カンボジアに進出する日系企業のための
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2017年12月8日
カンボジア進出ガイド

【運輸・物流】

222 カンボジアの物流・運輸①(2017年11月発刊 ISSUE07より)

陸海空 Transport by land, sea and air

 内陸国であるカンボジアは、陸路、海路、空路、水路それぞれの運搬手配が可能であり、更に、国内の経済発展や人口増加に対する需要をかなえるため、運送手段は拡大の一途を見せている。海路であれば、シアヌークビル港経由が主要ルートとして挙げられる。国内唯一の深海港で、カンボジア全体の物量の約60%を扱う重要港だ。また湾を通過するコンテナの増加を受け、JICAの支援で2022年までにコンテナターミナルを拡張予定であり、新たに貨物輸送施設を備えると見られる。河川港であるプノンペン港は、寄港可能な船舶サイズに制限はあるものの、メコン河を経由してベトナムのホーチミン港やカイメップ・チーバイ港への内陸水運航路として重要である。

 空路での主要港はプノンペン国際空港とシェムリアップ国際空港の2空港である。プノンペン国際空港についてはANAによる成田からの直行便はできたものの、フレイター(貨物専用輸送機)の定期就航は未だ無いため、航空各社の機体によって一般貨物の積載可能サイズも異なり、日本向け航空貨物便の利便性の向上が今後も期待される。国内ではアンコール航空が今年3月に、国内初となるプノンペンからシェムリアップ、シアヌークビルへの国内貨物サービスを開始し、毎日4便で運航している。

 陸路では、タイ側からであれば、ポイペトもしくはコッコン経由、ベトナム側からはバベット経由が現状での主要ルートとなる。2015年4月に開通した国道1号線無償支給のネアックルン橋(つばさ橋)を始め、日本政府はベトナム・カンボジア・タイを結ぶ南部経済回廊整備を支援しており、カンボジアの基幹道路である国道5号線も2020年までに改修、全4車線化する予定だ。またJICAによる調査を受け、プノンペン―ホーチミン間の高速道路開発が行われる予定だ。

 鉄道はプノンペン・ポイペト(タイ国境)を結ぶ北線、プノンペン・シアヌークビルを結ぶ南線が存在する。更にカンボジアのバンテアイミエンチェイ州とタイのサケーオ県とを結ぶ鉄道路線が昨年度末に開通。新たに中国企業の支援により、プノンペンからシェムリアップ、そしてベトナムの国境に向かう新しい鉄道が建設予定である。鉄道輸送が有効に運用されれば、物流コストの削減により製品の市場価格が下がり、さらに輸送量も大幅に増加すると期待されるが、運行速度や関連施設の充実度の関係で、一般貨物の輸送手段としての選択肢には入らないのが現状だ。

一般特恵関税制度 Generalized System of Preferences

 カンボジアは世界銀行の分類により低所得国から低・中所得国へと”格上げ”されたものの、引き続き国連からは後発開発途上国として分類されており、GSP(一般特恵関税制度)に加え、先進各国からの特別特恵関税制度により輸出に対する特恵を受けている。一般特恵のみが適用されている中国とベトナムと比較すると、カンボジアが有利になる品目は主要生産品である衣料品や履物など、多岐にわたる。関税や人件費を含むトータルコストを見たときに、近隣諸国と比較してコストメリットが出るという考えの下で進出する企業も多い。

関税とカムコントロール、輸出時の手続き The Customs, CAMCONTROL and Procedure

 カンボジア独自の制度として、輸出入手続きの際に関税とは別にカムコントロール※1へ貨物検査料を支払い、手続きをする必要がある。政府はASYCUDAシステム※2を導入し、貨物検査対象の選別、データ入力のEDI化(電子データ交換)を行っているものの、実際には輸出入された全貨物に対して検査料がかかっており、データ入力にも莫大な時間を要するという問題を抱えている。2014年6月にカンボジア版AEO※3とも言われる Best Traders Initiative (BTI)が関税消費税総局により発足し、これにより自社内に設置された専用端末での操作が可能になった。



 また輸出入手続きの円滑化として、カンボジアの大手物流企業であるワールドブリッジグループが、国内初となる保税蔵置倉庫※4を備えた特別経済特区(SEZ)の営業を開始。「我々は保税蔵置場を統合した同SEZの営業開始により、競争力のないカンボジアのサプライチェーン及びバリューチェーンの確保に貢献できると考えました」とは、同グループのシア・リッティ氏。工場団地が増える中、輸出入のワン・ストップ化に貢献すると見られる。

 また経済財政省は、国際貿易に関わる作業の合理化に向けて、単一窓口サービスを開始する予定だ。更にNACCS (輸出入・港湾関連情報処理センター)も、カンボジアに関税の自動化プラットフォームを提供することを目指しており、迅速で透明性の高い手続きの促進、手続きにかかる費用の削減等が期待される。更にカンボジアには、世界貿易機関(WTO)の貿易円滑化協定(TFA)※5の完全実施を求める声も上がっている。カンボジアはTFAの受託国でありながらも、約40%の条件しか満たしておらず完全実施には至っていない。TFAが完全実施された場合、貿易に伴うコストの削減、貿易手続きの簡素化及び標準化、輸出製品の20%増加が期待されるが、完全実施までは道のりが長いと考えられている。ワールドブリッジグループのリッティ氏も、「規制枠組みの強化によりダイナミックな事業活動が可能となり、競争力も強化されていくでしょう」と、規制強化の重要性を訴えている。



※1 カムコントロール(CAMCONTROL):商業省傘下の輸出入貨物検査機関。貨物検査は税関とカムコントロールが個別に行う。
※2 ASYCUDAシステム: Automated System for Customs Dataの略で、UNCTAD(国連貿易開発会議)が開発した電子税関システム。
※3 AEO: Authorized Economic Operatorの略。貨物のセキュリティー管理とコンプライアンスの体制が整備されていると税関長の認定を受けた通関業者は、輸入者の委託を受けた輸入貨物の引取り後に納税申告を行うことや、輸出者の委託を受けて特定保税運送者による運送を前提に、貨物を保税地域に入れることなく輸出の許可を受けることを可能とする制度。
※4 保税蔵置場:外国貨物(輸出許可を受けた貨物および輸入許可以前の外国貨物)の積み卸し、運搬、蔵置などを行うことができる。蔵置期間中は関税や消費税などが課されない、輸出入品の点検、改装、仕分け、手入れや値札付などの作業を行うことができるといったメリットがある。
※5 貿易円滑化協定(TFA): 国境を越えて取引される貨物の迅速な移動、引取り及び通関手続を確保し、そのための改革を締約国に促すことを内容とし、多角的な貿易システムを通じた貿易の活性化を図ることを目的とした協定。受諾国の数が112か国・地域におよぶ。


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