産業科学技術イノベーション省は、小規模事業・零細企業に対し、政府の支援プログラムへのアクセスを可能にするため、正式な登録を行うよう呼び掛けている。
正式な登録とは、商業省への企業登録や、租税総局への税務登録のほか、従業員がいる場合は労働職業訓練省への登録、国家社会保障基金(NSSF)への社会保険登録など様々ある。
産業科学技術イノベーション省の調査によれば、2024年に調査対象となった約75万件の事業のうち、97%が小規模事業・零細企業に該当し、2%が中小企業(SME)、0.2%が大企業である。小規模事業・零細企業はカンボジア経済発展の主要な役割を担っているが、その多くが非公式な事業形態で運営されている。
同省のヘム・バンディー大臣は、「正式な登録は、政府の支援プログラムへのアクセスを可能にし、事業の拡大や雇用創出、付加価値の高い製品の生産を促進する」と述べ、登録の重要性を強調した。
政府は正式登録のメリットを周知するため、ワークショップやセミナー、展示会、公的な広報キャンペーンを通じた啓発活動を進めているほか、政府の政策に基づき設立された商業銀行としてSME銀行が設立されており、持続可能な銀行システムを通じて中小企業を支援している。
政府は小規模事業・零細企業や中小企業の成長を支援するため、登録を奨励し続けているが、多くの事業者にとって正式登録のインセンティブが十分ではないとの指摘がある。
同省の調査結果は、登録促進の取り組みが行われているにもかかわらず、登録による具体的なメリットが事業者に十分伝わっていない可能性を示しており、政府の支援プログラムの内容や実行力において不明瞭である場合、事業者が登録に価値を見出すことは難しい。
また、登録プロセスの煩雑さや関連コストの負担が、特に零細事業者にとって大きな障壁となっているほか、非登録でも事業を継続できる現状が、登録を後回しにする動機を生んでいる。非公式のままでいることで税務手続きや社会保険への登録を回避し、短期的なコスト削減が可能となるため、登録の必要性を感じない事業者が少なくないからだ。
ヘム大臣は、「登録は小規模事業・零細企業が事業を拡大し、カンボジア経済全体の成長に貢献するための重要なステップである」と述べている。一方で、登録手続きの簡素化や関連コストの低減、地方部の事業者を対象とした啓発活動の強化など、さらなる改善が求められている。
正式登録が事業者にとって価値のある選択肢として機能するためには、税制優遇や融資条件の緩和といった具体的な利益を提示し、事業者が実感できる形で支援を実行する必要がある。これにより、カンボジア経済の基盤を支える小規模事業・零細企業の成長が促進され、より安定した経済環境が実現するだろう。