カンボジアに進出する日系企業のための
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2018年12月12日
カンボジア進出ガイド

【金融・保険】

260 カンボジアの金融・保険②(2018年11月発刊 ISSUE09より)

マイクロファイナンス機関 Microfinance institution

 NBCによると、国内のマイクロファイナンス業界における信用貸の伸びは、2014年から毎年50%以上の増加と急速な成長を見せたが、2016年3月にピークを迎え、2017年のローンポートフォリオは前年比25.5%増の40億ドルと緩やかな上昇に落ち着いている。理由としては、2017年4月にNBC主導で上限金利が年率18%となったことが挙げられ、これによりリエル建ての貸出金利が、米ドル融資の金利と同じ水準にまで低下している。



 NBCの半期報告書によると、2018年上半期に、地方金融部門は引き続き顕著な成長をみせており、商業銀行やMFIも拡大している。MFI部門の貸出ポートフォリオは、2018年上半期に34.8%増の48.5億ドルに達した。年間180万人のカンボジア人が、MFIで融資を受けている。融資先としてはその他の大半は小規模事業者、業種別では農業(23.8%)、貿易業(18.2%)、物流業(4.7%)、建設業(4.3%)となっている。

 カンボジアマイクロファイナンス協会(CMA)によると、カンボジアには39のマイクロファイナンス機関(MFI)と6の地方信用機関の計45社がある。三菱UFJフィナンシャル・グループの一員である大手信販会社ジャックスの現地法人がカンボジアで事業を開始し、日本の中古販売業リネットジャパングループが資産約1210万ドルのMFIチャムロン・マイクロファイナンスの株式の90%を取得するなど、日系企業によるMFIへの参画は引き続き活発だ。また、NBCは2018年9月、規制や法を遵守していないことを理由に2つのライセンス申請を拒否し、24のマイクロファイナンス機関のライセンスを取り消した。
 


 大手マイクロファイナンス機関のハッタカクセカーのホウ・イエン・トン氏は、「我々としては、MUFG及びアユタヤ銀行との資本提携後により、今後も堅調な成長が見込まれます。また金融業界としても、1国からの強いサポート、2政治の平和と安定、3個人消費の伸びを受け、益々景気は良くなっています。特に個人消費が伸びれば、金融業界も円滑に動くでしょう」と語る。

証券取引 Securities Trading

 カンボジア初であり唯一の証券取引所、カンボジア証券取引所(CSX)は2011年に発足し、現在はプノンペン水道公社(PWSA)、グランド・ツイン・インターナショナル(GTI)、プノンペン自治港(PPAP)、プノンペン経済特別区(PPSP)、シアヌークビル自治港(SAP)の5つの上場企業がある。取引は闊達とは言えず、上場企業数の増加が喫緊の課題だ。



 CSXのホン・ソク・ホーCEOは、「CSXには「メインボード」と中小企業の上場を支援する「グロスボード」の2つの市場があります。メインボードには700万~750万ドルの株主資本が必要とされていますが、2017年立ち上げられたグロスボードの上場基準は50万ドルです。加えてIPOに対し、より効果的なサポートを行なう企業向けの教育プログラムを導入しました。中でも「上場誘致プログラム」は、経営者が株式市場をよりよく理解し、会計事務所、法律事務所、証券会社との関係作りをサポート内容となっています」と、上場要件の引き下げと手厚いサポートを挙げ、企業数増加への努力について語った。

 CSXによると、8000以上の取引口座があるが、現在活発な取引を行なっているのは、100程度の口座だ。また、取引口座の約50%はカンボジア人が保有しているが、限られた数の株式しか購入しておらず、取引量の約3分の1しか占めていない。今後はトレーダーの満足度にかかっている。投資家向け施策の一環として、CSXは2018年3月、投資家と一般市民向けに、企業情報や株価、最新ニュースや株式関連を話題にするチャットルームなど、証券取引所の情報をより簡単に入手できるウェブサイトとアプリを立ち上げており、また2018年からカンボジア証券取引委員会(SECC)によるデリバティブ取引の手数料の引き下げが行われている。

保険 Insurance

 急成長中の保険業界の総保険料は1億4300万ドルに達し、2018年1月~9月で対前年同期と比べ28%増加した。総保険料は過去5年間で平均37%増加し、昨年の総資産は2億9670万ドル。カンボジアの保険業界は、一般保険が市場に初めて参入してから過去10年間に著しく進んでおり、2012年に設立された生命保険とマイクロ保険が続いている。

 カンボジアに保険の概念が来たのはわずか5年前。経済財政省によると、カンボジアで保険業に関連している会社は代理店含め、現在57社に上り、総保険料収入は1億1200万ドル。57社の内訳は生命保険7社、損害保険11社、マイクロ保険8社、相互保険12社、保険代理店16社、再保険1社、リスク評価2社となっている。生命保険会社および損害保険会社をみると、生保、損保とも外国資本の保険会社が多く、カンボジア保険市場の成長を見越し外国から市場に参入する流れが続いていることがわかる。



 カンボジア保険協会(IAC)によると、2017年の保険業界の総保険料は、前年の1億1350万ドルに対し26%増の1億4920万ドルに到達。内訳として、損害保険が前年度比7%増の約7540万ドルだったのに対し、生命保険は56%増の6750万ドルへと急増を見せ、カンボジア人の財務およびリスク管理に対する需要の高まりを示している。

 2005年に設立され、生命保険、損害保険、マイクロ保険など現在27社の保険会社が加盟するIAC会長フイ・ヴァタロ氏は、「保険市場が国内GDPに占める割合は0.5~0.6%です。マーケットの成長余地は大きいため、外資系企業も興味はあるでしょう。参入の多さから、今後保険会社は競争にさらされます。価格競争に繋がるかもしれません」と保険業界の成長を受け、他国の大手保険会社の参入も目覚ましいという。

 一方、急成長に伴う弊害はあるのだろうか。フイ氏は、「カンボジアの保険市場は黎明期であり、現時点ではシリアスな問題はありません。しかし、強いて上げるならば3つ。まず第1は教育です。保険市場は誰もがターゲットになり得るため、ポテンシャルは高いです。小中学校から保険教育を始め、人々が保険の概念を理解することが成長に繋がります。第2はスタッフの不足です。外資系といえども、海外から数多くの人員を送るわけにはいきません。トレーニングや教育をスタッフ向けにする必要があります。第3は、富裕層への販売チャネルです。現在、販売の主流は保険会社のスタッフによる営業です。他国であれば、代理店か銀行が主な販売チャネルですが、カンボジアは特に代理店への規制が厳しく、銀行経由では限りがあります。いくつかの銀行は、保険会社と提携し、銀行員が顧客向けに保険を売っています。しかし、提携会社の商品しか売ることはできません。代理店が増えれば、業界はさらに活発になるでしょう」と述べ、基礎教育の必要性と販売チャネルの拡大により、業界全体の底上げを目指す。


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