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2017年6月29日
カンボジア進出ガイド

【不動産】

180 カンボジアの不動産②(2017年05月発刊 ISSUE06より)

商業物件の賃貸 Renting of commercial space


 
 ナイトフランスのレポートによると、商業物件は現在13万8154平方メートル供給されておりおり、2020年までには196%上昇し、約27万平方メートルになると推測されている。現在の占拠率はイオンモールの引き上げもあり95%と健全だ。

 初の国際基準モールとなったイオンモールは現在も100%の入居率を保持、2018年にはセンソック区にイオンモール2号店も開店し、更には2018年2月から新しく30店舗を首都圏と周辺地域にオープンすると発表した。キーリアルエステートのソーン・シアップ氏も注目を置く地域として、「商業物件の賃貸の場合は、都心部では無く1番目にトゥールコック区、2番目にイオン2号店が建設予定のセンソック区が最適です。現在、多くの建設が進められています」と話す。



 その他大型商業施設の建設ブームも続き、ドーンペン区では、約5ヘクタール、51億ドルを投じてプノンペン最大の商業施設泰文隆ツイントレードセンターの開発が発表された。これはショッピングモールやオフィス、高級ホテルなどを含んだ複合施設で、133階建てのツインタワーを42階建ての4棟が取り囲む。完了予定時期は2019年、完成すれば東南アジア最大ともなる。




 商業施設における変化として、インディペンデント・プロパティ・サービス(IPS)のグラン・フィッツジェラルド氏は、「コンドミニアムや住居、商業施設が増えるにつれて、プロパティマネジメントの重要性も増していますね。以前は、マネージャーを置くだけで入居者がいましたが、今は競合も多く、商業施設でもコンドミニアムでも専門性の高い、プロフェッショナルな企業が求められています」と述べる。コアプロパティのリー氏は、「カンボジアでは海外からの投資家や開発者が増え、商業物件はよりイメージが良いもの、デザインが良いものが求められてきています。様々な角度からの景観なども考慮して、うまく設計されている必要があります」と語った。

住宅の賃貸 Rental Housing


 住居として外国人に人気の高いエリアは、チャムカーモーン区のボンケンコン1地区(BKK1)。プノンペンの富裕層エリアといわれており、カフェ激戦区となっている。しかし、家賃が高いため、いろんなエリアに少しずつ分散が進み、その周辺のボントラバエク地区(BT)、トゥールトンポン地区(TTP)、ボンケンコン1、2地区(BKK2、3)、トンレバサック地区(TB)、プノンペンタワー裏の人気も高い。ボントラバエク地区やトンレバサック地区南部は新興住宅地で比較的新しい建物が多く、日本人が増えているエリアだ。また、ここに日本食屋などが並ぶ「絆ストリート」もある。立地的にPPSEZに勤務している方が多く住むトゥールコーク区のボンコック1、2地区(BK1、2)も高級住宅街として知られているが、設備の割に価格が抑えられた物件が多い。また、ロシアンマーケットの辺りも人気が上昇しており、比較的家賃が安価であることから欧米人を中心に外国人からの注目が集まっているエリアだ。

 また今後開発が期待される地区として、IPSのフィッツジェラルド氏は、「ドーンペン区はまだ開発途中で、ロシアンマーケットと比べても、コンドミニアムやサービスアパートメントはあまりありません。しかし土地が広く、ホテルや駐在員向けサービスアパートメントなど、開発が見込まれるエリアです」と語った。

 カンボジアの住居形態は、サービスアパート、コンドミニアム、ヴィラ、フラットなどがある。2016年下半期には新たに10棟のサービスアパートが完成し、全部で4214室が確認されている。2018年までには1053室が追加されると見られている。サービスアパートは24時間警備のほか、プールやジム、部屋の掃除や洗濯など、ハード面だけでなく、ソフト面も充実している分、当然のことながら家賃は上がるが、少しでも快適に過ごす住居形態として駐在員を中心にサービスアパートのニーズは高い。コンドミニアムは2016年下半期に11のプロジェクトが発表されており、4,5年後には新たに4102室が完成されると見られ、急速な開発が進められている。タイムシェアの物件も出てきているが、まだ人々にはなじみがなく需要に見合っていないようだ。

 ボナリアルティグループの調査によると、プノンペンにおけるアパートの入居率は2015年の90%から2016年は82%へと低下傾向。これは住宅物件の供給増加を受けた数字とみられる。


 賃貸価格についてナイトフランクの専門家は、住宅物件の急増によって占有率と賃貸価格が影響を受けると指摘しており、今後は供給量の増加を受け価格が減少することも予想している。またコンドミニアムに対抗するべく、プールや駐車スペース、ジムなどのサービスを備えた物件も増えており、古いアパートはすでにテナントの約30~40%を失っているところもあるのが現状だ。

 住宅物件の開発が進む一方で、その供給が需要に見合っていないという指摘も挙がっている。「これまで需要のほとんどは海外の投資家からでしたが、次の波は成長する中間層による内需です。ディベロッパーが、中間層向けに部屋の大きさを決め直すなど、傾向は既にありますよ」とCBREのパデン氏が語るように、カンボジアの大部分を占める低中所得者向けのプロジェクトも進められている。アーバン・リビング・ソリューション社が今年4月にも中間所得層が購入可能な低価格コンドミニアムを建設開始予定。ワールドブリッジ社と政府も共同で低所得層向けの住宅建設プロジェクトを進めており、2019年に完成予定だ。今後、需要に見合ったプロジェクトが求められていくだろう。


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