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2018年12月17日
カンボジア進出ガイド

【運輸・物流】

276 カンボジアの物流・運輸②(2018年11月発刊 ISSUE09より)

空路 Transport by Air

 カンボジアには、プノンペン国際空港、シェムリアップ国際空港、シアヌークビル国際空港の3空港がある。2017年、プノンペン国際空港とシェムリアップ国際空港を利用する乗客数はそれぞれ420万人、シアヌークビル国際空港は33万8000人、計880万人に達した。

 プノンペン国際空港は到着ホールと搭乗口の拡張を行ったものの、利用者数の増加から、カンボジア政府は2018年1月、新国際空港を近郊のカンダール州タクマオに建設すると発表した。

 また、シアヌークビル国際空港は2018年6月、観光客と投資の誘致を目的に旅客ターミナルの規模を80%拡大し、施設の全面改装を行った。これにより大型航空機の離着陸も可能となった。

 さらにタイ国境付近に位置するバンテイメンチェイ州ポイペトに、100ヘクタール以上の空港を建設する予定だ。投資総額が4000万ドル~5000万ドルと見積もられており、竣工には3~5年かかる見込みだ。同州には現在、4つの特別経済区と1つの工業団地がある。

陸路 Transport by Land



 現在、カンボジアにはプレアシアヌーク州にあるシアヌークビル港まで伸びる国道4号線と、プノンペンとベトナムを結ぶ国道1号線、またプノンペンとタイを結ぶ国道5号線があり、5号線は将来的にASEAN諸国と東西経済回廊を繋ぐ最初の高速道路としてタイ・ミャンマー・そして中国をも結ぶこととなる。

 陸路の輸出入の場合、タイ側からであれば、ポイペトもしくはコッコン経由、ベトナム側からはバベット経由が現状での主要ルートだ。現在はタイとの接続性を高めるため、タイとの国境沿いにパイリンとコッコンを結ぶ200キロにおよぶ道路の建設計画を中国に提案するとしている。

 加えて、政府は2つの新しい高速道路を計画しており、プノンペンと沿岸付近のシアヌークビルを結ぶ第1弾は、2018年末から建設を開始し、2023年の完了を目指す。中国道路橋合弁会(CNRoadandBridgeCorporation)がBOT方式により建設される、4車線で現在の道路(240キロメートル)よりも短い190キロメートルとなるという。また、プノンペンとベトナム国境付近に位置するスヴァイリエン州バベットを結ぶ第2弾は、JICAにより予備調査が行われている。

 しかし、最近では道路損傷の多くが積載超過量の貨物を運ぶトラックにより引き起こされており、道路以外の陸路輸送、特に鉄道整備の動きも活発だ。

 現在鉄道は、プノンペン-シアヌークビルを結ぶ南線と、プノンペン-ポイペトを結ぶ北線が存在する。南線は既に稼働中、北線は2018年4月、ポイペトとバッタンバン間の65キロメートルが運航を開始した。また政府は、ベトナム・ホーチミンと、バベットを結ぶ鉄道計画を明らかにしており、2018年4月にはプノンペン都内からプノンペン国際空港までの鉄道も運航を開始した。



 ここ数年の変化について、カンボジアの物流業におけるリーディングカンパニーで、建設や不動産など多岐に渡る事業を展開するワールドブリッジグループのシア・リッティ閣下は、「近年、この業界は劇的に変化しており、物流・運送分野は急速に発展しています。これも、カンボジアの経済成長、貿易活動の拡大、インフラ事業の成功のおかげであり、経済成長のトレンドの1つです。しかし、カンボジアには十分な人的能力がありません。人的資源、能力が限られており、物流業界の大きな問題となっています。地域内の近隣諸国と比較して物流コストが比較的高額であることも、もう一つの課題として挙げられます」と、業界が直面しているギャップを埋めるため、物流スキルに焦点を当てた職業訓練が、益々奨励されるべきだという。

 こうした物流コストの削減により製品の市場価格が下がり、さらに輸送量も大幅に増加すると期待される。

車両・交通事情 The Traffic Situation

 プノンペンでは人口増加に伴う車両数の増加と、整備不十分な道路インフラや徹底されていない交通ルールもあいまって交通渋滞が常態化している。交通渋滞や交通事故数の深刻化から、インフラの開発・整備による渋滞緩和と交通安全の向上が急がれる中、政府は2018年6月、プノンペン都内中心部とプノンペン国際空港を結ぶ自動案内軌条式旅客輸送システム(AutomatedGatewayTransit=AGT)の実現可能性調査を行うと発表した。セントラルマーケットから空港までの18キロに及ぶ予定で、環境に配慮した大量輸送システムであるAGTは、有害な煙を出さずに時速60キロの速度で移動することができる。使用するスペースも少なくて済み、都市の公共輸送の近代化と交通混雑を減らす助けになると期待されており、2023年にも開通を目指している。

 公共事業運輸省スン・チャントール大臣は、「AGTプロジェクトは計画通り進められており、今後2年間で日本国際協力機構(JICA)と協力して実現可能性調査を行う。正確なルートを検討中だ。空港に近づくにつれて地下4キロで走ることになるだろう」と述べている。

 また、政府はプノンペン都内に3番目の環状道路を建設するために中国との合意に署名すると発表した。フン・セン首相は、「現在第2環状道路の建設に取り組んでいるが、じきに第3環状道路の建設にも着手する予定だ。これにより、都市の交通渋滞はさらに軽減されるだろう」と語った。

 そんな中で、アプリによるタクシー配車サービス事業が多く提供されている。東南アジア最大の配車アプリ『グラブ』を運営する、同社は2018年3月、競合他社ウーバーの東南アジア事業を買収し、プノンペンとシェムリアップで、オートバイやトゥクトゥクの配車サービスも開始した。しかしカンボジアにはまだ多くの配車アプリがあり、競争の激しい市場だ。その中で、グラブは安全性やセキュリティの点で、他の配車アプリより優れているという。



 グラブカンボジアのソティアウィー・ヘン氏は、「ドライバーと乗客に個人傷害保険が付きますし、アプリを使えば、行き先までどのくらい時間がかかるかわかります。ドライバーはどういう人なのか、乗用車はどんなタイプなのか、事前に知ることができます。また、もし危険を感じたら、緊急ボタンも押すことができます。予約時には、アプリを通じて、いくら払えば良いかかわかるので、必要以上に距離を走るドライバーは淘汰されていきます。また、グラブにはクレジットカードの支払いができます。これは大きな特徴です」と語った。例えば、カンボジアでは女性が夜道を1人で歩くのに危ない場所もあるが、安全な移動手段として、こうした問題の解決に貢献している。


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