カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

2014年11月21日
カンボジア進出ガイド

【不動産】

005 カンボジアの不動産①(2014年9月発刊 ISSUE01より)

地価

 2009年、世界同時不況がカンボジア全体の地価に影響を与え、ゴールドタワー42に代表されるいくつかのプロジェクトの建設が停滞または遅延した。2010年から再びカンボジアのGDPは増加したものの、地価は依然として下落傾向にあったが、2012年初頭から徐々に回復している。ボナリアルティの調査によれば、2012年の第3、4四半期には、プノンペンの住宅地で10~15%、商業エリアで10~16%増加し、2013年の第1四半期は、前年同期比で10~20%増加した。韓国、中国などの外国人投資家の投資行動がプノンペンはもちろん、カンボジアの不動産価格に対して重大な影響を有しており、2014年にはプノンペンの主要なエリアで世界同時不況前の地価を超えるまでにいたっている。

近隣国との相違点

 カンボジアの不動産事情は近隣諸国のそれと比較して賃貸のハードルは低く、また高層のオフィスビルなどもあり選択肢は多い。タイ、カンボジア、ベトナムを含むアジア12拠点を持つレオパレス21カンボジアの小林良銑氏は、「バンコクについてはオフィスの空室率は少なく、政治不安も相まって進出を躊躇される企業も少なくありません。同時に賃貸についても日本人街といわれるエリアでは家賃の高騰が激しい状況です。ベトナムについては首都ハノイとホーチミンで異なりますが、ホーチミンは商業エリアではあるものの、社会主義国であるがゆえに取り決めが厳しく、特に飲食業での多店舗展開が困難な状況です。その点カンボジアは縛りが少ないので、ベトナムよりも進出しやすいかと思います」と語る。

 また、1993年創業の国際的な不動産会社、CBREのフィリップ・スコット氏は、「カンボジアは他国とは違ってフロンティアな市場です。よくプノンペンはバンコクから2、30年遅れているといわれていますが、間違っていると思います。どこかしこにも高層ビルがあるというわけではありませんが、例えばヴァタナックキャピタルタワーなどは、タイの高層ビルやイギリス、香港のそれと比べても遜色ないものです。2、30年前のタイでは建設できない建物です」と語っている。

オフィスの賃貸

 カンボジア経済及び不動産市場の安定的な成長を反映し、プノンペンのオフィス賃料は上昇している。ナイトフランクが発表している、アジア太平洋地域の主要な賃貸オフィスの指標では、2014年第1四半期の全体平均の上昇率が前期比1.3%増であるのに対し、プノンペンの一等地のオフィス賃料は実に18.6%増と大幅に上昇した。その重要な要因として、オフィス空室率が5.5%に低下していることが考えられる。今後はLEED認証を取得したヴァタナックキャピタルタワーから大幅に追加供給されるため、プノンペンのオフィス賃料の上昇緩和が期待される。

 CBREカンボジアによる2014年1月調査では、カンボジアのオフィスビルの平均賃料は18ドル/㎡。代表的なオフィスビルは2011年竣工のプノンペンタワー、2009年竣工のカナディアタワー、前述のヴァタナックキャピタルタワーなどで、日系企業が入居しているのはおよそ5件に集約できる。その他に、長屋に似たプテアロベーン(フラット)と呼ばれる住宅の一室や、一軒家をオフィスとして賃貸している企業もある。

 デポジット(保証金)は1~3か月が一般的である。CBREのスコット氏は、「オフィススペースの値段は全体として上がってきています。例えばプノンペンタワーが3年前にオープンした当初、その値段は14.5ドル/㎡ほどでした。また、去年は大きなオフィススペースの供給が無く不足していました。今年は新しいオフィススペースもいくつかでき、プノンペンタワーは4.5ドルのサービス料別で22ドル/㎡ほどになっています。ヴァタナックキャピタルタワーは5ドルのサービス料別で、28〜38ドル/㎡です。現状から見ればこれらの相場はまだ変動すると思います」と語る。
 オフィスビルを賃貸する場合、駐車場が確保されているどうかは注意すべきである。有名なオフィスビルでさえ駐車場不足により、オフィス周辺に別途借りなければならない場合がある。


その他の「不動産」の進出ガイド

不動産
不動産
不動産