国際通貨基金(IMF)は、カンボジアの年間成長率が2030年までに約6%に達すると予測している。さらに、中国、日本、韓国の歴史的な成長パターンに沿った発展を遂げた場合、成長率は7.5~7.9%に達する可能性があると指摘する。
カンボジア経済の現状と課題
IMFの年次報告書では、カンボジア経済は回復を続けているものの、成長のペースにばらつきがあると指摘している。特に、信用成長(クレジット・グロース)の急減速が金融セクターの脆弱性を浮き彫りにしており、政策立案においては短期的な回復の持続性と包括性を確保しつつ、中期的な開発目標を達成する必要があるとしている。
成長の牽引力の再構築
カンボジアは2030年までに後発開発途上国(LDC)からの卒業が予想されており、持続可能で多様な成長要因へのシフトが求められる。IMFは、新たな機械学習手法を用い、カンボジアと類似の経済条件を持つ国々の過去の成長軌跡を分析し、中期的な成長予測を行った。この手法では、ダイナミック・タイム・ワーピング(Dynamic Time Warping)を使用し、他国の経済指標とカンボジアの経済動向を照合し、最も類似する事例を抽出して成長予測を導き出している。
この分析に用いられた国々には、インド、インドネシア、ラオス、スリランカ、日本、バングラデシュ、韓国、ポーランド、フィリピン、ボリビア、ジブチ、中国、ベトナム、ペルー、モロッコ、タイ、ウズベキスタンなどが含まれる。分析の結果、2030年のカンボジアの平均成長率は5.8%、中央値は6.3%と予測された。
高成長国との比較と要因
IMFの報告書は、日本(1956~1967年)、韓国(1971~1986年)、中国(1996~2002年)といった例外的に高成長を維持した国々に注目している。これらの国々に共通する要素として、輸出主導型の工業化政策やグローバルバリューチェーンへの戦略的統合が挙げられる。また、教育や医療インフラを通じた人的資本投資が成長の鍵となったことも指摘されている。さらに、ガバナンスの改善、財産権の保護、民間部門の発展を支える制度改革が、高成長を持続させる重要な要因であったと分析されている。
カンボジアの成長ポテンシャルと政策提言
カンボジアは人的資本の蓄積や労働生産性の向上に遅れを取っているが、中国、日本、韓国の成功事例から学ぶことで、高成長を維持する可能性があるとIMFは見ている。短期的には、成長の多様化と生産性向上を目指し、輸出基盤の拡大、サプライチェーンでのグローバルな地位向上、より高度な製品・サービスの生産能力向上が重要だとされる。
また、IMFは、高付加価値産業や生産ネットワーク、物流、低コスト再生可能エネルギー発電への投資促進が競争力強化につながると述べる。加えて、農業部門の生産性向上がマクロ経済の変革に不可欠であり、農産加工業の振興が付加価値生産の成長を促すと指摘している。
ビジネス環境の課題
報告書では、外国投資家にとっての主要な障害の一つとして、カンボジアの電力コストの高さを挙げている。カンボジアの電力料金は、近隣のベトナムのほぼ2倍に達しており、事業環境において大きな負担となっている。この問題を解決するためには、包括的なエネルギー戦略を策定し、コスト削減と供給の安定化を図ることが必要だとされる。
さらに、法律の執行や解釈の不確実性、ガバナンスの問題も、外国企業からの懸念事項として挙げられている。IMFは、ガバナンスの枠組みを強化し、透明性を向上させ、投資家の信頼を高めるための改革を推進すべきだと提言している。