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2017年6月29日
カンボジア進出ガイド

【運輸・物流】

196 カンボジアの運輸・物流②(2017年05月発刊 ISSUE06より)

冷凍・冷蔵物流 Frozen and refrigerater Logistics



 5年前から冷凍・冷蔵物流を始めているロコモの小市琢磨氏は、「弊社は一般的な冷凍・冷蔵物流ではなく、ベトナムの大手アイスクリームメーカーと契約しています。2000台のアイスケースと500台のヨーグルト用ショーケースを主にプノンペンや都市部の商店に設置し、代理店として各商店にアイスクリームとヨーグルトを配送しています。冷凍・冷蔵物流は一般のドライ商品に比べて初期費用もコストもかかるため、参入する企業は多くありません。弊社は各商店のショーケースにかかる電気代を負担するなどして、カンボジア人の生活に合わせた事業を行っています。

 カンボジアでは、ここ数年で道路脇の商店にもアイスクリームが備えられるようになりました。隣国タイでは現在、コンビニに冷凍食品が大量に置かれています。カンボジアも数年後には同様の環境になると予想できます。もともと問屋事業であるため過去20年間に亘りカンボジア国内で築き上げたコネクションを生かして、今後、冷凍・冷蔵物流の場合は弊社を使ってもらえるように足場作りをしています。将来を見据えた事業です」と述べた。経済発展を遂げるカンボジアならではの冷蔵・冷凍物流事業である。

関税とカムコントロール The Customs and CAMCONTROL

 カンボジアの独自の制度として、輸出入手続きの際に関税とは別にカムコントロール※2 へ貨物検査料を支払い、手続きをする必要がある。商業省担当官の公式説明では、輸出は繊維製品、輸入は特定品目のみがカムコントロールの貨物検査の対象となり、ASYCUDAシステム※3 によってハイリスクと評価された物についてのみ検査を行うとのこと。しかし、実際には輸出入される全貨物に対し検査料がかかっているのが現状である。背景には管轄省庁が異なる事による利権問題も絡み、政府による改善の見通しは立っていない。

 税関では賄賂や裏金といったアンダーテーブルをなくすため、ASYCUDAシステムを導入し、EDI化(電子データ交換)している。しかし、データ入力できる端末台数に限りがあり、しかもデータが手入力作業となるため、商品項目が増えると入力手続きだけでも莫大な時間を要するという問題点を抱えている。そこで、2014年6月にカンボジア版AEO※4 とも言われる Best Traders Initiative(BTI)が関税消費税総局により発足した。これにより、自社内に設置された専用端末での操作が可能になるが、具体的な手続きや承認条件等に不明瞭な点も多く、明確な情報開示が待たれる。


※2 カムコントロール(CAMCONTROL): 商業省傘下の輸出入貨物検査機関。貨物検査は税関とカムコントロールが個別に行う。
※3 ASYCUDAシステム: Automated System for Customs Dataの略で、UNCTAD(国連貿易開発会議)が開発した電子税関システム。
※4 AEO: Authorized Economic Operatorの略。貨物のセキュリティー管理とコンプライアンスの体制が整備されていると税関長の認定を受けた通関業者は、輸入者の委託を受けた輸入貨物の引取り後に納税申告を行うことや、輸出者の委託を受けて特定保税運送者による運送を前提に、貨物を保税地域に入れることなく輸出の許可を受けることを可能とする制度。

輸出入手続き時の汚職・法的規制の変化 Strengthening of the Regulations



 依然として関税手続き等に改善が求められるなか、腐敗撲滅や法規制強化に関する取り組みは若干の前進を見せているようだ。ロコモの小市氏も、「カンボジアの物流業界では今でも悪習の一部が残っている部分があります。様々な問題を抱えるカンボジアですが、その特異性は国際化とともに薄まっていくと思います」と話す。カンボジア移住に向けた包括的な引越しサービスを提供するアジアン・タイガース・モビリティーのポール・グルー氏も、「SOLAS条約が改定され、この6か月間でシッピングは大きく変わりました。国際海上輸出コンテナ総重量の誤申告により、荷崩れ等の事故が発生していることを踏まえ、総重量の確定方法が2016年7月に変更されました。この流れを受けて、海上輸送業務に関わる労働者の怪我や人命損失のリスクを軽減するため、船舶の安全運航に向けて規制は厳しくなっていくでしょう」と語る。陸路だけでなく海路における流通体制も、規制の厳格化に伴って徐々に改善の兆しを見せている。


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