フン・セン首相は右から3番目。第26回ASEANサミットでASEANの指導者達との写真のためにポーズ(ロイター)
計画立案からほぼ十年という歳月を割き、AEC(ASEAN経済共同体)が発足した。しかし経済学者たちは、統合に向け国内外に残る数々の問題への対処が完了するまでは、カンボジアに好影響があるとは言えないとしている。
「劇的な変化が訪れることはしばらく無いでしょう。AECが完全に機能するようになるまでは今後10年ほど準備にかかるのでは無いでしょうか」とアジア開発銀行(ADB)圏域統合事務所のジャイアント・メノン氏は今月初めのインタビューで述べた。
AECはASEAN内の10カ国を統合し、世界7位の地域経済圏を目指し、人口規模は6億人に達する見込みだ。
「単一市場・製造拠点を持つことにより競争力のある経済圏になる、また圏域内における公平な経済的発展と世界経済への貢献を目指していく」とASEANの公式サイトでは記載されている。圏域内の物流やサービス、物品、そして投資案件や人材等の自由化から資本の流動性が高まるとしている。
既に基本的な合意には至ったものの、正式に歯車が回るまでは12月31日は記念日に過ぎない。先月クアラルンプールで開催された第27回ASEANサミットによると、各国代表は2025年AEC基本計画を決議することで今後長期的に経済的・政治的・社会的な課題がなお残ると認め合ったという。
「例えば関税は域内では大幅に下落しましたが、非関税物品の扱いや国境の壁など重要な課題が残っています。これらの貿易障害は各国により変わる基準や規制、手数料その他様々な問題を含んでいます」とメノン氏は指摘する。
「カンボジアや域内諸国がNational Single Window(NSW)を早期に導入し、それをAsean Single Window (ASW)に移行させることで貿易がよりスムーズになる。NSWとASWは貿易を促進させるために書類や申請様式などを国ごとあるいは圏域ごとに統一する仕組みを担っている。そこが統一されることで貿易活性化の阻害要因の多くが取り除かれるのでは」とも述べた。
カンボジアは2004年にWTOに加盟して以降、貿易自由化に向けて関税の撤廃や補助金などに取り組み新たな投資先として機会を拡大してきた。「カンボジアほど地理的にも貿易に恵まれた土地はありません。AEC発足により海外直接投資の機会はさらに拡大するのではないでしょうか」とWTO加盟時と同様の効果を望めると地域経済専門家のスレイ・チャンティ氏は予測した。
また、「AECに向けた貿易や直接投資の合意によりASEAN圏域に2007年から2014年の間にもたらされた経済効果は1兆ドルともいわれており、現在も外国直接投資の流入額は世界の約11%にもなると見られています。カンボジアに利益をもたらす要因はAECがいかにグローバルバリューチェーンに食いついて行けるか、要するに企業は同じ圏域の中でもより安い産出国にシフトしていくでしょうから。市場が大きくなることで企業も競争力を高める必要が出てきます。そのためには道路網を含めたインフラ整備のテコ入れも迫られるでしょう。外国直接投資を獲得するために各国が魅力を高める必要があるわけです」と続けた。
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