2014年12月15日
サンインターナショナルクリニックは、カンボジアで初めての複数の日本人医師による総合診療所です。常駐の日本人の内科医師1名、不定期ですが日本人耳鼻咽喉科医師1名、日本人整形外科医師1名、日本人肝臓病内視鏡専門内科医1名、日本人麻酔科医師1名が勤務しています。ほかにカンボジア人女医が午後帯に診察しています。
世界最小径のオリンパス製の経鼻内視鏡を備え、レントゲン検査、エコー検査、各種血液検査が可能です。専門医がカンボジアに不在でも、日本の専門医と連携して治療方針の決定やアドバイスを行います。院内の内服薬、注射薬は可能な限り日本製を使用。日本人看護師が現地スタッフを教育しており、日本標準の患者接遇を目指しております。耳鼻科手術や整形外科の外来小手術は麻酔科医師の管理のもと可能になっております。
カンボジアは国内の政情が安定してから日も浅いですが、日本と同じ仏教国であり国民の性格も穏やかで、暖かい気候で食物も豊富。日本のみならず多くの外国の企業も数年後のASEAN統合を見据えて参入しており、今後益々の発展が期待されます。日本の医療は皆保険制度がいきわたり世界的にも成功した範疇に入る運営をなされているといえますが、それを当然と考える患者と疲弊した医療関係者がおり、財政的には危機的な状況にあります。カンボジアという医療フロンティアで優れた日本の医療技術や医療従事者の患者対応など保険的制約を乗り越えて純粋に医師と患者の関係を展開できればうれしい限りです。また、日本の医療保険制度とは違った形で問題を抱える日本の保険制度を乗り越えられるようなシステムも模索していきたいと考えています。
また基本的にカンボジア国内で流通しているのは主に西洋諸国で流通している薬剤で、日本人には標準投与量自体が多めで、効果がきつすぎ副作用の恐れも大きくなります。添付文書にある用法の半分ぐらいでも日本人には十分効くケースもあります。当院では日本製の医薬品をなるべく取り揃えており、やむなく海外の薬を処方するときには日本での内服量に準拠した処方を考えています。
カンボジアの医療水準は、まだまだ十分に教育された医師や看護師が少なく黎明期にあるといえます。例えば同じASEAN域内のタイやマレーシア、シンガポールなどと比べると、数十年の遅れがあります。特に日本と比べて圧倒的に専門医の数が少なく、専門医といっても例えば耳鼻科などでは自在に内視鏡を使ったり日本と同じ手術を行ったり出来る医師はほとんどいないといえるでしょう。早急に大学での医学教育を充実し、他国同様の医師や看護師の国家資格制度を確立し、定期的な生涯教育システムを作り上げる必要があります。
日本人が現地で医療を受ける時の注意点は、医師とのコミュニケーションをとるのが難しいということでしょう。どの国でもそうですが、言葉の壁が一番大きいです。カンボジアでは若い医師たちは英語を話せますが、日本人には分かりにくいため、日本人の通訳者のいる病院が望ましいです。先に述べたように、専門医といっても現地の医師の専門性は乏しいため、外国人医師の診療を受けることになります。日本の市中病院には必ずあるようなCTやMRIなども一般的な診療所には設備がなく、外資系の大病院に行かざるを得ないことも多いのです。
当然、日本の保険証は効きませんから(日本での健康保険からの還付払いという方法はあります)現金で支払うため、1回の診療で数万円から大手の外資系の病院になると数十万円の診療費になることもありますので注意が必要です。また、旅行傷害保険でかなりカバーできるので、どの保険が使えるかは事前にチェックしておきましょう。その場合、診断書と領収書を必ずもらってください。保険金申請時に必要になります。なお当院では、日本の大手旅行保険会社やカード付帯の海外旅行保険のキャッシュレス診療サービスにも対応しておりますので、利用をご希望される方は、受付にてご相談ください
基本的にカンボジア国内の病院はスタッフ、設備ともに不十分であり、2-3次救急では国外に搬送されるケースが多いです。当院では1次救急と2次救急の一部は対応できますが、脳卒中や心筋梗塞などはタイや日本の病院へ搬送することが多くなります。
カンボジアは日本よりも湿気はありませんが、暑い国です。日差しが強いため、日本人は日焼けやシミなどの肌トラブルに悩むことが多いです。必ず日よけをして、紫外線に直接当たらないように注意してください。水分も十分摂取し、熱中症にも対応しましょう。なかなか自宅で自炊することも難しいでしょうが、外食が多いと炭水化物や香辛料の多い刺激的な食事になってしまいます。外食時にも野菜を必ず1-2品いれて、朝には果物をとりましょう。生水は絶対にさけ、ミネラルウォーターを常用してください。
外来で診察をしているとスイーツや清涼飲料水、ファーストフードを多くとりすぎているのか、中性脂肪や尿酸の異常に高い人が男性に多く見られます。血管が硬くなったり、詰まり易くなったり、放っておくと痛風や糖尿病に繋がるため、毎日の食事についての総カロリーや栄養素について時々見直しをすることが大事です。外食を減らし、自炊が出来れば良いのですが、その場合でも野菜などは煮沸するかよく洗い、寄生虫の卵などがつかないように気をつけましょう。カンボジアは潜在的な糖尿病患者の数は日本より多いのです。
またプノンペン市内などはあまり蚊等を見かけませんが、それでもカンボジア国内はまだまだ風土病も多く、市内で赤痢、コレラ、食中毒、デング熱などを身近に見かけることも多くあるので、注意が必要です。可能であれば、可及的にすべてのワクチンを摂取して日本を出国したほうが良いでしょう。ワクチンは旬があるので全てとはいきませんが、当院でも可能な限り取り揃えて実施していきます。ただし、小児用ワクチンについては揃えられないものも多いので、お問い合わせください。(取材日/2014年8月)