【運輸・物流】
5年前から冷凍・冷蔵物流を始めているロコモの小市琢磨氏は、「弊社は一般的な冷凍・冷蔵物流ではなく、ベトナムの大手アイスクリームメーカーと契約しています。2000台のアイスケースを主にプノンペンや都市部の商店に設置し、代理店として各商店にアイスクリームを配送しています。冷凍・冷蔵物流は一般のドライ商品に比べて初期費用もコストもかかるため、参入する企業は多くありません。弊社は各商店のアイスケースにかかる電気代を負担するなどして、カンボジア人の生活に合わせた事業を行っています。
カンボジアでは、ここ数年間で道路脇の商店にもアイスクリームが備えられるようになりました。隣国タイでは現在、コンビニに冷凍食品が大量に置かれており、カンボジアも数年後には同様の環境になると予想できます。もともと問屋事業であるため過去20年間に亘りカンボジア国内で築き上げたコネクションを生かして、今後、冷凍・冷蔵物流の場合は弊社を使ってもらえるように足場作りをしています」と述べ、カンボジアの冷凍・冷蔵物流の可能性について触れた。
プノンペンでは人口増加に伴い通行する車両数が増加し、整備不十分な道路インフラや徹底されていない交通ルールもあいまって常態化している。プノンペン都内の車両量が増加の一途を辿るなか、外国から輸入された中古車が市場の9割を占めており、新車利用者はごく一部の富裕層に限られている。カンボジアを除くASEAN7か国で適用されている中古車輸入への規制がカンボジアには欠如していることが、輸出先国での走行が許可されないような粗悪車両が集積する原因となっている。安全性のほかに法制度の順守も問題だ。2015年にカンボジアに輸入された45,000台のうち、正規販売代理店によるものは1割で、残9割が非課税で販売された。政府は中古車に課す税金を引き上げる可能性も示唆している。
また、自動車の未検査及び未登録も問題であり、2017年7月時点、カンボジアでは未検査や車検有効期間を過ぎたままの自動車が15万台に昇っている。政府は、車両登録や運転免許証の申請、車検予約を行えるウェブサイトを開設し、活用を促している。また公共事業運輸省は、2017年末までに車両のナンバープレートにQRバーコードを配置する予定で、データの管理、不正行為の防止に取り組むと見られる。
交通渋滞や交通事故数の深刻化から、インフラの開発・整備による渋滞緩和と交通安全の向上が急がれる。カンボジア政府による道路交通法の取り締まり強化の他に、日本政府による無償援助協力(ODA)で、昨年11月から既存の信号を含めカメラ付き信号機100機が設置された。しかし住民の非協力的な対応や、夜間の設置作業が原因で一部しか稼働していない。また、地下鉄やモノレール、路面電車などの旅客輸送システム(AGT)の敷設がJICAの援助の下で検討されており、2023年にも開通を目指している。来年にはJICAの支援の下、都営バスの導入が予定されている。現在は中国支援のバスが運行しており、電子チケットの導入により更なる利便性の向上が図られている。
公共交通機関の未発達が指摘される中、アプリによるタクシー配車サービス事業が多く提供されている。タクシー配車アプリを運営するエクスネットカンボジアのダル―・ホア氏は、「このアプリを始めるにあたって、追求したことは安全さと便利さです。安全面に関しては、予約の際に、ドライバーの名前、顔写真、電話番号、車種、ナンバープレートなどを明記して、身元を明らかにしています。便利さに関しては、2017年4月現在約600名のドライバーが登録していますので、予約してから配車まで時間がかからないことです。だいたい3分以内、インターネットや交通量の関係でもう少し時間がかかることもありますが、5分程度で配車できるように努力しています」と述べる。
エクスネットのような地元プラットフォームに加え、米国に拠点に置く「ウーバー(Uber)」もカンボジア市場に参入しており、安く、安全且つ便利な移動手段が提供されている。更には、シンガポールに本拠を置く東南アジア最大の配車アプリ、「グラブ(Grab)」もカンボジアでの操業開始に意欲を見せており、カンボジアにおける配車アプリの競争激化が予想される。
経済成長著しいカンボジアでは、物流・運輸業界においても電子化の動きが顕著に見られている。国内外への宅配便サービスを展開するCLエアエクスプレスのアリス・チェン氏は、「世界各国でオンラインショップ、eコマースを行う人々が増えており、カンボジアでも需要は増え始めると考えました。そこで当社はオンラインショップと提携し、eコマース配送を展開しています」と語る。また新たな電子サービスとして、「カンボジアでは宅配事業に対する理解が深まってきている段階であり、更に利便性をもたらすために当社では宅配便追跡システムを導入しています。Webサイト上で閲覧可能であり、これにより利用客は貨物の状況を各チェックポイントで確認することができます」と付け加えた。
郵便公社であるカンボジアポストも、オンラインで商品販売が出来るeコマースの導入を予定。今年中に開始すると見られている。またオーストラリアに本社を置く、物流・流通の管理ソリューションサプライヤーであるヨギー社がカンボジアの大手新聞会社ポストメディアと提携。物流業に人工知能(AI)ロジスティクスと流通管理ソフトウェアを採用する予定で、配送の固定費削減やリアルタイムでの追跡が可能になると見られている。今後一層、電子化を取り入れた多様な事業展開が行われると期待できる。