2017年1月6日
――最近のケン・クリニックさんの動きについて教えてください
奥澤健(以下、奥澤) 一年ほど前から柔道整復師と鍼灸師に加入してもらいまいした。また、日本人の小児科の専門医が、週に一回午前中のみですが、春頃から非常勤で診療しています。私は小児科の専門医ではないですから、例えば発育に関する相談や、乳児の検診はこちらの専門医に担当してもらっています。
日本人の方はどんどん増えてきています。企業の長期滞在者に帯同する家族が増えていますし、また、若いご夫婦で若い小さいお子さんをお持ちの方も増えています。当クリニックの患者さんは、8割は日本人、1割がカンボジア人で、残り1割がその他外国人です。
――病気や怪我について、特徴・傾向について何かお気付きの点はございますか
奥澤 いらっしゃる患者さんで圧倒的に多いのは、ただの風邪です。その次に多いのが腸炎、いわゆる下痢ですね。デング熱も、ずっと東南アジアでは非常にポピュラーな病気です。季節的には、蚊が繁殖する雨季に流行するということがあります。今はインフルエンザが非常に多いですね。季節的に多いのと、やはり学校で移したり移されたりしますから、子供も大人も多いです。
――それは日本人に関わらずということですよね
奥澤 そうですね。ただ、カンボジア人にはインフルエンザという概念があまりないと思います。ドクターもあまり知らないと思います。というのも、日本では当たり前のインフルエンザのテスト、迅速キットというその場で結果が分かるものがありますが、プノンペンでは、私のところを含めて全部で3箇所くらいでしかできません。残りの2件は、日系のサンインターナショナルクリニックとロイヤルプノンペン病院です。うちのカンボジア人看護師に聞いても、そういったキットは見たことがないと言っています。
――つい最近もサンライズジャパン病院さんがオープンしましたし、カンボジア国内の医療水準も上がってきていると思います。カンボジアの医療業界の現状、問題点、これからの期待感など、どのように見ていらっしゃいますか
奥澤 医学的なレベルからすると、まだまだですね。教える人が少ないからだと思います。医学部はありますが、そこに附属病院はありません。どこで実習しているかというと、国立病院等に行って研修していると推測しています。ポルポトの時期に知識層は全て殺されていますから、それ以降教えられる人が居なくなってしまって、今でも尾を引いてしまっています。もちろん知識のあるドクターも居ますが、そういう人は外国で学んできたという人が多いので、国内だけだとちゃんと教えてもらう場があまりないのが現状だと思います。
――大学の先生も十分に知識がない可能性もありますよね
奥澤 志があって外国の大学に行って、自分で技術を身に付けてきた人は、大学の先生にはならないのではと思います。自分のクリニックを開業するということが多いのではないでしょうか。
――日本人を含めた外国人が、「カンボジアだから気をつけないと」ということはありますか
奥澤 デング熱と寄生虫です。あとはいわゆる食あたりが、風邪の次に多いですね。ほとんど細菌性ですから、衛生状態の悪いところに限らず、きれいなところに行って、同じ食事を取って1人だけ食あたりになるケースもあります。防ぎようがありません。
自分でマイスプーンを持っていくとか、こちらの人もやってるように箸やお皿をティッシュで拭く等もどれだけ効果があるか。やらないよりはマシというぐらいでしょうね。ストリートで売っているようなものも危ないです。食品に問題がなくても、扱っている人の手が汚かったりします。デング熱も、蚊に刺されないような工夫が必要です。(取材日/2016年9月)
(次回へ続く)