【運輸・物流】
プノンペンでは交通渋滞や交通事故数の深刻化から、インフラの開発・整備による渋滞緩和と交通安全の向上が急がれる。カンボジア政府による道路交通法の取り締まり強化の他に、日本政府による無償援助協力(ODA)で、昨年11月から既存の信号を含めカメラ付き信号機100機が設置された。しかし住民の非協力的な対応や、夜間の設置作業が原因で稼働が遅れているという問題も生じている。また、地下鉄やモノレール、路面電車などの旅客輸送システム(AGT)の敷設がJICAの援助の元で検討されており、2023年の開通を目指している。
プノンペン都内の車両量は現在増加の一途をたどるが、外国から輸入された中古車が市場の9割を占めており、新車利用者はごく一部の富裕層に限られる。カンボジアを除くASEAN7か国で適用されている中古車輸入への規制がカンボジアには欠如していることが、粗悪車両が集積する原因となっており、車の安全性が指摘されている。安全性のほかに法制度の順守も問題だ。2015年にカンボジアに輸入された4万5000台のうち、正規販売代理店によるものは1割で、残り9割が非課税で販売された。カンボジア自動車連盟(CAIF)は、消費者の利益保護と販売代理店の平準化のため、VATを支払っていないグレーマーケットで販売されている自動車の税金を引き上げ、中古車の輸入を禁止するよう政府に求めた。
一方で、新車に対する需要の伸びが見られる。タイ系コングロマリット企業、RMAカンボジアのノーン・サン氏は、「2015年時点の新車率はたったの15%でしたが、年率約5%というゆっくりとしたペースで新車市場は拡大しています。その理由として重要なのは、人々の収入が上昇し新車を購入できる余裕がある人が増えたという他に、カンボジアの中古車事情が理解され始めたという事があります」と新車市場の拡大について述べる。2016年におけるRMAカンボジアの新車販売数は前年から約40%増加している。
公共交通機関では、プノンペンの公共輸送サービスの未発達、渋滞などの交通状況の悪化を受け、よりスマートな公共輸送システムが提供されている。アプリによるタクシー配車サービス事業で、利用者はアプリにスマホでリクエストを送ると登録しているドライバーへ情報が行く仕組みだ。タクシー配車アプリを運営するエクスネットカンボジアのダルー・ホア氏は、「このアプリを始めるにあたって、追求したことは安全性と利便性です。安全面に関しては、予約の際に、ドライバーの名前、顔写真、電話番号、車種、ナンバープレートなどを明記して、身元を明らかにしています。便利さに関しては、2017年4月現在約600名のドライバーが登録していますので、予約してから配車まで時間がかからないことです。呼んだらすぐ配車できることを常に考えています。だいたい5分程度で配車できるように努力しています」と述べる。またクレジットカード決済の導入も検討していると話し、更なる発展が期待される。
また、アメリカを拠点にサービスを展開しているタクシー配車サービス「Uber(ウーバー)」がカンボジアでのビジネス参入に関心を示している。日系企業FIGIX Industryによるタクシー配車アプリ「Itsumo(イツモ)」も含め、アプリを使用した配車サービスにおける競争激化が予想される。
経済成長著しいカンボジアでは、物流・運輸業界においても電子化の動きが顕著に見られている。郵便公社であるカンボジアポストは、オンラインで商品販売が出来るeコマースの導入を予定。今年中に開始すると見られている。
またオーストラリアに本社を置く物流・流通の管理ソリューションサプライヤーであるヨギー社がカンボジアの大手新聞会社ポストメディアと提携。ポストメディアの持つ全国紙のネットワークを活用しつつ、物流業に人工知能(AI)ロジスティクスと流通管理ソフトウェアを採用する予定で、配送の固定費削減やリアルタイムでの追跡が可能になると見られている。今後一層、電子化を取り入れた多様な事業展開が進められていくと期待できる。