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2014年11月21日
カンボジア進出ガイド

【建築・内装】

009 カンボジアの建築・内装③(2014年9月発刊 ISSUE01より)

内装

気候風土を理解した取り組み

 ボンケンコンエリアを中心に、外国人やカンボジア人富裕層をターゲットにした飲食店がプノンペン市内に点在する。決して広いとは呼べないエリアに、レストラン、カフェなどが密集しており、競争も激しいばかりでなく、高い賃料も重くのしかかり、店の移り変わりも早い。建築デザイン・プロデュースをするココチカムデザインの河内利成氏は「日本人の好みとカンボジア人の好みは違います。日系のローカル向け飲食店では内装をラフに仕上げることがあります。そのラフな仕上げは日本人からすればカフェっぽい感じでカジュアルと捉えますが、カンボジア人は汚くて未完成だと捉えます。ある程度進んでいる国の人と、そうでない国の人の感覚の違いは大きいです。一度完成して奇麗なところを経験した後にカジュアルな方に感覚が向くのですが、カンボジア人には崩しの感覚がまだわからないのです。そういったことを理解しているか否かでは、大きな違いがあります。店づくりの場合はターゲット(カンボジア人、外国人など)を理解した雰囲気、内装をデザインをしなければなりません」と語った。

 また、設計や工法においても現地を理解した考え方が重要になる。「日本の建築が優れているからそのままカンボジアでも同じ建築を、というのは危険ですね。文化も気候も違いますから、まずは現地のことをよく知ること。材料も工法も違う環境では、輸入材に頼ることになってしまい、結果的に時間もコストもかかってしまいます」と、ココチカムデザインの河内氏は続けた。

 いずれにしても進出には十分な準備や調査が重要だ。「事前調査と同じく大事なのが、現地のパートナー探しです。現地で良いパートナーを見つけることが成功の第一歩と言えます。カンボジアは経済のポテンシャルもまだまだある国です。ぜひカンボジアにお越しください」とOCICのトゥーチ氏は、締めくくった。

工期

 企業が遭遇するもう一つの問題としては、カンボジア人の工期に対する姿勢における文化的衝突がある。1年に27日もの祝祭日があり突発的な理由で更に増えることもあるほか、連休には帰郷したがる者が多いカンボジア人にとって、残業や休日出勤にネガティブなイメージを持っている事実は否めない。

 「残業代を出しても残業してくれません。工程表を見せてスケジュールが遅れていることを説明してもダメです。残業代を貰うより、早く帰ることを選択する労働者が多い。これはお国柄のようです。私の知る限り、10年以上前から言われている話です」と海外起業歴16年のASEAN GATEの石原一彦氏は語るが、カンボジアで工期が遅れる原因の一つであろう。10年以上の実績を持つ内装会社、イエローツリーインテリアのバーニー・ダーキン氏も「工期に関しては、ほとんどの場合遅れるとみておいた方がいいでしょう。日本人ほど時間に対する考え方は重要ではないのです。文化的な問題ですから、発注する側がある程度寛容に構えるくらいがいい」と、アドバイスしている。

 そのような現状に対して、Gホールディングスのモイス氏は「工期は私たちにとってもお客様にとっても厳守しなければならないもので、この国の文化には私たちも頭を悩ませています。品質を保ったうえで完成させることは挑戦でもあり、私たちのような経験のあるマネジメントチームが必要とされる理由でもあります」と語る。現場管理の重要性について、店舗やオフィスの内装の実績が豊富なS.I.C.S.デベロップメントの洪 哲秀氏は、「工期を遵守するにはマネジメント能力も試されます。現地の労働者に対して、現場責任者がどのように接して仕事を効率よく進めていくかで状況は改善されていきます。この国の発展に貢献するためにも、より高い意識を持って日々努力することが大切です」と述べている。また、現場での教訓として、「これは内装に限った話ではありませんが、スタッフ一同がカスタマーファーストの意識を共有できるよう、私たち外国人が率先して実行することが大切です。与えられた予算と時間内で顧客満足度の高い内装を仕上げることは、仕事に関わる多くの人たちに自信と喜びを与えます」と、現地での取り組み方について語った。


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