(c)Phnom Penh Post
カンボジアの不動産セクターは、外国直接投資(FDI)の減少と建設プロジェクトの中断により、今年は5%から6%(昨年度は10%から15%)という低い成長率が予想されている。プノンペンポストが報じた。
カンボジア不動産協会の会長チレク・ソクニム氏によると、2020年1月から高級コンドミニアムは約68%が中断しており、それ以外のプロジェクトも遅延しているという。
高級コンドミニアムのプロジェクトは近年の建設ブームを構築しているが、パンデミックの背後にあるブームの終焉が、雇用に影響を与える可能性がある。
世界銀行は、「新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、前例のない程の需要減少が起こったが、一方で不動産市場はここ10年の建設・不動産ブームによりすでに飽和状態にある」との見解を示している。
しかしエコノミストのチェング・キムロング氏によれば、新型コロナウイルス感染拡大以前のレベルへの回復には2年以上かかるものの、ここ数か月間で中国や韓国、台湾といった裕福なASEAN各国からの外国直接投資が継続されているという。
同氏は、「低い土地リース料や、土地価格、ローンや利息の返済に有利な条件は、依然として多くの投資家を惹きつけている」と述べた。
不動産会社CBREによると、不動産セクターは他セクターと同じくパンデミックの影響を受けており、各業界ごとに従業員の安全や健康を優先させる必要があるという。
CBREカンボジアのダイレクター、ジェームズ・ホッジ氏は、「ソーシャルディスタンスを保つ対策、リモートワークや最新技術を活用するなどオフィス戦略の再考が必要だ。短期的な課題に直面しているのではなく、長期的な解決策を見出さなければならない」と述べている。
【成熟したマーケットのベンチマーク】
ここ10年間、カンボジアのGDP平均7%に貢献している最大のセクターが不動産・建設セクターだ。
世界銀行のデータによると、FDIのうち50%以上が中華圏(香港と台湾含む)からのもので、そのうち半分が不動産・建設セクターに割り当てられている。
同セクターでは2019年にFDIの51%近く(35億ドル)が割り当てられたが、そのうち43%が中華圏からの投資だった。
国土整備・都市化・建設省によると、2020年上半期に承認された建設プロジェクトは前年同期比13.3%増の2522件(総額38億ドル)、そのうち住宅が2097件(18億ドル)、商業施設が220件、住宅開発が36件、工場が45件、ホテルが19件となっている。
カンボジア・インベストメント・マネジメントのCEO、アンソニー・ガリアーノ氏は、「住宅セクターは供給が飽和しており、需要が低下しているため、急激な価格調整局面を迎えている可能性がある」と述べた。
カンボジア不動産協会のチレク会長は、「一方の商業部門も依然として低迷が続いており、グレードAのオフィス賃料は1ユニットあたり2万5000ドル程だが空室が目立っている。一部のオーナーはグレードBの賃料に合わせて価格を引き下げている」と述べている。
CBREの第2四半期の報告書によれば、不動産市場ではすでにグレードCビル4棟とグレードBのオフィススペース1棟からなる5つの新規プロジェクトが完成し、計2万7100平方メートルが提供されている。
【価格設定に関する圧力】
第1四半期と比べ、第2四半期では中価格帯と高価格帯両方において販売価格の下方修正が行われた。
中価格帯は4.6%、高価格帯では4%程販売価格が下方修正された。一方で低価格帯においては平均販売価格が1平方メートルあたり1539ドルとなり、マイナス0.65%の下方修正となった。
CBREによると、今期はデベロッパーによる短期的な割引が増加した他、交渉が軟化し見積もり価格と達成価格の差が拡大したという。
カンボジア・インベストメント・マネジメントのガリアーノ氏は、「コンドミニアムの価格に関する圧力は、外国人購入者への高い依存度の結果である。世界経済の低迷と不動産購入者やビジネスマンの流動性の欠如により、しばらく不動産価格には大きな圧力が加わるだろう」と述べている。
【不動産市場の冷え込みはどのくらいか?】
CBREのホッジ氏はによると、リスクが高まったことで資金調達が厳しくなる可能性が高く、2020年後半までに不動産セクターは厳しさを増す可能性があるという。
同氏は、「デベロッパーや地主が投資家や入居者獲得を競い合う中で、価格はさらに低下すると予想される」と述べている。
パンデミックの影響は現在進行中であり、その結果として不動産市場でどの程度の価格調整がされるのかは不透明だ。
加えてホッジ氏は、「低価格帯の物件が増えたことで市場規模が広がり、潜在的には不動産セクターの改革を促進する機会につながるはずだ」と述べた。