【IT・通信】
総世帯数284万世帯(2008年国勢調査)を基準とした世帯普及率では、固定電話が約21% (加入者数約60万)、ブロードバンドが約2.5%(加入者数約7万)と低調なのに対し、携帯電話契約数(SIMカード発行枚数)は2007年の約250万から4年間、年率60〜70%の増加が続き、2012年には総人口約1,400万をSIMカード発行枚数が上回り、人口普及率で100%を超えた。2012年末時点でのSIMカード発行枚数は1,970万枚。人口の約1.4倍だ。
小さいながら急拡大する携帯通信市場は競争も苛烈だ。当初三つの通信キャリアでスタートした市場に2006年を境に新規参入が相次ぎ、2011年にはキャリア数が合計9社。その後合従連衡が相次ぎ、現状は7社となっているが、実質的には3強に収束しつつある。
ベトナム系キャリア、ヴィッテル(Vittel)を母体とするメットフォン(加入者数約740万、シェア約45%)、マレーシア系キャリア、アクシアタを母体とするスマート(契約者数約470万、シェア約30%)、カンボジア有力財閥ロイヤルグループとルクセンブルグ系MCIの共同出資によるセルカード(契約者数 約310万、シェア約20%)の3ブランドである。
とはいえ小さな市場で延々と繰り返されるキャンペーンや値下げ競争により、通信料はかなり安い水準になっている。2009年4月に8番目の通信キャリアとしてスタートし、その後積極的なM&Aにより業界2位にまで駆け上がったスマートアクシアタのトーマス・ハント氏は「カンボジアから日本への国際電話であれば、1分7セント(約7円)でかけられます」と語っている。日本への国際電話ではビーラインの1分4セントが最安値を誇っており、携帯キャリアの熾烈なサービス競争は今後も続きそうだ。
インターネット環境も良好だ。 主要市内の主な飲食店やホテルでは無料WiFiが当然のように設置され、ほぼどこでも当たり前のように高速インターネットが利用できる。
スマートアクシアタはカンボジアではじめてプノンペンでの4G・LTEのサービスを開始している。投資額のほとんどをデータネットワークに充てており、今後も更なる通信環境の改善を図っていく構えだ。これによりスマートフォンだけでなく、タブレットデバイスでも30、40mbpsの高速インターネットの使用が可能になった。キャリア各社も3G定額プランを提供しており、今後ますますの発展が期待される。
インターネットサービスプロバイダー(ISP)の競争も苛烈だ。業務用ISPに特化し法人顧客基盤を拡大しているイージーコムのポール・ブランシュ・ホルゲン氏によると、カンボジアは光ファイバーケーブルの埋設に関しては東南アジア諸国のなかでも進んでいる方であり、自社でもケーブル増設の投資を毎年行っていると言う。一方、小さなマーケットの中で競争環境は厳しいと語る。「カンボジアのISPは合計39社が許認可を受けています。その全てがアクティブに営業しているわけではありませんが、人口約1,400万人しかおらずインターネットサービス需要がまだまだ大きくない市場にしては、ISPの数はかなり多く、競争は激しいと思います。サービス料金も低下してきています。5年前は月額420ドルで提供していたサービスが、現在79ドルまで落ちていたりします。競争が激しいために地方への進出をためらう競合他社もありますね。 ただ、インターネットユーザーの増加は顕著で、毎年2倍ずつ増えています」。
人口や市場の規模に比べるとやや多過ぎるともいえる参入事業者間の競争のおかげで、通信・ネット接続に関しては東南アジア他諸国と比較してもかなり快適な環境が実現しているといえる。
また、ISPの選択については、「まずは会社のニーズをはじき出すことです。例えば24時間サポート、インターネット回線のみの使用、国際回線の利用など、IT回線の必要項目が分かればISPで相談ができます。日本の企業で東京の事務所との連絡が必要な場合、国際回線への接続があるISPであることが前提ですし、VOIPを活用すればコスト削減にもなります。建築やデザインなど、大きなデータのやりとりがある場合はそのセットアップも必要でしょう」とアドバイスしている。