2018年3月5日
――シンガポール系企業としての御社の強みを教えてください。
モーガン・リー(以下、リー) まず、カンボジアでの経験があることが強みです。
弊社の親会社は、すでに30年もカンボジアで運営を続けており、そのチェアマンは不動産の内外でカンボジアについて理解しています。我々はシンガポールでもいくつかの商業物件、オフィス物件、工場の建設に成功しており、特に政府系の大きなデベロッパーと協力する開発者や建築家として、人々から認知されています。現在の弊社の強みは、カンボジアにおける住宅および商業物件の不動産建設です。
第二の強みは、創造的で構造的な景観と安全性、品質に重きを置いたシンガポールならではのデザインを提供できる点だと思います。シンガポールと日本のデザインは嗜好が似ていると感じます。
――御社はカンボジアで、①不動産管理、②土地開発、③コンサルティング事業を行っていますが、各分野のビジネスにおいて重要なポイントについて教えてください。カンボジアで事業をする際にどんなことに注意していますか?
リー 特に弊社は不動産管理において専門家です。弊社の不動産物件は、独自の不動産管理システムとより効果的な不動産管理を実現するシステムを備えています。
不動産ビジネスにおいて、市場を完全に理解するために把握するべき統計があります。まず我々が最も重視していることは、市場における供給と需要です。全体的な占有量と売上高、そして供給量を確認します。また、先見力を身に着けることも重要です。そのためカンボジアの人口と雇用状況を把握することが必要となりますが、多くの雇用があるとしても、中所得層や富裕層の規模も把握しなければなりません。更には人口学的な視野も捉える必要があります。現地人の需要と外国人の需要を比較することで、ターゲットがより明確になるでしょう。
――PPSEZ周辺の地価が上昇していますが、将来の見通しを教えてください。
リー 実際に価格は上昇しています。 プノンペンの人口増加に伴い、その地域の地価も益々高くなっています。人口増加の原因は、国外からの人口流入と、地方の人々の移動が挙げられます。その需要に合わせて住宅が必要となり、コストも需要に起因し増加していきます。
空港周辺では、ボダイジュなどのプロジェクトが増加中であり、特に外国人をカンボジアに取り込む要因となっています。実際には、3000以上のボレイが市場に参入するとされており、そのうち80%がすでに建設済みです。
工場も増加しており、これらが地価上昇の理由となっています。この傾向は続くと思います。
――今後のビジネス展開を教えてください。
リー 現在はPPSEZ内での事業を進めており、新しい計画はまだありません。
しかし私自身、不動産とITの組み合わせとされる不動産テックに注目しています。将来的には、オンラインで不動産購入ができるなど、新しいテクノロジーを使ったビジネスをしたいと考えています。拡張現実、人工知能、ブロックチェーンもあり得ますね。どんな投資家も歓迎いたします。
――カンボジアへの進出を考えている読者、日本のビジネスマンにメッセージをお願いします。
リー 不動産ばかりでなく、あらゆる業界・業種の投資家にとっても、ここカンボジアには多くのチャンスがあります。
しかし、まず初めに、その不動産が市場に出る準備が整っているか、実行可能性調査を行うことを強くお勧めします。カンボジアの人口は1500万人です。全人口の10%のみが購買力が高い層であり、全体的には不動産を購入できる段階に入っていません。その不動産物件で人々を惹きつけることが出来るのか、確認することが重要です。また、カンボジアはお金の流れが速いため、成功するのは簡単と思うかもしれません。しかし、ここカンボジアで成功するためには長期的に市場を見る必要があります。それから、進出するべきだと思います。
人々はカンボジアの不動産市場は活発だと良い、購入、投資、賃貸を行いますが、ただ時代の波に乗りたがっているようにも感じます。あなたが投資しようとしているプロジェクト、開発者の信頼性を見極めてください。
さらに、マスマーケットやニッチ・マーケティングといったビジネスのターゲットを決める必要があります。カンボジアの中間層の人々は現在成長しており、安価でも高価でもない不動産は売れなくなると感じています。中間層向けのビジネスを行うのであれば長期的にサポートするビジネスモデルを知る必要があります。
不動産ビジネスの他に、私は開発者に対してコンサルティングを行っています。シンガポールでは事業を約10年間行っており、数年前にカンボジアで事業を開始しました。実際に現状を知ってもらうためにも、カンボジアでどのようなデザインが売れるのかなど、戦略とデザイン計画について助言します。詳細とプロセスが必要です。(取材日:2017年8月)