カンボジア北西部、タイとの陸路国境の街ポイペト。古くよりタイとカンボジアをつなぐ交通の要衝として多くの多くの人が旅や行商のために行き交い、大量の物資が流通する陸路交易の交錯点として長く栄えてきた。一方、タイ国境とカンボジア国境に挟まれた「不思議な空間」にはいくつものカジノホテルやレストランが林立し、カンボジア領に属しながらも実質タイ経済に占拠された猥雑な歓楽街の様相も呈する。
カジノと国境交易で栄えてきた混沌の街ポイペトが今、「タイ+1」を狙う製造業にとっての新たな生産拠点として脚光を浴び始めており、その原動力となっているのは日系製造業の果敢な進出だ。清濁合わせ飲む陸路国境のカオスからアジアの工場として脱皮できるのか、今その過渡期にあるポイペトの現状に迫る。
さらに国境現場でも特有の問題が発生している。タイとカンボジア間の陸路貿易においては、カンボジアのトラックはタイ側に入れないが、タイのトラックはカンボジア側に国境から20Km圏内に入ってくることが可能だ。 よってカンボジアへの輸入の場合は本来、タイの通関業者に依頼すればタイ通関からカンボジア国内への搬送まで一通りこなすことが可能なはずだが、通関業務はカンボジアの通関エージェント(と称する仲介事業者)に委ねざるを得ないケースが多く、内情がブラックボックスなままコストも割高な水準で硬直化している。さらに少量の貨物輸入の場合、カンボジア側の通関職員が手配する混載トラックに積んでの国内
発送サービスを実質的に強要されることもあり、それが不透明な割高コスト及びリードタイムの不確実性に拍車をかけている。
現実的に起きた事例だが、このカンボジア通関職員が手配する混載トラックの積み荷場所とタイ側輸出書類上の貨物の荷下ろしに関する記載とに不一致があり、通関職員と修正可否の議論が繰り広げられたあげく、コンプライアンス意識の高い日系企業の判断でいったん輸出を取りやめ仕切り直す(コストも改めて同額かかる)というケースも発生している。この際のカンボジア通関職員の言い分は「タイ側の通関は無事済んでいるし、カンボジア側の諸々はこちらに任せておけば問題ない、ちゃんと送り届ける」の一点張り。 必要書類の整合性を重視する先進国企業にとっては極めて受け入れ難い話である。
また、詳細スキームの解説は本誌では差し控えるが、カンボジア側の国境エージェントが書類照合手続の隙間を突き、関税額引き下げを迫ってくるケースが悪しき商慣行として今も実在する。取引決済時に矛盾が判明せざるを得ない欠陥スキームであるため本来は実行し得ない手法であるが、諸々の機能が不整備なカンボジアでは未だ横行しているのが現実である。コンプライアンス意識が高い先進国企業にとっては論外の手法であっても、その法的リスクを厭わない国内外業者も事実存在し、その関税コスト負担の差がそのまま価格競争力の差につながり正規の手続を遵守する輸出入事業者の競争力を削ぐ結果につながっている。
カンボジア側の制度不備や悪しき商慣行が進出検討企業にとってハードルとなっている中で、先進国企業にとっての有効なソリューションとなり得るのが経済特区(Special Economic Zone=SEZ)の存在だ。
SEZ入居企業は、輸出入に関わる諸々の役所手続をワンスストップサービスにより特区内で完結できる。また特定の要件を満たせば税制優遇措置を受けられる「投資適格プロジェクト(Qualified Investment Project=QIP)に申請さえすれば認定されるメリットも享受できる。現在カンボジア国内において認可されたSEZは38カ所、うち実際に稼動しているのは15カ所で、代表的なものとしてはミネベアや味の素など日系大手も多く入居するプノンペン経済特区(以下PPSEZ)が挙げられる。
ポイペトには2012年に設立され今も稼動しているサンコー経済特区(SANCO SEZ、以下サンコー)が存在する。先述のPPSEZは日系色の強いSEZとしてカンボジアでは広く知られているが、実はこのサンコーはそれに更に輪をかけた「実質的な日系SEZ」と言える。
開発主体となる事業会社の資本のうち51%はタイへの労働者派遣で財を築いた富裕層カンボジア人によるものだが、残りの49%は日本人事業家の資本が入っている。しかもこの51%オーナーはタイでの労働者派遣先である顧客日系工場からカンボジアでの特区開発を打診されたことがきっかけでSEZを開発したと言われ、現在の入居企業はタイ系鉄鋼業1社を除き全て日系企業。さらに現在サンコーへの入居企業誘致活動を実質的に担っているのは、トヨタグループ系総合商社である豊田通商が100%出資するテクノパーク・ポイペト(Techno Park Poipet Pvt Co.,Ltd、、以下豊通テクノパーク)である。
昨今その存在意義そのものが厳しく問われている日本の農協は、戦前から戦後、そして高度経済成長時代、日本の農業発展に大きく貢献した農業組織でした。GDPの3割を占めるカンボジア農業の現況は、まさに農協を必要としていた当時の日本の農業の姿と重なります。
JCGroupは2008年創業以来の主要事業であるカンボジア農業に日本の知見・ノウハウを導入、「古き良き日本型農協」の機能をカンボジアに実現させ「Made by JC(Japan & Cambodia)」によるカンボジア農業の産業化に貢献することを目指しています。
http://jcgroup.asia/
早稲田大学政経学部経済学科を卒業後、日本の大手監査法人、戦略コンサルティング兼ベンチャーキャピタル(一部上場企業 執行役員)を経て、2008年カンボジアにて「JCグループ」を創業。日本公認会計士・米国ワシントン州公認会計士。
トゥールコック地区のジャパンビルディング (2017/05発刊6号より) WILLONE BUILDING 遂にオープン! 2014年に設立されたカンボジア現地法人WILLONE INTERNATIONAL CAMBO … [続きを読む]
STAFF VOICE (2017/05発刊6号より) みんなで作り上げた製品に対して強い誇りを持っています age30 協和製函 ホート・アムセイン 1987年生まれ。高校時代に、熊本県の高校に交換留学したことがきっか … [続きを読む]
特別レポート(2017/05発刊6号より) 陸路国境ポイペト、 混沌からの脱却なるか~カジノと国境交易で栄えたカンボジアの”陸のカオス”が、 日系企業が主導する「タイ+1」の新たな製造拠点に?変貌の過渡期にある国境の街の … [続きを読む]