台湾の商業銀行であるシノパック(SinoPac=永豐銀行)が、カンボジアの大手マイクロファイナンス機関であるアムレット(Amret)の80%の株式を約5億5000万ドルで取得した。取引は両国の規制当局の承認を経て完了しており、シノパックの東南アジア進出を強化する戦略的な一歩である。
今回の買収により、シノパックがアムレットの筆頭株主となり、以前の主要株主であったAdvans(拠点:仏国)は完全に撤退した。一方、開発金融機関であるオランダ開発金融公庫(FMO)と国際金融公社(IFC)は、それぞれ10%ずつの株式を保持し、少なくとも2年間、移行期間を支える予定である。その後、シノパックがアムレットの全株式を取得する計画となっている。
Advansグループはアフリカやアジアの複数の国で事業を展開しており、新興市場や発展途上国での金融包摂と経済発展の促進を主な目標としている。特定の市場で一定の成長を遂げた後、他の機関や企業に事業を移譲することで資金を回収し、新たな地域やプロジェクトに投資する。
シノパックは台湾、中国、香港、ベトナム、アメリカで事業を展開しており、今回の買収は同行の東南アジア拡大計画の一環である。
シノパックはプレスリリースで、「アムレットとの提携により地域での存在感を高め、持続可能な金融、包括的な金融、スマート金融を優先しながら、アムレットのESG(環境、社会、ガバナンス)能力を強化する」と発表した。また、FMOやIFCとの協力を通じて、責任ある投資や金融包摂を推進する姿勢を強調している。
アムレットのCEOであるDinn Dosは、「今回の所有権移行が円滑に進むよう、すべての関係者が優先的に取り組んだ」と述べた。さらに、シノパックの専門性とイノベーションがアムレットの持続可能かつ責任ある発展に貢献することへの期待を示している。
退任するアムレットの取締役会会長であるClaude Falgonは、「買収先の選定にあたり、規制基準を満たすだけでなく、持続可能性やESG、顧客保護において市場をリードする立場を取る買い手を優先した」と語り、「シノパックはこれらの分野での経験と実績を持つ信頼できる新しい所有者であり、アムレットが今後もその価値を維持しながら発展すると確信している」と付け加えた。
アムレットは2024年12月時点で、総資産19億ドル、貸付残高15億ドルを報告しており、カンボジアの金融セクターにおいて重要な役割を担う。ネットワークは150支店以上、顧客数は63万人を超えている。