【マーケティング・メディア】
カンボジア人の多くは、エンターテイメントを好む。テレビ(96%)でコメディとコンサートとドラマを視ることが多い。一方インターネットユーザーは、郵便電気通信省によると、2020年までに950万人に達する見込みである。インターネット利用(39%)はラジオ(34%)を抜き、雑誌(12%)や新聞(10%)をはるかに越えるメディアとなっている。※(%)は視聴率。
メディア、広告の表現の仕方に共通しているのは、わかりやすくビジュアル化しているということ。ワールド・データ・アトラスによると、15歳以上の識字率は2015年で78.3%となっており、一つの要因と思われる。ここでの識字率の定義は、「日常生活上の短い簡単な文を理解して読み書きすることができる」ということ。少し長く複雑な文章を読む人口となるとこの数字はもっと小さくなるだろう。
また、多くの有名企業のPR活動や、有名イベント「オクトーバーフェスト」などを企画・運営しているブレインズ・コミュニケーションのタシロ・ブリンザー氏が「映画製作、広告、アニメーション、アプリ開発などの分野でカンボジアの企業は非常に高いレベルにあり、ますますよくなっています」と言うように、コンテンツに新しい手法をどんどん取り入れて、進化し続けている。
実に96%のカンボジア人がテレビを視ている。23チャンネルあり、そのうち9チャンネルの視聴者が91%を占めている。1社で複数チャンネルを持っており、実質は4社の寡占状態となっている。テレビのメリットとして、地方や教育を受けていない層にも情報が届くということが挙げられる。59%がアナログテレビ、35%がケーブルテレビ、6%がデジタルテレビを視聴している。
最大手テレビ会社CBSのCEO、リム・クンスルン氏は、「人口の70%を占める若年層をメインターゲットとして放送をしています。トレンドの変化にもいち早く対応し、韓国の音楽を扱う番組やインドのドラマ番組などカンボジアにはない新しいコンテンツを視聴者に提供しているため、カンボジアで最も人気のあるコンテンツプロバイダーとなっています」と話す。統計としても、カンボジアではテレビが他のマスメディアに比べ圧倒的なメディア占有率を誇っており(下図参照)、主要テレビ局を中心にあらゆるメディアの広告を取り扱う広告代理店adsマーケティングソリューション(ams)のマネージャー、トーチ・チャンセレイワット氏は、「カンボジアで全国的に自社のブランドイメージ、製品、商品を短期間で幅広く消費者に伝えるためにはテレビCMが現在最も効果的」との見解を示している。
テレビの次に多く認知されているのがインターネットであり、国民の39%がユーザーである。ただし、テレビと違い、都市部と地方では格差があり、都市部の45%に対し、地方では28%にとどまる。一日複数回ネットにつなぐという層も都市部では59%にのぼる。端末で一番多いのが携帯電話で47%。デスクトップ、ノートパソコンが45%で、タブレットは8%にとどまる。プノンペンで電話を保持する人の半分がスマートフォンである。
最も多く閲覧されているサイトはフェイスブック、ユーチューブ、グーグルだが、上位4位以下10位のすべてがニュースサイトで占められている。
クメール語、英語、中国語で全記事を配信していて、アプリインストール数120万、ソーシャルメディア250万ユーザーを誇るフレッシュニュースのリア・チュア・ヴッタ氏は、「ユーザーが興味あるのはソーシャル(社会面)ニュースで、事件や事故などのニュースを配信するとアクセスが集中する。またアクセス解析の結果、最近は政治や経済に関するニュースにも興味を持っているようだ」とカンボジア人の現状と変化しつつある興味関心事に言及した。
インターネットの使用が盛んになっている理由について、毎月2000万のページビュー数と250万の訪問者数を誇るサバイ・ドットコムを運営するサバイデジタルコープのチー・セラ氏は、「私の時代はインターネットを使用する若者もおらず、本やメディアを通して知識、情報を得る機会もありませんでした。しかしカンボジアに突如インターネットが参入し、何百万というウェブサイトやモバイルアプリを利用することができるようになりました。カンボジアでは、ニュース情報を得るのにわざわざ外出し新聞を購入する必要はありません。フェイスブックを見れば誰かが最新ニュースを共有しています。すぐに情報が手に入る時代です。そのためカンボジアの人々はインターネットを通じて、情報を知るのを好むのだと思います。またそれを後押しするのが通信料金の安さです。データ通信が気軽にできることがカンボジアの特徴です」と見解を述べた。