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2015年11月8日
カンボジア進出ガイド

【建築・内装】

080 カンボジアの建築・内装②(2015年10月発刊 ISSUE03より)

建築コストの上昇と消費者ニーズの変化 Rising construction costs and changes in need

079 カンボジアの建築・内装①から続き
 BDリンクの報告書によれば、2007年から2011年の5年間の建設労働者の賃金動向では、名目賃金が非熟練労働者て78%上昇している。そのほか、セメントや鉄などの資材など、あらゆる価格の上昇によるコスト面の変化、地価の高騰により戸建てが持ちにくくなったことから需要の変化が起きている。



 OCICのトゥーチ氏は、「需要にも変化が見られます。10年前はアパートメントの需要は多くありませんでしたが、現在ではかなり多くなっています。土地の価格が高騰して、個別の住宅を持てなくなってきていることも理由の一つでしょう。世代間でも需要の差はあります。若い世代はアパートメントに抵抗が無いようですが、年配の世代には戸建ての方が良いという方々が多いようです」と語る。

 C&Pのミース氏は、「カンボジアの不動産市場で最も注目すべき理由の1つに、土地価格の急速な上昇によって、不動産を購入できる中間層家族や若い共働きの夫婦が、集合住宅の戸建てよりもコンドミニアムを選択するケースが増えていることです。現地ではコンドミニアムをより手頃で文明的、かつ安全で快適なライフスタイルとして好ましく捉える傾向が高まっていることです。比較的安価な中級クラスのコンドミニアムではカンボジア人の買い手の持続的な需要を見込めるでしょう」と言う。

 ローカル系不動産仲介会社、Vトラストの2014年11月の報告書では、世帯数の増加と住宅需要の増加には相関関係を示唆しており、着実な核家族化の進行を背景とした住宅需要の増加を今後も見込めるとしている。また、銀行の住宅ローン金利が以前より下落したことも後押しとなって、現代的なライフスタイルに傾倒する中間所得者の利用が増加しており、住宅ローンは2012年に3.3億ドルと前年比20%増で成長し、2013年には最初の2ヶ月間で3.4億ドルまで成長したと、報告している。

労働者 Construction workers

 国土整備・都市化・建設省の調査によると、プノンペンの2015年6月の建設業界の人件費は、設計者と建築士は日給15~20ドル程度、作業主任者も日給15~20ドル程度、熟練労働者で日給8~9ドル程度、非熟練労働者は日給5~7.5ドルで雇われており、前年に比べてわずかながら上昇している。建設業で労働力が不足している理由として、カンボジア国内の建設ラッシュと、より高い賃金を求め労働者がタイなどへの流出が挙げられる。

 VトラストのCEO、クイ・ヴァット氏は、「国内でスキルを身に付けることができれば国内で高い賃金を望めるようになるので、国外へ労働者が逃げるというのも減るのではないかと思います。賃金上昇も必要ですが、まずはスキルアップが必要ではないでしょうか」と語る。また、10年以上の実績を持つ内装会社、イエローツリーインテリアのバーニー・ダーキン氏も、「ワーカーの質はまだまだ問題があると思います。今プノンペンでは多くの建設が進んでいるのと関係し、現場経験が無いもしくは少ないワーカーが来るケースが多く、ワーカーの質は以前と変わらないと言えます」と語る。



 C&Pのミース氏は、「建築士、技術者やデザイナーは労働市場に供給されていますが、中間層の技術者は不足しています。また、季節労働者が多く、乾季には建設現場で働きますが、雨季には故郷に戻り農業に従事するのです。建設現場間での人の動きも多いため、建設会社は労働力に関して頭を悩ませています」と言う。

 電気技師、配管工や溶接工などの職種をカンボジアで採ることは非常に困難であり、また多くの場合は想定より技術レベルが低く、英語での円滑な意思疎通が困難である場合が多い。熟練労働者は圧倒的に不足しており、品質や仕上げに関しては許容できるレベルにはほど遠く、一定の品質を求める場合は時間と資金を用意しなければならない。インテリアや内装、リノベーションを手がけるGホールディングスのビアンカ・モイス氏も、「プノンペンは活気があり広大な街に変わりつつあり、開発や建設が進まざるを得ない状況です。ここ10年のプノンペンの開発は、労働の部門でも高い需要を創出しています。建築家、インテリアデザイナー、エンジニアの不足は避けることができません」と業界の人材不足について現状を述べている。

建設許可 Construction permission

 建物を建設する場合、様々な手続きが必要だが、その中で最も困難なのが国土整備・都市化・建設省の建設許可だ。困難な理由として手続きが非常に遅いことがあげられる。また、所管法令等の改正箇所が当局職員に周知徹底されておらず、窓口で受理されても稟議中に申請内容の不備を指摘されて申請をし直すという状況を繰り返すため非効率的でもある。



 既にプノンペンで2棟コンドミニアム建設の実績があり、さらにプノンペン中心街に都市型高層タワーコンドミニアムを建設するタニチュウ・アセットメントの谷俊二氏は、「役所との建設許可ライセンス関係が非常に難しいことですね。建設するために必要なのは、まずはソンサック(地域)へこの場所で工事を始めますという許可です。1ヶ月半くらいの審査期間で了解を得ると、工事等に着手することができますが、今度はどんな建物を建てるか、日本でいう建築確認が必要です。これは大きさによってプノンペン市だけの許可で良いものや、高層マンションのように延べ床面積が3千㎡以上の場合は国土整備・都市化・建設省に許可が必要です。カンボジアは日本の昭和43年までの姿と似ていますね。日本はそのころまで都市計画法がなく、容積率の規程は昭和47年施行からでした。カンボジアもどんどんルールができていますが、そのことが上層部の人間しか知らされていないこともあり、後になってから注意を受けるなど、なかなか申請が通るには時間がかかります。でも経験を積ませてもらったおかげで建設申請業務のノウハウを得ることが私たちはできました」と申請の苦労を経験しながらも前向きに気持ちを切り替える余裕が垣間見れた。

 また、CPLのCEO、チェイン・ケイン氏は、「悪質な手続きも多いため査定に時間がかかっています。現在は政府がシステムを改善しているところです。これから少しずつ良くなることは間違いありません」と将来的な改善に期待を寄せている。
081 カンボジアの建築・内装③へ続く


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