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2017年6月29日
カンボジア進出ガイド

【飲食・観光】

199 カンボジアの飲食・観光②(2017年05月発刊 ISSUE06より)

高級ホテルの進出 The Advance of Luxuly Hotels



 継続的な経済成長と観光客の増加を背景に、ホテル業界、特に高級ホテルの進出が盛んになっている。自身もアジア・ヨーロッパ各国の高級ホテルで働いた経験を持ち、現在プノンペンで評判の高いブティックホテル、サン&ムーンホテルのノエル・フーラー氏は、「今後は、特にビジネス需要の高まりを見越して、高級志向のポテンシャルが高いです」と語る。首都プノンペンでは、2017年に国際的なホテルチェーンローズウッドによるカンボジア初の高層ビル内に5つ星ホテルがオープン、またシカゴに本社を置くハイアットホテルが、2020年までに高級ホテル、ハイアット・リージェンシー・ホテルをオープンさせると発表した。

 一方シェムリアップでは、2017年4月、国際的なホテルブランドマリオットホテルが2億ドルを投じてカンボジア初店舗をオープンさせ、次いでシアヌークビルの開発も行うと宣言。国土整備・都市化・建設省によると、カンボジアには2016年時点で647軒のホテルがあり、うち5つ星ホテルは21軒だという。

飲食店の進出 The advance of Restaurants

 プノンペンやその他地域でもファストフード店やカフェなどの飲料店、チェーン店などの外食産業は毎年確実に成長を遂げている。特に、イオンモール内やボンケンコン地区、ボンコック地区を中心に急速な拡大を見せており、海外チェーンと合わせてフランチャイズ店も増加している。カンボジア人の外食にかける支出額は、2014年と2015年を比較すると約1億4000万ドル、12%増加しており今年もその傾向は続く見込みだ。



 生鮮食品を得意とする日系卸業ロカフード&ビバレッジの塩入伸雄氏は、「数年前と比べて混雑している飲食店が増えた実感があり、特に客単価10~20ドル程度の消費をするアッパーミドル層の外食が増えています。冷凍マグロやハマチ、ウニなどはお客様のジャンル問わず人気です。とりわけ生鮮鮮魚については、日本から航空貨物便を用いた輸入を昨年10月より開始しており、取扱量が拡大しております。現在は週1便のペースですが、今後は週に2便を安定して供給できる体制を整える計画です」と食の変化とともに、昨年9月に就航した日本との直行便により生鮮食品の取扱いも増えている。



 更には、日系ブランドによる製品も注目されており、日本食品の卸業として老舗のダイシン・トレーディングの小池聡氏は、「様々な趣向の出店が加速する中で、日本の大手食品メーカーの注目度も上がっています。菓子、飲料では森永製菓、カゴメ。酒類では久保田、霧島、黄桜など、日本を代表する企業の正規店として販売しています。いかにして更にカンボジアに日本食を広めてゆけるか。お客様とメーカー様双方に要望やヒントを貰い、お手伝いすることが重要な業務の一つだと捉えて頑張っています」と現状を語った。

 一方、飲食店が増加する中でその問題点についてロカフード&ビバレッジの塩入氏は、「衛生面では、日本のように保健所の立ち入り検査などが実施されていないため、衛生基準が低いのは以前からの問題点です」と語った。

課題と今後の取り組み Problem and Future efforts

 旅行客数500万人の割合ではアジアからの旅行客が77%を占めており、ムスリム観光客向けのハラル認証の取得や、中国の人民元、日本円の受入れなど、政府もアジア人観光客の誘致に向けて様々な施策を検討している。それに伴い、最長3年間の滞在を可能にするビザの発行も発表され、実現すれば、観光客や投資家は長期のマルチプルビザを申請でき、何回でもカンボジア国内に出入国できるという。

 しかし一方、サービスはクオリティを欠いており、世界経済フォーラムのレポートでは144カ国中105位にランキングされ、ハードとソフトの改善が求められている。ハード面の試みとして、昨年ローンチされたアンコールワットの案内アプリ「アンコールアプリ」は、写真や地図機能、オーディオビジュアルガイドを備え、アンコールワットの史跡や歴史的建築物を案内するというもの。またソフト面の改善点について、 サン&ムーンホテルのフーラー氏は、「ホテルのお客様は海外への訪問経験がある人が多く、世界のスタンダードを知っています。しかし、働く当人達はホテルに泊まった経験がない。そのため、心構えや話し方、ボディランゲージなど本当に多くを教える必要がありますし、これを国際的なレベルまで引き上げるのは難しいです。今後はホテル・レストラン協会主導で、人事育成とホスピタリティの基本知識を持った人を市場に送り出すべきですね」と語る。


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