カンボジアでは民間医療の利用率が79.9%に達しており、公的医療サービスの利用率は9%と低水準であることが、BMJ Public Healthに掲載された最新の研究によると明らかになった。この研究は「World Health Survey Plus 2023」に基づき、カンボジアにおける外来・入院医療の利用状況と公的医療の利用要因を分析した。
過去の調査では、公的医療利用率は2020年に40歳以上の個人で22%、2022年には全世代で22.7%とされていたが、今回の結果はそれを下回る。また、カンボジアの民間医療利用率は、政府の医療支出が低いインド(75%)、ナイジェリア(82%)、ネパール(65%)と類似している。
医療費の主要な資金源は個人負担(OOPE)で、国全体の医療費の約55%を占める。政府の医療支出はGDPの7.5%(2021年時点)であり、財源の一部は外部支援によるものだ。多くのカンボジア人は医師の処方なしに薬局で薬を購入しており、一人当たりの年間OOPEは67ドル、世帯年収の中央値は1600ドル未満である。
医療費負担の軽減策として、政府は健康平等基金(HEF)と国家社会保障基金(NSSF)の2つの社会保障制度を導入した。HEFは2000年に開始され、低所得層の公的医療施設利用を支援し、2023年12月時点で300万人をカバーしている。NSSFは2008年に開始され、民間企業の正規雇用者や公務員を対象とし、2024年12月時点で312万人をカバーしている。さらに最近では、自営業者とその扶養家族向けの医療保険制度が導入され、2023年12月時点で9万人が加入した。しかし、HEFとNSSFの合計カバー率は39%にとどまり、依然として多くの人が社会的健康保障の枠外に置かれている。
世界銀行の公的医療専門家によれば、カンボジアの公的医療の不備を民間医療が補完しており、その結果として平均寿命の延長や乳児死亡率の低下が見られるという。ただし、世界全体と比較するとカンボジアの公衆衛生指標は良好だが、地域内の他国と比べるとやや劣る。特に、都市部と農村部の医療格差の是正が必要であり、今後の経済発展において医療の質の向上が重要な要素となる。