カンボジアの籾米価格が暴落している。農家の販売価格が1トン250ドル(2万5千円)くらいだったのが、190ドル(1万9千円)くらいまで下落してしまって、コメ農家は大変なことになっている。
で、なんでそんなに価格が下がってしまっているのかというと、精米業者がコメを買えないからだ。「買わない」のではなく「買えない」というところに今日の話のポイントがある。
そもそもカンボジアは、未だに日本で思われているような「貧困による飢餓が蔓延している国」では無く、どんなに貧しい人でも基本的に食べるものには困らない。特にコメに至っては1日2ドル以下で暮らしているような世界基準の超貧困層でも、食べ残しを鶏とか犬とかの餌にするくらい余裕がある。そしてその余りあるコメを輸出して外貨を稼ぐというのが、国家を上げたプロジェクトの一つでもあるので、日本のボランティア団体とかが小学生に作らせとコメをカンボジアに送り込んでくるのは、善意の嫌がらせ以外の何物でもないのだが、今回はその話題については横においておこう。
で、カンボジアにはロムドゥルという種類の、世界コメ会議で3年連続金賞を受賞した香り米が有って、近隣にタイやベトナムという強力なライバルを抱えてはいるものの、後発後進国という特恵関税枠などを活かしてEUなどからも注文が舞い込んでいた。政府が目標としている年間100万トンの輸出にはまだ半分程度しか届いていないものの、国際マーケットに売り先がないという状況ではない。それなのに、なぜ農家の籾米が売れなくて価格が暴落するような現象が起きているのだろうか?
カンボジアは近年までロクなクオリティの精米施設が無かった。国際基準で輸出できるような精米施設を造るためには数億円オーダーの投資が必要で、かつ毎日数百トンの籾米を農家から買い取って精米して貯蔵しようとすると、十億円近いような事業資金が必要になる。それをIFC(国際金融公社)とか世界銀行とか、各国からの援助とか融資とか投資とか様々な方法を使って資金調達したものを、地元の有力者たちに貸し付けて精米施設を建設し事業資金も用立てた。これで万事上手くいくはずだった。
ところが多くの精米業者が手にした現金は、施設を作るために使われた以外は高級車や高級時計、土地への投資や豪勢なパーティーなど、全く籾米を購入することと関係ないことに消費されて、文字通り消えていった。そして素晴らしい精米機を備えている精米施設の貯蔵庫は空っぽ、機械の稼働率も借入金返済不能なレベルとなってしまっている。
僕は常々、途上国の農家の所得を一定レベルまで引き上げるためには、ファイナスが起爆剤となると主張している。マネーはあらゆる経済活動の潤滑油になるからだ。ただし、現金を渡すことがこのような悲喜劇の種になることもまた事実なので、ファイナンスをするけれど現金は渡さないというような仕組みを構築することが不可欠だということも間違いない。で、このような問題を解決することこそがAGRIBUDDYの取り組みです。