこう語る。「社内システムの開発であっても対外的なホームページやウェブマーケティングの開発であっても、カンボジア進出を図る場合、日本企業として求めるクオリティをいかに維持しながらローカライズするか、のバランスが常に最終的な論点になります。 社内システムを開発するにしても、実際に使うのは現地スタッフですし、現地消費者に向けた対外ウェブマーケティングであれば言語も含めたローカライズは必須です。 日本人とカンボジア人の感覚をIT用語でどうすり合わせられるかどうかの巧拙が、開発後の運営の段階でその良し悪しを大きく左右します」。
まだ数は少ないが、カンボジア人の中でも優秀な大学卒業生や海外留学から戻って来た人材は、ITに関してかなり高い基礎能力を持っており、ほぼ全員がビジネスレベルの英語を使いこなすと言う。優秀なカンボジア人IT人材をいかに集めマネジメントするかが開発成否の要諦となりそうだ。