世界銀行は最新の報告書において、カンボジアの銀行部門における資産の質が急速に悪化していると指摘した。2019年時点で1.8%であった不良債権(NPL)比率は、2024年12月には7.9%に達し、その急増の背景には、新型コロナ関連の規制緩和措置の終了、経済の減速、不動産ブームの終焉、そして融資基準の甘さがあるとされる。
報告書は、不動産ブームの終焉や規制緩和の影響を受けたことが資産の質低下に直接結びついているとし、現在の不良債権比率が実態を必ずしも反映していない可能性に言及している。冒頭で明らかにされたように、こうした背景要因の明示により、全体的な状況の理解が容易になる。
不良債権は主にホテル・レストラン、小売業、鉱業といったセクターに集中しており、不動産セクターではブーム終了後も報告上のNPL比率は比較的低い水準にとどまっている。これについて、報告書は、カンボジア国立銀行(NBC)がNPL削減に向けた措置を講じていることを評価している。2024年8月には、融資再構築に関するプラカスを発行し、銀行が追加の引当金なしに2回までの融資再構築を認めている。
融資再構築とは、借入者に対し返済条件の見直しや返済猶予を提供するものであり、カンボジアではこれが資産の質改善策として広く用いられている。その結果、2025年1月時点で全融資の約10%が再構築された。しかし、再構築された融資の一部が将来的に不良債権化する可能性があるため、報告されているNPL比率が実態を正確に反映していない可能性があるとも警告している。このプラカスは2025年12月に失効する予定であり、その後はさらなるNPL比率の上昇が見込まれる。
加えて、NPL解決に関する制度の未成熟さも課題とされる。法制度の整備不備、訴訟手続きの長期化、不良債権売却市場の不在などが、実効的なNPL処理の障壁となっている。現状では、融資再構築と債権放棄がNPL処理の主要手段となっている。
報告書は、国際的なベストプラクティスに基づき、カンボジアには銀行自身が財務的負担を担いつつ、NPL処理に適した制度環境の整備が必要であると提言している。具体的には、担保執行手続きの簡素化、破産法の見直し、故意の債務不履行者に関する規制の導入、高NPL比率の銀行に対する削減戦略の策定、不良債権の償却基準の改善、債権回収・債務管理会社の制度設計、市場創設、およびマクロプルーデンシャル政策枠組みの強化が求められている。
こうした改革提案は列挙形式で提示されているが、今後はそれぞれの優先順位や影響度についても精査が求められるだろう。
カンボジアのある大手銀行の上級管理職は、「すべての銀行が危機に直面しているわけではない」と述べ、国内の40行を不動産関連のリスク度合いに応じて三つのカテゴリーに分類できると説明した。その銀行ではリスクの高い分野への融資を極力避けた結果、「リスクゼロの銀行」に該当するとし、「極めて慎重な貸出姿勢が、あらゆるリスクからの回避につながった」と語っている。