カンボジアに進出する日系企業のための
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2015年7月12日
カンボジア進出ガイド

【金融・保険】

029 カンボジアの金融・保険①(2015年4月発刊 ISSUE02より)

金融 Finance

■ 米ドルとカンボジア通貨リエル The US Dollar and the Cambodian Riel

 カンボジア国内では米ドルとカンボジア通貨のリエルが流通しており、経済取引の大半がドル決済である。通貨リエルへの信頼が十分でないだけでなく、外国為替に関する規制がほとんどないこともドル化促進の要因の一つと考えられる。世界で10数行しかないAA格付けを持つ国際的金融機関、ANZロイヤル銀行のグラン・ナッキー氏は「カンボジアでのビジネスは、ほぼ完全な米ドル経済です。リエルは支払いや両替の手段として使われていますが、取引量の5%ほどしかありません。ですから、現在は金融業界や支払手段においては米ドルが問題なく使えます」と語る。為替変動は投資の際の大きなリスクとなり得るが、カンボジアではそのリスクが低くなる。米ドル基準の経済は、投資家にとって安定的だと言える。

■ カンボジアの銀行 Banks in Cambodia

 ここ数年の金融業界の状態について、ANZロイヤル銀行のナッキー氏は「現在のカンボジアでは、主要な5、6行によって75%の市場シェアが占められています。競合が増え、価格競争が激しくなるに従い、商業銀行が以前のように利益を出すことは難しくなりましたが、利用者にとっては良い状況になったと言えると思います。手数料や利息が下がり、サービスの効率が上がり、質も良くなりました」と語っている。また、カンボジア最大の銀行としてマーケットリーダーの地位を維持しているアクレダ銀行のイン・チャンニー氏は、「カンボジアは人口や国の規模に対しての金融機関数は多いと感じています。2014年は業界全体では対前年比28%増と強い成長でしたが、当行は対前年比35%増加でした。経済的にも政治的にも安定しており、アジア開発銀行の今後数年のGDP成長の見通しも良いので、しばらくは安定すると見られています」と述べている。マレーシアに親会社を持ち、カンボジアの外資銀行で最大の資本規模であるカンボジア・パブリック銀行のパン・イン・トン氏は「所得比率の上昇、高学歴者の増加で顧客の見識も高まっており、要求も細かくなっているため、銀行の選択にも厳しくなっているように思います。銀行を選ぶ時はその銀行の資本力と実績やカスタマーサービスの評価、さらに革新的な金融商品の有無が基準にされています」と語っている。

 カンボジアに進出する企業が銀行を選ぶポイントは、その企業の事業内容や経営方針により異なる。ANZロイヤル銀行の山口紗世氏は、同行が多くの日系企業に選ばれている理由として三つのポイントを挙げた 。「一つ目は、国際的信用がある金融機関であること。二つ目は、親会社や統括オフィスなど国外に幅広いネットワークを持ち、カンボジア国内でも現地のマーケットに関して深い知識をもつローカルパートナーを持っていると。そして三つ目は、法人用インターネットバンキングの利用が可能なことです」。同行のオンラインプラットフォーム(法人用インターネットバンキング)はセキュリティレベルが高く機能も多様なため、法人の顧客から支持されていると語る。国際標準の金融基準を適用しているか、現地でのビジネスに精通しているか十分な資金を持っているかなどを踏まえ、安心して利用できる金融機関を選びたい。また、アクレダ銀行のイン氏は「新たな国に参入するときは経済、社会、政治の安定をまず見るべきです。あとは投資貸付があるか。資本取引もドル建てなので安心できます。カンボジアは地理的条件から今後ASEANの中心に成長しうると感じています。近隣諸国は独自通貨ですし、外国企業向けの投資貸付が無いところも多いです。当行は外国人による預金残高(非居住者預金含む)も多いので、外国企業向けの投資貸付が実現できるのです」と述べている。
(030 カンボジアの金融・保険②へ続く)


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