【飲食・観光】
(134 カンボジアの運輸・物流④の続き)
2016年1月に発表された観光省のデータによると、2015年におけるカンボジアへの旅行者数は約470万人となり、その消費総額は3億ドルを超えた。2003年から2004年にかけて旅行者数が年間100万人を突破し、対前年度50%増を記録してから観光産業は急速に成長し、2020年には年間750万人にまで膨らむと予想されている。
世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)によると、2015年カンボジアのGDPにおける観光産業の割合は13.5%であり、世界平均の3.1%と比べると貢献度は非常に高く、観光産業に携わる人々の割合も11.7%と高い数値である。
旅行客数の割合を国別に見ると、ベトナムが20.7%と最も高く、続いて中国14.5%、ラオス8.5%と続き、日本は第7位の4.0%で年間約21万人、アジアからの旅行客が77.8%を占めている。
日本人にとって最も馴染みがあると言えばアンコールワットだろう。2015年は210万人以上が訪れ、今年3月にトリップアドバイザーが発表した世界観光地ランキングでは、アンコールワット遺跡群が並ぶシェムリアップが、ハノイやバリ島に並びアジア一の評価を得ている。さらに2016年2月、経済財政大臣がアンコール遺跡群にオンラインチケットを導入する構想を発表し、実現すれば利便性が向上し、更なる観光客の増加が期待される。
また観光客の増加に伴い、市場規模の拡大も期待される。中小企業協会連合会によると、2015年の中小企業における観光産業の総売上は19億ドルにのぼり、今後も観光省と協力して、観光客向けツーリズム展などを計画し、中小企業の収益増加を目指す。
また、シアヌークビルやキリロム国立公園は今後開発が期待される名所の一つだ。1995年創業の老舗旅行代理店、チャーミング・カンボジア・ツアーズのオム・パリン氏も、「素晴らしい海に囲まれ、アクセスが便利なシアヌークビルは今後益々人気が高まるでしょう。また、自然を満喫するならキリロムもお薦めです」と語る。
それを表すかのように、4月9日、現地の大手財閥ロイヤルグループのロイヤル鉄道が、 プノンペン―シアヌークビル間において旅客列車を試用運転させたほか、2016年3月には、中国企業のイージア観光開発がシアヌークビル州のリーム国立公園に大規模な観光開発を行うと発表している。
カンボジアの観光産業の急成長に伴い熟練労働者の需要も上昇し、多数の団体が訓練校を開設している。フランス系NGO、アジール・プル・レ・カンボジアによって2002年に設立された訓練校では、学生は毎月25ドルの補助金を受けながら、受付、調理、ホールなど1年間の各コースを無料で受講できる。卒業生の就職率は100%で、9割がシェムリアップの5つ星ホテルやレストランで働く。100名の定員に年間400~500名の申込があり、来年は施設の拡大に伴い定員数を増加する予定だ。
スタッフについてタマホームカンボジアのマネージングディレクター、上田武範氏は、「カンボジア人はもともと明るくて笑顔が素敵な人が多いので、大変印象はいいです。そこにホスピタリティの考え方を教育していくイメージです」と述べている。社内教育だけではスタッフの質、量ともに十分に確保できない。高い技術を教える公立の 専門学校の設立が待たれる。
(136 カンボジアの医療・医薬①へ続く)