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  • 社会
  • 2025年5月12日
  • カンボジアニュース

フン・セン氏、オンライン詐欺の国際対策を提唱──「麻薬よりも難しい」[社会]

カンボジアのフン・セン上院議長は、世界各国に対してオンライン詐欺および違法オンライン賭博への取り組みを強化するよう呼びかけた。発言は5月3日、東ティモールの首都ディリにある大統領官邸での講演の中で行われたものである。

フン・セン氏は「オンライン詐欺や違法賭博は、国境を超えて広がるため、麻薬犯罪よりも取り締まりが難しい」と述べ、各国に対して市民への啓発活動を強化し、犯罪組織に対抗する意識を高める必要があると訴えた。

また、東南アジア諸国、とりわけカンボジア・タイ・ラオス・ミャンマーが国際メディアから「詐欺の温床」として名指しされている現状に対し、フン・セン氏は「なぜカンボジアだけが責められるのか。自国民を教育する努力こそ各国の責任だ」と反論。「平和を享受してきたカンボジアが、いまや国際詐欺組織の楽園と呼ばれるのは心外だ」とも述べた。

しかしこの発言は、対外的イメージ防衛の意図が強く、実際に多数の被害報告や摘発事例がカンボジア発である点に触れていない。発言のタイミングが東ティモール国賓訪問中であったことも、外交的メッセージの色を濃くしている。

加えて、2024年2月にカンボジア政府が設置した「オンライン詐欺対策委員会」による実質的な成果については本講演で具体的な説明がなされず、実効性への懸念も残る。委員会は首相フン・マネット氏を委員長に、関係省庁・自治体・警察が連携する形で設けられたが、摘発件数や被害抑止の統計的裏付けは示されていない。

政府の姿勢として、フン・セン氏は引き続き「公的教育こそ最大の武器」との立場を示し、国際協力の必要性を訴えたが、自国の体制整備や労働者保護、通信・決済インフラを悪用する犯罪構造の改革など、より根本的な対応の必要性についての具体的ビジョンは明言されなかった。

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