【運輸・物流】
税関ではASYCUDAシステムを導入し、EDI化(電子データ交換)しているため、輸出入者はそのシステムを利用し輸出入申告を行う必要がある。しかし、データ入力できる端末に台数の限りがあり、しかもデータが手入力作業となるため、商品項目が増えると入力手続きだけでも莫大な時間を要するという問題点を抱えている。
そこで、2014年6月にカンボジア版AEO※5とも言われるBest Traders Initiative (BTI)が関税消費税総局により発足し、第1回認定者8社(そのうち日系企業は3社)に対する贈呈式が行われた。これにより、自社内に設置された専用端末での操作が可能になる。これは過去に官民合同会議等の際、数次に渡り当制度の導入についての議題が取り上げられており、この会議による優良成果事例と言えよう。しかし、具体的な手続きや承認条件等に不明瞭な点も多く、明確な情報開示が待たれる。
カンボジアのもう一つの大きな特徴としてドライポート※6 が挙げられる。トーマスインターナショナル・サービスのトーマス氏は、「基本的にドライポートには、広大な土地、倉庫、税関機能があります。他の国であれば、どの土地にも倉庫を建てられますし、そこからの輸出が可能です。カンボジアでは輸出をするためには二つの手段しかありません。
一つ目は関税手続きを工場で行うこと、もうひとつはドライポートで行うことで、輸出に関する一連の業務が可能な場所というような意味しかないんです。ユニークなのは、5、6社のドライポート管理会社にその独占権があり、競合を育てるという面ではよくない点ですね」と、語る。工場側でドライポートを経由せずに直接輸出手配できるような環境になる日も待たれる。
カンボジアに限らず、発展途上国には汚職問題も蔓延る。オランダに本社があり世界各国に300支店を有するダムコ・カンボジアのクルーチ・ソピアックトラ氏は、「我々は、汚職撲滅ユニット(ACU)に署名しており不正なお金を払いません。不正を無くすには、不正に応じないことが一番ですから。今後も政府の強力なサポートが必要です」と語る。
さらに、「以前は情勢の不安定や警察の不正で、物が国境を超えるのも難しかった時代がありましたが、今はGPS等で荷物の安全も高まり、物流を取り巻く環境は前よりずっと良くなりました。政府にも意見書を提出していますが、今後はインフラや関税の不正等の改善ですね。日本人は成熟しており、1人1人が安定し責任感があります。カンボジアはまだ始まったばかりの国ですね」と付け加えた。
依然として関税手続き等に改善が求められるなか、腐敗撲滅や法規制強化に関する取り組みは若干の前進を見せているようだ。S.E.A.T.S.の峯島氏は、「今後はルールの明確化や取締りの強化など、体制が整備されたのち、適切な管理下で流通が活発化していくと思います」と、物流業界の変化に期待を込める。
世界14か国、主要アジア各国を中心に30以上の拠点を持ち、カンボジア移住に向けた包括的な引越しサービスを提供するアジアン・タイガース・モビリティーのポール・グルー氏も、「SOLAS条約※7 が改定され、この6か月間でシッピングは大きく変わりました。国際海上輸出コンテナ総重量の誤申告により、荷崩れ等の事故が発生していることを踏まえ、総重量の確定方法が2016年7月に変更されました。この流れを受けて、海上輸送業務に関わる労働者の怪我や人命損失のリスクを軽減するため、船舶の安全運航に向けて規制は厳しくなっていくでしょう」と語る。
また、「関税や税金で自身の利益を求める人も多かったですが、人々も発展しています。投資によって全体的にかなり良くなりましたし、今後もチャンスが多いと思います」と付け加えた。陸路だけでなく海路における流通体制も、規制の厳格化を伴って徐々に改善の兆しを見せている。
とはいえ法整備等はいまだ未熟で、物流に関する問題はコストと納期にそのまま跳ね返ってくるだけに、利用する物流会社の選択は料金だけではなく、どれだけ経験・知識・ホスピタリティがあるかも重要な要素となる。ローカル物流会社の中にはライセンス未取得で営業している業者もあり、トラブル時の対応や説明責任問題等で大きな違いが出てくるので、やはり業者選択には十分注意したい。