カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

2018年6月26日
カンボジア進出ガイド

【運輸・物流】

250 カンボジアの物流・運輸②(2018年5月発刊 ISSUE08より)

空路 Transport by Air

 カンボジアには、プノンペン国際空港、シェムリアップ国際空港、シアヌークビル国際空港の3空港がある。プノンペン国際空港は昨年12月、2600万ドルの費用をかけ、到着ホールと搭乗口の拡張を終えた。しかし、利用者数増加により、カンボジア政府は今年1月、プノンペンの新国際空港を2019年初頭からカンダール州のタクマオに建設開始と発表。カンボジア民間航空庁(SSCA)は、空港周辺に商業施設や居住用住宅を開発し、エアポートシティに発展させていく予定だという。

 一方、過去10年間、輸送部門が著しい進化を遂げているにもかかわらず、危険物の輸送は以前として問題を起こしている。民間航空訓練センター(CATC)とカンボジア貨物運送協会(CAMFFA)は、空路による危険物輸送の合理化と標準化に向け覚書を締結した。これにより、CATCがスタッフに適切な検査を行う訓練をする。

陸路 Transport by Land

 現在、カンボジアにはシアヌークビル港まで伸びる国道4号線と、プノンペンとベトナムを結ぶ国道1号線、またプノンペンとポイペト(タイ国境)を結ぶ国道5号線があり、5号線は、将来的にタイ・ミャンマー・そして中国をも結ぶASEAN諸国と東西経済回廊を繋ぐ最初の高速道路となる。陸路の輸出であれば、タイ側からであれば、ポイペトもしくはコッコン経由、ベトナム側からはバベット経由が現状での主要ルートだ。加えて、政府は2つの新しい高速道路を計画しており、プノンペンとシアヌークビルを結ぶ第1弾は、2019年に推定19億ドルで中国企業により建設開始予定で、2023年の完了を目指す。一方、プノンペンとバベット(ベトナム国境)を結ぶ第2弾は、JICAにより調査中だ。



 ここ数年の変化について、カンボジアの物流業におけるリーディングカンパニーで、建設や不動産など多岐に渡る事業を展開するワールドブリッジグループのシア・リッティ閣下は、「近年、この業界は劇的に変化しており、物流・運送分野は急速に発展しています。これも、カンボジアの経済成長、貿易活動の拡大、インフラ事業の成功のおかげであり、経済成長のトレンドの1つです。しかし、カンボジアには十分な人的能力がありません。人的資源、能力が限られており、物流業界の大きな問題となっています。地域内の近隣諸国と比較して物流コストが比較的高額であることも、もう一つの課題として挙げられます」と、業界が直面しているギャップを埋めるため、物流スキルに焦点を当てた職業訓練が、益々奨励されるべきだという。

 一方、カンボジアの道路損傷の多くが積載超過量の貨物を運ぶトラックによって引き起こされており、道路以外の陸路輸送、特に鉄道整備の動きが活発だ。現在鉄道は、プノンペンーシアヌークビルを結ぶ南線と、プノンペンーポイペト(タイ国境)を結ぶ北線が存在する。南線は既に稼働中、北線は今年4月、ポイペトとバッタンバン間の65キロメートルが運航を開始し、プノンペン―ポイペトの列車運行に一歩近づいた。同区間は、年末までのプノンペン開通を目指す。また政府は、ベトナムのホーチミンと、カンボジアのバベットを結ぶ鉄道計画を明らかにしており、今年4月にはプノンペン都内からプノンペン国際空港までの列車サービスも運航を開始した。鉄道輸送が有効に運用されれば、物流コストの削減により製品の市場価格が下がり、さらに輸送量も大幅に増加すると期待される。

車両・交通事情 The Traffic Situation

 プノンペンでは人口増加に伴う車両数の増加と、整備不十分な道路インフラや徹底されていない交通ルールもあいまって交通渋滞が常態化している。四輪車両は、外国から輸入された中古車が市場の9割を占めており、増加した中古車両に対し、政府は2000年以前に生産された自動車についての中古車輸入税の増税を検討。自動車会社に対し、カンボジア国内で車を完成させたメーカーに対しては税金を50%カットするなど、国内での組立工場設立を奨励している。通常、新車検査は2年ごとに実施されるが古い車はより頻繁に検査が必要となる。



 交通渋滞や交通事故数の深刻化から、インフラの開発・整備による渋滞緩和と交通安全の向上が急がれる中、アプリによるタクシー配車サービス事業が多く提供されている。東南アジア最大の配車アプリ『グラブ』を運営する、グラブカンボジアのイー・ウィー・タン氏は、「カンボジアは成長が期待できる安定した市場です。現在は、公共交通機関とサービスを統合することで、お客様が一回の移動で、空港、鉄道、バス、水上タクシーなどの複数の交通手段を使って、交通渋滞を避け、手頃な料金で乗ることができる新サービス“ファーストマイル・ラストマイルサービス”を推進しています」と述べる。同社は今年3月、競合他社ウーバーの東南アジア事業を買収し、プノンペンとシェムリアップで、オートバイやトゥクトゥクの配車サービスも開始した。

 また、地下鉄やモノレール、路面電車などの旅客輸送システム(AGT)の敷設がJICAの援助の下で検討されており、2023年にも開通を目指している。現在は都営バスが運行しており、電子チケットの導入により更なる利便性の向上が図られている。


その他の「運輸・物流」の進出ガイド

運輸・物流
運輸・物流
運輸・物流