カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

  • 経済
  • 2025年3月24日
  • カンボジアニュース

カンボジア農業の苦境:生産コストと市場競争に直面[経済]

カンボジアは農業国として、過去10年間で輸出によりGDPの22%を占めるまで農業を発展させた。特に米と籾は主要な輸出品であり、生産量は年間1,100万トンを超える。しかし、実際には高い生産コスト、インフラ不足、品質の不均一さ、世界市場での競争激化が足かせとなっている。加えて、貿易摩擦や需給の変動により、農家は収入の不安定さと高コストに悩まされている。

農業は依然として国民生活を支える重要な柱であり、約1,300万人が農村部で農業に従事している。米輸出は56カ国・地域に及び、政府は農業の生産性や付加価値の向上、輸送・貿易インフラの整備を進めているが、競争力の向上は課題だ。

具体例として、バンテイメンチェイ州の農家シデット氏は、高額な水供給費や肥料費、米価の低迷によって収益が圧迫されている現状を訴える。特に、乾季の水供給費が1ヘクタールあたり約10ドルで、肥料は1袋30〜40ドルを年3回使用している。ベトナムやタイへの輸出減少により、国内需要はあるものの農家の収入改善にはつながっていない。

乾季の降雨減少とインフラ不足により、農業は天候と市場の変動に常に左右されている。これに加え、世界的な貿易摩擦が農産物の需要減退や供給網の混乱を招き、特にカシューナッツ農家は低価格と高コストの板挟み状態にある。

カンボジア・インベストメント・マネジメントのアンソニー・ガリアーノCEOは、隣国タイやベトナムと比較して農業輸出額が大幅に劣るものの、政府が掲げる農業政策(国家農業開発政策、農業普及政策、五角戦略)によって改善の余地は大きいと指摘する。「カンボジアの耕作可能地は約410万ヘクタールと隣国に劣るが、輸出先や付加価値の拡大によって飛躍が可能だ」と述べている。

一方、カシューナッツ産業では「カシューナッツ帝国」構想のもと、国内で最大生産地のコンポントム州で価格維持策が取られている。カンボジアカシューナッツ協会(CAC)は、供給量を制限し、価格が4,500リエル/kgを下回らないように農家と加工業者、金融機関が連携している。農家が倉庫でナッツを長期保管し、市場価格の上昇後に販売する手法も採用されている。しかし、価格維持には農家とCAC間の信頼が不可欠であり、昨年のように連携が崩れると価格が急落するリスクも残っている。

全体として、カンボジア農業の発展には、生産コスト削減、インフラ整備、品質向上、多様な輸出先確保が急務であり、政府と民間の連携がその鍵を握っている。

日本企業にとっては、カンボジア農業分野の加工・物流・インフラ整備に投資余地が大きいが、市場リスクと制度整備の進捗を見極めた上で慎重な判断が求められる。

経済の最新ニュースランキング
最新ニュース