カンボジア国立銀行(NBC)が発表した「2025年上半期報告書および下半期の方針」によれば、同国の国際準備高は2025年上半期に10.4%増加し、248億ドルに達した。この水準は物品・サービス輸入の7.5か月分に相当し、ベトナムやミャンマーなど同じような立場にある開発途上国としては極めて高い蓄積であり、カンボジアのマクロ経済の強靭性を反映している。
準備高増加の背景には、金価格の上昇、海外投資収益、有利な為替変動、銀行・金融機関からの預金および法定準備金の増加など複数の要因があるとされる。報告書では、「国際準備の運用は極めて慎重かつ柔軟に行われており、投資方針とガイドラインに基づいて安全性、流動性、収益性を確保している」と述べた。
2025年初頭、NBCはグローバル金融市場の変動に対応するため、投資ガイドラインを改定し、通貨と資産構成を見直すとともに、リスク予算の調整を行った。また、国際準備の一部を運用する外部の資産運用機関(外部マネージャー)や、資産を保管・管理する信託銀行(カストディアン)の選定と管理に関する規定も改訂され、透明性と監督体制が強化された。
特筆すべきは、NBCが持続可能な金融への移行を加速させている点である。中国、韓国、日本、欧州の主要な国際金融機関が発行するグリーンボンド(環境対策向け債券)や、ESG債(環境・社会・企業統治に配慮した債券)への投資比率は、現在全準備高の6%に達しており、世界的なグリーン経済への転換と整合している。
2025年上半期、地政学的緊張や保護主義の高まりといった外的要因にもかかわらず、カンボジア経済は堅調に推移した。インフレ率は低く抑えられ、リエルと米ドルの為替相場も安定を維持した。外貨準備の急増は、外国直接投資の堅調な流入に支えられた経常収支の黒字によるものである。
チア・セレイ総裁は報告書の中で、「米国の関税やカンボジア・タイ国境における地政学的緊張などの外的要因により不透明性が高まっているが、経済の基礎が堅固であるため、今年前半の成長は大きな影響を受けていない」と述べた。ただし、「これらの影響は2025年下半期に顕在化する可能性がある」とも警鐘を鳴らした。
NBCは、慎重かつ柔軟な金融政策と投資運用を継続し、物価と金融の安定を確保しながら持続可能な経済成長を支援する方針を堅持している。総裁は、「為替レートは良好な水準を保ち、金利も徐々に低下し、物価の安定と低インフレを実現している」と説明した。
「新興国および途上国への資本流入は依然として制約を受けており、多くの国で為替相場が大きく変動している。高いドル化が進んでいるカンボジアにおいて、為替の安定と低インフレの維持は国民の購買力の保護、投資家の信頼向上、マクロ経済の安定化に大きく寄与している」とも付け加えた。
王立アカデミー政策アナリストのスーン・サム氏は、国際準備の意義について「国際準備は、社会経済の進展および公共機関の機能維持に不可欠であり、世界的危機やパンデミック、地政学的変動といった予期せぬ出来事から経済を守る緩衝材の役割を果たす」と語った。
同氏はさらに、「準備高の拡大は、国際的な信頼の表れであり、経済の信用力が向上している証左である。経済基盤が弱い国に対しては準備高の増加は望まれないため、今回の増加はカンボジアの財政計画と戦略的展望の表れでもある」と評価した。